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<ふたなり寮>ACT3




「そうだキュー。君は、今日からふたなりだキュー」

 その声の主は、間違いなく膝の上の生物だった。
 全く口を動かしていない上に、人間の言葉を使って、キューが喋っている。
 ユリカはその事実が信じられず、しばらく絶句した。その後やっと出てきた言葉も、舌足らずになってしまう。

「うそっ! ……ど、どうなってるの?」
「ボクはたくさんの新入生の中から、たった一人、君を選んだんだキュー。つまりは、それだけのことなんだキュー」

(い、意味わかんない……)
 つぶらな瞳に見つめられながら言われて、ユリカは混乱するばかりだ。
 キューはそんなユリカをからかうわけでもなく、慰めるわけでもなく、淡々と可愛い声で説明する。

「この学園で、ボクは一人の女子生徒に、生殖器をデザインする役目があるんだキュー。その役目を、果たしたんだキュー」

「役目……なに言ってるの? わたし、そんなこと知らないっ!」
「とにかく君は、そのちんこを使って、学園の可愛い女子高生たちに種付けをすればいいんだキュー」

 そう言いながら、キューはユリカの白く柔らかい太ももの上を歩き回る。股の間の萎えた肉棒に、そっと尻尾で触れた。
 そのまま、亀頭のところを、ふさふさした白い毛の生えた尻尾でくすぐる。

「ひゃっ! くすぐったいからやめてっ!」
「これはくすぐったいんじゃないキュー。快感なんだキュー」
「か、かいかん!? わたし、そういうの興味……んんぅっ」

 体中がしびれるような、甘い感覚を得て、ユリカは思わず背筋を正してしまう。その綺麗な顔が、とろんとゆるみはじめていた。
 同時に、ユリカは股間がむくむくと膨らみ始めていることに気付いた。

「お、おっきくなってる!?」
「これは、勃起って言うんだキュー」
「ぼ、勃起!? ふああ……や、やめてよ、キュ~っ」

 ユリカは口では嫌がりながらも、次第に息を荒げ、肉棒がぱんぱんに膨れ上がるのを黙認している。

(やだ……わたし、なんでキューのこと、止めないの!?)

 すっかり初めて感じた男性器の快感に夢中になってしまっているのだが、ユリカはそれが信じられないのだった。
 肉棒は、そのまま最大限まで硬くなり、自然と包皮が剥けていった。先端から先走り汁が溢れ出し、つつっ……と根元まで垂れていく。
 ユリカは頬を赤く染めながら、困り顔になっている。

「なんか……青臭い匂い、するよ~っ!」
「これがちんこの匂いなんだキュー。いずれこの匂いが愛おしくなるくらい、セックスに夢中になるキュー」
「い、いや……こみ上げてくるっ! なに、これぇっ!」

 そのうち、ユリカは射精の予感を覚え始めていた。初めての肉棒快感に耐えきれず、早くも絶頂を迎えようとしていた。丸く柔らかいお尻に力が入り、何かを吐きだそうとしている。
 しかし、そこでキューが突然、尻尾を離す。

「え、キュー……や、やめちゃうの?」
「ここからは、自分でするキュー。そっちのほうが、力加減が出来て、ずっと気持ちいい精通が出来るキュー」
「そ、そんなの……するわけないじゃないっ!」

 怒鳴ってしまうユリカだが、キューは無反応でいる。その無表情を見て、ユリカはむらむらと欲望が湧き上がるのを感じていた。
(どうして、途中でやめちゃうのよ~……もうすぐで、イケそうなのにっ!)

 ぴく、ぴくと肉棒が震え始める。それはまるで肉棒が刺激を求めているように、ユリカには見えた。
(もうちょっと、だけだから……はしたなくても、やっちゃえっ!)

 ユリカは持ち前のずぼらさを発揮し、みっともないのを承知で、肉棒を自分でぎゅっと握りしめた。途端に、包皮がずるりと剥け、亀頭が根元までずり下がる。
 空気に亀頭が振れる解放感と、自分の手のひらが擦れる快感で、ユリカの頭は真っ白になった。

「うあぁっ! これ、いいよぉ~っ!」

 すぐさまユリカは自分の肉棒をしゅっしゅっと擦り始めていた。その度に来る快楽がたまらなくて、そのまま仰け反ってしまう。

 制服を着た美少女女子高生が、下着からはみ出た肉棒を擦りまくって、たまらなく気持ちよさそうな顔をしている様は、めちゃくちゃにエロイ光景だった。
 だがもちろん、それを見てもキューは無表情でいる。

「ああぁっっ……イクぅぅっ! イクよぉ~!」

 頬を染め、涎を垂らし、目がうつろになったまま、ユリカはそう叫んでいた。
 同時に、肉棒の先端から弾けるように白濁液が飛んでいた。尿道を精液が駆け抜けていく快感で、ユリカは全身を強張らせ、仰け反らせながら、目を見開いていた。

(や、やばっ……これ、くせになっちゃうよ~)

 びゅっ……びゅるるるっ……びゅっ!

 そんな音が出そうな射精を続けながら、ユリカの顔はだらしなく、ゆるみきっていた。
 全ての精液が絞り出されてしまったような盛大な射精の後、ユリカはぐったりと仰け反ったままでいた。長い髪が、額に浮いた汗で、顔に張り付いている。
 つい、独り言をこぼしていた。

「うそ……こんなに、男のちんこの射精が気持ちいいだなんて……!」

 素直に、感動していた。
(こんなの、男はセックスしたくなるに決まってるじゃない……)
 世の中の、すぐやりたがる種馬男子に、共感してしまうユリカだった。

 そんなユリカの言葉に、キューはこう返している。

「この学園の女の子の子宮に、精液を注ぎ込んだ方が、もっともっと気持ちいいキュー」
「い、いやよ……そんなこと、できるわけないでしょっ」
「どんなに足掻いたって、無駄だキュー。君はこれから本能に負けて、女の子を犯しまくり始めることに決まってるんだキュー。可愛い女子のおまんこにちんこを挿入するのは、天にも昇る気持ちよさなんだキュー」
「天にも昇る程だなんて……大袈裟よっ!」

 そう言った時だった。こんこん、と部屋のトイレのドアがノックされた。ユリカがはっと身構える。

「ユリカー、まだトイレはいってんの? もしかして一人エッチ中?」
「ち、違うからっ! そんなわけないじゃんっ」

 ユリカはキョーコの声が図星で、勢いよく反論してしまった。
 慌てて床やドアに飛び散った精液を、トイレットペーパーでふき取り、流す。肉棒の先にぬるぬるとこびりついた精液も拭きとって、それが終わるころには勃起は完全に萎えきっている。

「ボクの声は、君にしか聞こえないキュー。だから、安心してボクを抱えて、トイレを出るんだキュー」

 わざわざそう言ってくれるキューを抱えて、ユリカはトイレの外に出た。
 途端に、ユリカは瞠目することになる。キョーコとシオリが、風呂上がりの、下着姿でそこにいたのだ。二人とも、可愛らしいフリフリの下着だ。
 別にそのこと自体は、よくあることだった。三人は一緒にお泊りすることはざらで、シャワーも一緒に浴びたことがある。裸の姿はよく知っていた。

 しかし、今のユリカには、キョーコとシオリの肉体が、違うものに感じられた。
 やたらと魅力的なのだ。身体のラインが、目に焼き付くように感じた。胸の膨らみが、お腹のくびれが、お尻の丸さが、素晴らしいものに見えた。
(うそ……二人とも、こんなに色っぽかったっけ!?)
 思わずごくりと唾を飲んでしまう。そして、次の瞬間恐ろしいことに気が付いていた。

(お、おちんちんが……膨らんできてるよ~っ!)

 自分では意識していないのに、むくむくと勃起していた。さっき射精したばかりだと言うのに、一向に性欲が衰える様子を見せない。

「人間の男子の健康的な反応だキュー」

 見ると、足元に無表情でキューが佇んでいる。

(これが……健全!?)

 ユリカがちょっと前かがみになっていると、キョーコに目を細められた。

「ユリカ、またぼーっとしてるよ。マジで大丈夫?」
「ぜ、全然?」
「……なんかイカクサくない?」
「そそそそんなことないってばー。あー、ここに来る前、スルメ食べたからかも」

 あまりにも適当な言い訳だが、キョーコとシオリは、特に気にした様子ではない。普通に納得していた。二人とも女子高生、あまり物事を深く考えていない。
 むしろ、イカのほうに興味は行っている。

「ユリカ~、スルメなんてどこで買ってきたの? わたしにもわけてよー」
「わたしもスルメ食べたい。ちょうだい、ユリカ」

 二人が迫ってきて、ユリカはまたごくりと唾を飲んでいる。
(二人とも、なんかいい匂いがする……)
 甘酸っぱいような、なんともいえないいい匂いだった。ユリカは、それが女体が発するフェロモンのような体臭だとはわかっていない。
 しかしとにかく、その匂いを嗅ぐごとに、肉棒が勃起を強めるのは感じていた。

「ちょっと、ふ、二人とも、やめてよ……」
「うーん? くれないの?」
「ユリカ、けち」

 するとさらに悪いことに、シオリが無言でユリカの後ろに回り込んで、羽交い絞めにした。こうやって何気なく表情を動かさずに、すごいことをするのが、シオリだった。

(あ、あたってる!)
 シオリのEカップは超えるような巨乳が、ぴったりと背中に密着していた。
 これまではおっぱいの感触なんて気にしたことのなかったユリカだが、今日はやたら気持ちよく感じてしまうのだった。

「ねえねえ、ポケットにはいってるの? いじっていい?」

 キョーコがとことこと近づいてきて、身動きの取れないユリカの身体を、すっとくすぐるように触った。

「ひゃんっ! キョーコ、やめてってば、くすぐったいよー!」

(それに、キョーコのいい匂い嗅いでると、頭がぼーっとしてきちゃう……)
 近い距離にいると、その匂いを感じたくなくても感じてしまうのだった。

 そして、勃起はどんどん大きくなって、スカートを持ち上げそうになっている。
(やばい……二人に、おちんちん生えてるの、ばれちゃうっ!)
 それを覚悟したとき、背後から声がかかった。

「こらーっ! 三人とも騒がしいわよ。他の部屋の生徒に嫌われちゃうわよ?」
「ツバキ先生!」

 そこにいたのは、今日教室で会ったばかりの、グラマラスなお姉さんだった。ユリカはその姿を、思わず足から顔まで舐めまわすように見てしまう。

「これからは品位を持って、常識的な騒ぎ方をすること。それと、ユリカさん……少し目つきが変よ?」
「あ、なんでもないんですっ」

 ユリカはぽっと赤くなって、俯いた。恥ずかしいのと、ツバキ先生の目を直視出来なかったのが、原因だった。

◇◆◇◆◇

 それから時間が経って、ずっとキョーコとシオリと談笑していたユリカは、二人からはなれて、またトイレに籠っていた。
 股間が、ずっと勃起しっぱなしで、我慢汁を垂れ流しっ放しだったのだ。
 それをティッシュで拭きながら、ユリカはキューに言った。

「切ない……おちんちんが切ないよ~! どうしてくれるのよー!」
「もしその切なさが嫌なのなら、セックスしちゃえばいいんだキュー」
「そんなのむりむりむりっ! このくらい、我慢して見せるわよっ」

 ユリカはのぼせたような顔でそう言って、ひくひくする肉棒を手で抑え込む。
 しかし、ユリカの意思はいつまでも続かなかった。少し先の未来で、ユリカは性欲に負けて、女子生徒を犯すことになるのだった……
(つづく)






<ふたなり寮>ACT2




「いたた……」

 相手を見上げて、ユリカはふっと浮き上がるような感覚があった。
 お人形のように、綺麗な女の子だった。自分でもよくわからないまま、見惚れてしまう。
(綺麗な人……)
 その女子高生の髪は金色に輝いていた。瞳は澄んだ水色で、きらきら輝く水晶玉のようだ。
 ユリカは手を差し伸べられて、ちょっと頬が熱くなった。手をつないで、起きるのを手伝ってもらう。

「大丈夫? いきなり出てきてごめんなさい。あなた、クラスメート?」

 これまで見たことのないくらいの美少女が、自分を見つめている。ユリカはその事実に心臓の鼓動が早くなる。
 ユリカは自分に話しかけられていることが一瞬わからず、返答が少し遅れた。

「はいっ。ユリカ……と言います!」

 うふふ、とユリカは上品に笑う。どこかいい家のお嬢様なのかな、とユリカは思った。

「敬語なんて使わなくていいのに。おかしな人ね。お隣の二人は、お友達なの?」
「はいっ! こっちがキョーコで、こっちがシオリです」

 ユリカと違って、キョーコもシオリも何も感じず、よろしくね、と普通に返している。

「わたしはサヤカ。ユリカさん、これからよろしくお願いね」

 サヤカは軽く優雅に手を振って、どこかへ歩いて行ってしまった。キョーコが、未だ尻もちをついたままのユリカをからかう。

「ユリカー、何キョドッてんの? ほんと人見知りだよね。わたしたちがいなかったら、クラスでぼっちだったんじゃなーい?」
「ち、ちがうってば。そういうんじゃなくてさ……」

 お尻を払いながらユリカが口ごもっていると、シオリがマイペースに言う。

「あの人、ハーフなのかな?」
「そうじゃないの? だって髪染めるのは校則で禁止されてるって、わたし生徒手帳読んだし」
「キョーコ、染めるつもりだったの?」
「まあねー。折角高校デビューだし、そういうのもありかなって」

(キョーコが髪染めたら、ギャルになっちゃいそう)
 ユリカはそう思って、ひとりクスクス笑う。キョーコはそんな一面を持っていた。

「ユリカ、何笑ってんのー」
「ごめんごめん、なんでもないって」

 その時、がらがら、と教室のドアが開いた。ユリカより長い髪をなびかせて、人影が現れる。

「こんにちはー! 席についてねー」

 三人は、散り散りになって自分の席に戻る。ユリカは座席表通り自分の席に向かって、驚いた。

「あら、お隣だったなんて。よろしく」

 ユリカの隣の席はサヤカだった。またもや緊張しながら、ユリカは答えた。

「よ、よろしくお願いしますっ」

 ユリカは緊張を紛らわせようと、教壇に立つ人を見る。
(あの人が、一年間一緒に過ごす先生ね)
 教職に就いてからあまり経っていないのか、ユリカたちとあまり歳の違いはないようだった。スーツを着た体は出るとこは出ている、つまりグラマーで、大人のお姉さん的な雰囲気を纏っている。
 スカートの下のふとももは、真っ黒なストッキングに包まれてむっちりしている。

「はーい、わたしは、これから一年間このクラスを担当する、ツバキと言いまーす。よろしくね」

 生徒たちと友好的でありたいようで、何気ない雑談の話し相手になれそうな、口調だった。生徒たちの初対面の第一印象は良いようで、緊張はほどけ、打ち解けた感じになっている。

「家がちょっと遠い人たちはそこに泊まることになってると思うけど、白百合寮の監督もしているから、そこに住む人たちは覚悟しなさい? 生徒だけで何でも好き勝手できると思ったら、大間違い。わたしがビシバシ取り締まっちゃうからね!」

 ファイティングポーズを取ると、少し笑いが起きる。

「みなさんは、これから有名高校紫蘭学園の生徒です。別に脅すわけじゃないけど、その名に負けぬよう、品位と誇りを持って、毎日を送ってくださいね! それがきっと貴女たちのためになるから。さて、出欠をとりまーす」

(あー、このいい感じの先生がわたしたちとこれから生活するんだ。ラッキーっ!)

 結局、ユリカはその後サヤカとまともに会話できず、その日は解散になった。
 キョーコとシオリがやってきて、ツバキについて感想を言う。

「あの先生、いい感じじゃん。わたし気に入ったー」
「わたしもそう思う。優しそうな先生」

 三人とも同じ意見で、ユリカは安心した。こうして、休み時間には三人で共感しあえる。これからずっとサヤカと隣だとしても、なんとかやっていけそうだ。
 少し元気が出て、言った。

「さ、早速寮に行ってみよっか! これから三年間、過ごすわけだから早く見に行きたいじゃん?」
「さんせー」

 シオリは先生に当てられた小学生のように、はい、と元気に手を挙げている。
 
「わたしもユリカに賛成かな。もう荷物届いてるだろうしさ、荷解き終わらせちゃおー」

 いえーい、と三人で仲良く手をつないで、少し遠くに見える白百合寮に向かう。
(どんなところなんだろう、白百合寮は)
 ユリカは、わくわくと心が躍るのをずっと止められないでいる。

 その姿を、奇妙な姿をした動物が見ていた。耳と尻尾が生え、一見猫のようだが、決定的に猫ではない。白く丸い球体に、顔と四本の足と、尻尾が全部くっついた姿をしている。

「きゅー」

 その生き物は、三人のうちのユリカを見つめて、そう鳴き声を上げた。

◇◆◇◆◇

「じゃんけんぽいっ……やったー!」

 三人は白百合寮の玄関前で、「荷物取り」を決めていた。ジャンケンに買った二人が既に郵送済みの荷物を取りに行き、一人は楽が出来る。そういうルールだった。
 ユリカはそのジャンケンに勝利して、無事二人より一足先に寮の自室に向かったのだった。

(楽しみ……これからわたしたちが、過ごしていく部屋!)

 ユリカとキョーコとシオリの部屋は、同じ階にあるらしかった。ユリカの部屋は、その階の一番奥、階段やエレベーターから一番離れた位置にあった。

(移動するの大変だなー)
 これから三人分の荷物を運んでくる二人に少し申しわけなくなりつつ、ドアの前に立つ。

「失礼しまーす!」 

 誰もいないことはユリカもわかっていた。なんとなく、新しく出会った部屋に対してそう言って、扉を開いたのだ。

 高揚感を覚えながら、新たな住居を期待したユリカだった。これからの楽しい生活を疑ったことなど一度もなかった。
 ユリカは、その時既に、自分の運命が決まっていたことなど知る由もなかった。

「えっ……」

 ユリカの目には、驚くべき光景が映っていた。あまりの驚きに声も出ず、ひゅっと喉がなるのみだった。
 その部屋は、明らかに普通の部屋ではなかった。とにかく部屋中が気色の悪いピンク色に染め上げられていた。
(なによ……これ)
 ピンク色の部屋は、生きているかのように蠢いていた。
 ユリカは目の前の部屋を表す言葉が頭にふっと浮かぶのを感じた。肉壁だった。どくどくと波打ち、バケモノの液体が分泌される肉壁。
 まるで、巨大なバケモノの内臓にもぐりこんだようだった。
 しかし、その光景に悲鳴を上げる間もなく、突然ユリカは頭がぐらりとするような感覚を覚える。
 次の瞬間、霞が晴れるようにして、目の前の光景が一変していた。

「……あれ」

 そこは、全く普通の部屋だった。勉強机、箪笥、ベッド……どこにでもある、ありふれた部屋の佇まいに、ユリカはまたもや声も出ない。
(今の……何だったの?)

 狐につままれたような気持ちで部屋の中に入り、歩き回る。どこをとっても普通の部屋に戻っていた。

「意味……わかんない。幻覚?」
「きゅー」

 ユリカは唐突に聞こえた鳴き声にはっと振り向く。
 足元に、小動物がちょこんと座っていた。ユリカは呑気なことに、それを見て瞬時に気分が変わってしまう。

「あ、可愛いっ!」

 しゃがみこんで、頭を撫でる。しかしユリカはそこで、この生き物のどこかがおかしいことに気付いた。
 胴体がない。ふかふかと柔らかいクッションみたいな丸い球体に、猫みたいな顔と、足と、しっぽがくっついている。

「この子、なんて品種だろう……始めて見たー」
「きゅー」
「どうしてこんなところにペットが……白百合寮はペット禁止だよ?」
「きゅー」
「鳴き声、可愛いね。そうだ……君の名前はキューにしよっか。ほら、見た目もアルファベットのキューに似てるし―」

 キューはおとなしいことに、ユリカにわしゃわしゃと身体を撫でられていたが、そのうち手を離れて、しゃばみこんだユリカのスカートの中に入っていこうとする。
 ユリカは、内股を柔らかい毛にくすぐられ、くすくす笑った。思わず尻もちをついてしまう。

「こら、キューったら……」
「キュー……キュキュキュッ」
「え、いやぁっ、何よキュー……きゃっ!」

 ユリカは痺れるような快感を覚えて、頭が真っ白になっていた。キューが下着の中にするすると尻尾を忍び込ませてきていた。それがやたらに、気持ちいいのだ。
(や、やだ……いやっ)
 ユリカは柔らかい毛に擦られる快感で、身体の力がふっと抜けるのを感じた。ふとももの間に侵入してくる小動物をなんとか遠ざけようとするが、ますます柔らかい尻尾から得る快感は増していく。
 ユリカは床に寝ころんだまま、悶えることしかできなかった。

「んっ……いやぁ、キュー、やめてよぉっ」
「キュキュッ……キュー」
「あ、だめ……そこはっ! あぁんっ!」

 ユリカの表情が、強烈な快楽でとろけていく。太ももはぎゅっとキューを挟み、上半身は仰け反って、ひくひくと震える。
 キューの尻尾はユリカのクリトリスをさわさわと撫でていた。
 もはやはばかることなくユリカは甘く喘いで、キューの愛撫に身を任せていた。

「なんで……んんっ! わたし、こんなの……あっ、もうダメっ!」
「きゅ~」
「イクぅっ! あっ……あぁっ」

 絶頂した瞬間、ユリカはあまりの気持ちよさに、気を失っていた。キューは尻尾をユリカから離し、可愛らしい顔でその桃色に発情した女子高生の肉体を見下ろしている。

◇◆◇◆◇

「おーい、ユリカ! 大丈夫?」
「寝てるの?」

 ユリカが目を開けると、たくさんの荷物を抱えたキョーコとシオリが、心配そうに見下ろしていた。
(……あれ、わたし、どうしちゃったんだろう)

「な、なんでもないって。ちょっと瞑想してただけっ」
「はー? なにそれ、ユリカってそんな趣味あるの?」
「意外」

 ユリカは上半身を起こした。キョーコとシオリの声も、耳に入っていない。
 まださっきの体の火照りが冷め切っていない。自分の乱れようを恥ずかしく思いながら、スカートの裾を直しているときに、気付いた。

(……ん)

 自分の股間に、何か知らない感触があった。まだキューが隠れているのかと思ったが、そうではない。触ると、自分の身体を触っている感触があった。
 それは突起だった。一本、ふにゃふにゃしたものが股間から生えている。
 そして、その一本の下に、二つの玉が薄い皮にくるまれて、存在していた。

(なに……これ)
 棒は根元から先端まで、ふにふにとした感触だ。
 ユリカは、頭の芯から、冷えていくのがわかった。この感触は、明らかにこれまでの自分の体にはなかったのに、なんど触っても自分の体だった。
 視線の先に、まだ部屋に残っていたキューが映る。
 
(もしかして……キューの仕業なの?)
 ユリカは見つめるが、キューは表情を変えない。

「ユリカ、ぼーっとしてるけど大丈夫?」
「え、……う、うん」
「あの猫、ユリカ知ってる? なぜか部屋から離れてくれないんだけど」
「わ、わたしが連れてきたの! 後でわたしが出しておくね」
「そう? つうかさー、わたしたち荷物運びで汗かいちゃったよ。早速だけどさ、この寮って、共同浴場があるらしいじゃん。どんな感じか、見に行かない?」
「ご、ごめん! 今無理! 後で行くから、二人で先いってて!」

 ユリカは逃げ出すように、キューを胸に抱えて部屋のトイレに駆けこんだ。まさか、キョーコとシオリに今の裸を見られるわけにはいかない。

「ユリカ、様子おかしくない?」
「うん……心配」

 キョーコとシオリはそう言いつつも、風呂に行く準備をし始めた。
 ユリカはその荷解きの音を聞きながら、トイレの便座に座る。スカートを脱ごうと手をかけて、心臓がどくどくと鼓動を早めるのを感じた。
 えいっとスカート下ろして、ユリカは思わず声をあげる。

「うそっ! こんなの、どうしたらいいの~!」

 股間に生えていたのは、男性の性器だった。ユリカはその実物を見たことがなかったが、一目瞭然だった。
 少しの間、ユリカはソレを見つめていたが、ふいに恥ずかしくなって目を反らした。
 代わりにキューに目を移す。

「どうしてくれるのよっ! あんたがこれ、やったんでしょっ!」

 ユリカは返答を期待せず、ただ気持ちを吐き出したくてそう言ったのだった。しかし、その猫のような生物は、流暢な日本語で、こう言ったのだった。

「そうだキュー。君は、今日からふたなりだキュー」

 驚きで瞠目するユリカに、キューは可愛らしい無表情を見せるのだった。
(つづく)






<ふたなり寮>ACT1

長編を予定しています! ちまちま更新していきます。
たっぷりふたなりの魅力をお楽しみください!




「お姉ちゃん、おーきーて」

 ユリカの朝は、いつもその一声から始まる。
 妹のカナが、起こしに来たのだ。

「おーきーて、ってばっ」
「うるっさいなー、カナはー」

 ユリカは眠気に勝てず、布団をかき寄せる。
 カナの声は、鈴が凛と鳴るような、澄んだ響きを持っていた。かなり贅沢な寝覚ましだが、ユリカ本人は別にそうとは思っていない。
 カナに布団の上から馬乗りされ、ぱし、ぱしと布団ごとはたかれて、やっと音をあげた。

「何よ~もう少し寝かしてくれてもいいじゃんっ」

 うんざり顔で、ユリカはむっくりと身体を起こす。自然と、近距離で対面することになった。
 ユリカとカナ、姉妹二人揃って、いわゆる美少女だ。
 ただ、ユリカはだらしなく寝坊しているのに比べて、カナは家を出る準備が整っている。

(相変わらず、模範的で可愛げがないんだからっ)

 ツインテールの髪型が、ばっちり決まっている。
 中学校の制服を着こなしていた。女子たちの間ではデザインが大人っぽく、可愛いことで有名な、清楚なセーラー服だ。
 そんな制服に不釣り合いなのが、その胸だった。女子高生でもほとんどいないくらいのサイズで、色気を漂わせている。これまで男子生徒たちの視線を集め続け、これからもそうなることが確かだった。
 だが、姉のユリカはほとんど気にしていなかった。せいぜい、姉である自分より大きいサイズにむかついて、時々ちょっかいをだすくらいだ。

「おはよ、おねーちゃん。髪ぼさぼさだよー。ちゃんと髪結んで寝ないからー」

 ユリカは、妹に比べてだらしない性格をしていた。
 胸のあたりまで、ストレートの髪を伸ばしている。長いと面倒なので、切ってしまってもいいと思っていた。
 まるで子供の世話をする母親のように、カナはその髪を整える。カナは中学二年生、ユリカは高校一年生だというのに、傍から見たら誰もそうは思わないだろう。
 ユリカはまだ寝ぼけ眼で、妹の優しさに全くありがたみを感じていない。

「後で自分でやるってば……カナは」
「日曜日じゃないんだよー?」
「春休みでしょ? もーすこし寝かせて」
「何言ってるの、おねーちゃん。今日は始業式、おねーちゃんの記念すべき、紫蘭学園初登校日じゃんっ」
「え……うそっ? 今日って、えぇっ?」

 ユリカはカレンダーを二度見する。電波時計の日付と見比べたら、妹が正しいことが明らかだった。
 額に手を当てて、ため息をつく。

(わたしったら……ほんとにずぼら)

「カナは先に学校行ってていいよ。もう始業式は済んで、とっくに授業始まってるんでしょ?」
「おねーちゃん、わかってないなー。わたし、おねーちゃんの新しい制服姿がみたいの。紫蘭学園の制服が」
「そんなの、制服が届いた日に見せたじゃん」
「だって凄く似合って、モデルさんみたいなんだもん、おねーちゃんっ」

 カナはユリカに抱き着いて、甘えた。ユリカも姉らしく、ふふっと笑って抱き返している。
(こーゆうところはやっぱり、可愛いんだから)
 姉妹でじゃれあっていると、突然インターホンが鳴った。

「ユリカさん、いますかー」
「友達のキョーコとシオリです」
「あっ、迎えに来ちゃった。急がないとっ」

 ユリカは、パジャマを脱ぎ散らかして、新しい制服に身体を通す。

 本当に、何気のない日常だった。それが思いもよらぬ形で崩れだすとは、ユリカは全く知る由もなかった。

◇◆◇◆◇

「わー、ユリカ、美少女だー」
「素材がいい上に、可愛い服着たら、最強」

 先程まで乱れっぱなしの服装だったユリカは、髪を整え、紫蘭高校の制服を身に着け見違えていた。
 
 化粧などしなくても、若々しい少女の肉体は、すべすべと滑らかだ。短めのチェックのスカートから覗く太ももも、傷一つなく、適度に肉がついている。
 全体の印象として、道行く男どもが、ちらちらと目をやるほどの美少女だった。

「そんなー、褒めても何も出ないってばー。キョーコもシオリも、可愛いって」

 キョーコはとシオリは、ユリカの親友だった。中学生のときからずっと同じクラスで、ずっと一緒にお喋りして、遊んできた。そして同じ部屋で勉強して、同じ高校、紫蘭学園に入学することになった。

 キョーコは、流行のファッションやアイテムが好きな、ごく普通な女子高生だ。胸の大きさもそこそこで、髪も肩にかかるくらい。ユリカに負けず劣らず美少女で、当たり前のように彼氏がいた。
 ユリカはよくその彼氏の話を聞かされている。ユリカは一度も男と付き合ったことが無い乙女なので、興味津々で耳を傾けていた。

 一方シオリは、見た目からなんとなくおとなしそうな雰囲気が出ている女の子だ。髪はショートで、胸はカナと同じくらい大きい。こっちも美少女で、小動物的な可愛さが、中学クラスで、男子生徒たちの人気を買っていた。
 小説・漫画に限らず、よく本を読んでいて、家の本棚はいっぱいになっている。インドア・内向的な女の子だ。ぼそっと、呟くように話すのがそれを端的に表している。

 勉強面で、キョーコとユリカはシオリに助けてもらっている面が多い。人気女子校である、紫蘭学園に合格できたのも、ほとんどそのおかげだった。

 三人とも雰囲気が違うが、全員人目を惹くくらい美少女だ。

「おねーちゃん、モデルみたいだよー。ばいばーい」

 三人が並んで歩き出すと、カナは、最後まで満面の笑顔で送り出してくれていた。

「いい妹ちゃんだねー」
「羨ましい」
「でしょー? わたしも妹がまじめすぎて、困っちゃってさー」

 ユリカは内心で幸せな気分になりながら、手をひらひら振って、得意な気分になっている。それが彼女のいつもの行動だった。すぐに調子に乗ってしまうのだ。子供のころから可愛い、可愛いと言われ、育てられた結果だった。

 数時間後には、調子に乗っていられる状況ではなくなることなど、知らなかった。

◇◆◇◆◇

(どんな女の子たちと友達になれるかな……きっとみんな品が良くてまじめなんだろうなー)

 ユリカは紫蘭学園での新しい女子校ライフを楽しみにしていた。
 なぜなら、ユリカは男子があまり好きではなかった。根本的に、綺麗で、可愛いものが大好きなのだ。カッコいいものとか、激しいものは嫌いだった。
 周りに物腰が柔らかくて、見た目が華やかな女子しかいない環境は、望むところだったのだ。

 もちろん、色恋沙汰に興味がないわけでない。しかしユリカにはキョーコとシオリという姉妹同然の親友がいて、その友達付き合いが十分楽しかったから、十分だった。

 そんな思いで紫蘭学園の校門をくぐったユリカは、気分が高揚するのを感じていた。 

「わー、なんか可愛い子、多くない? すっごい雰囲気いい!」

 試験会場として訪れてはいたが、在校生たちが生活しているのを見ると、やはり印象が違った。
 校舎は新築されたばかりで、すっきりと綺麗で、現代的で、お洒落だ。
 そして大事なのが、女の子たちがクスクス笑いながら、楽しそうにお喋りしている姿だった。なんとなく女の子らしくしおらしく、それでいて活気があった。

「うん。わたしが勧めただけのことはある」
「そりゃー、みんなちゃんと勉強してきた、ちゃんとした娘《こ》たちなんだから、身だしなみだってちゃんとしてるからねー」

 キョーコもシオリも自分と同じく、これから過ごすことになる日々を想像して、胸を膨らませているように、ユリカには見えた。
 人だかりを掻き分けて、クラス分けの掲示を見に行って、三人は抱き合った。

「みんな同じクラスだー! やったねっ!」

 そういうことで、三人一緒に、案内に従ってクラスに向かう。

「わたしたち、やっぱり縁があるね!」
「ま、別のクラスでも休み時間になったら会いに行くし、変わらないけどねー」
「わたしもそうするつもりだった」

 そのまま、三人は寄り添いながら教室の前までたどり着く。三人とも、興奮が冷めないままでいる。ユリカは貼りだされた座席表を見て言った。

「さすがに席はちょっと離れてるか……クラスで新しい友達も作らないとねー」
「ううん。三人だけでやってくのもいい」
「シオリの言う通りだって! むしろそうしたいしっ」

(こんなに仲のいい親友がいて幸せっ!)
 気分よくユリカはドアを開けて、教室に入ろうとした。と、ドアの向こう側にも教室から出ようとしていた人がいて、ぶつかりそうになってしまう。
 ユリカはバランスを崩して、その場で尻もちをついてしまった。
(つづく)






<妹姫9話>生徒会室とマーメイドの湖




「クリスティーユのこと知らないのか?」
「そ、そういうことね……。知ってるに決まってるでしょ? わたし、会長とはけっこう仲いいんだから。時々一緒にご飯も食べるわ」
「なんかあの人だけオーラが抜群だよな」
「オーラだけでなく実力もあるのよ? 槍の腕前は学園随一と言っても過言ではないわ。姫騎士団を束ねているのは伊達じゃないの」
「生徒会長もやってんだろ? 今から会いに行こうと思うんだけど」

 リナはちょっと誇らしげに胸を張った。

「そういうことなら、わたしが生徒会室まで案内してあげるわ。わたし、これでも生徒会委員なんだから」

***

「レイジ殿下! すまない……見苦しい所をお見せした」
「おはよう、クリスティーユさん」

 制服姿のクリスティーユが、生徒会室の生徒会長席に座って優雅に足を組み、本を読んでいた。
 俺の姿に目を丸くし、すっと足を元に戻す。

「部屋が散らかっているだろう。訪問があるとわかっていたら掃除をしておいたのだが……このていたらくだ」

 生徒会室は広く、暖炉があるような中世っぽい趣のある素敵部屋だった。しかし、今は机にたくさんの書類ががさっと重ねられている。

「別に大して散らかってないと思うけどな」
「そう言ってもらえると助かる。そこにかけてくれ。わたしの好みの紅茶があるが、淹れるか?」
「ほう……頼む」
「じゃあ、わたしが淹れてきてあげるわ」

 リナは部屋の奥のキッチンに歩いていった。
 クリスティーユは礼を言って、俺に凛とした声で話す。

「我々生徒会は、この学園を取り仕切っている。先日のドラゴンの襲撃を記録にまとめておかなくてはならなくてな……今後の襲撃への対策として、重要な作業だ」
「みんなに影響が及んでるんだな……昨日の襲撃」
「そうだな。あれほどの事件はなかなか起こるものではない。そのことだが……レイジ閣下! 先日の活躍はこの目で見た……! 惚れ惚れしたぞ……今思い出しても、胸がすく。あれこそ騎士の鑑《かがみ》だ」

 クリスティーユは興奮気味に、うんうんと一人で頷いている。
(それにしても美人だな……)
 騎士鎧を脱いだ制服姿だと、女らしさが際立つ。
 上品に毛先をカールした金髪。しかも、巨乳でお尻も大きいのにウエストは引き締まっている。スカートの下、黒いパンストに包まれた引き締まった太ももが目を惹き付ける。

「あの時の怪我は治ったようだな。見舞いに行けなくてすまなかった。腑抜けた騎士団員たちに騎士道精神のなんたるかを教えていたら、あっという間に時間が経ってしまってな」
「腑抜けって……昨日のことか? 別に叱るほどでもないんじゃ?」

 ドラゴンを前に、クリスティーユ以外の姫騎士たちは怯えきって、まともに近づくことすら出来なかった。でも、対抗する力がないなら退却するのが正しい判断だと思うのは、俺だけではないはず。

「いいや、正義のためなら命をも投げ出してこそ真の姫騎士だ。もし妹の古代魔術が失敗したり、貴殿が龍に一撃を食らわせたりしなければ、姫達は無残にも龍の魔の手にかかっていただろう」

 まあ、確かにそうだけど……妹の大魔術? あの落雷のことか?

「え? サーニャってクリスティーユさんの妹なの?」
「ああ、そうだ。サーニャはわたしの妹だ。会ったのか? よくできた娘だろう?」

 クリスティーユさんはどこか得意げに言った。自慢の妹と言った感じ。
 まあ思い返してみれば、顔つきが似ていなくもない。髪色も同じだし。

「姉は生徒会長兼騎士団長で、妹は主席成績か。優秀なお家柄だね」

 いいや、とクリスティーユは頭を振る。

「我が家はここイディアルを守る一柱に過ぎない。他の多くの姫騎士や姫たちの力なくして、この国の平和は守れないだろう。なあ、ハクア? レイジ殿に挨拶をしておいたほうがいいんじゃないか?」

 クリスティーユの目線の先では、一人のエルフが机で書類に目を通していた。彼女は部屋に入った時からずっといたが、俺を一瞥したきり無言で作業を続けていた。
 耳がぴんと立ち、どこか利発そうな印象を受ける女の子だ。銀髪をお嬢様なヘアスタイルに結っている。
 俺が見ているのに気が付くと、目を細めて愛想のいい笑顔を浮かべながら、こう言った。

「先輩、男なんて、はやくこの神聖なる生徒会室から追い出していただけませんこと?」
「ハクア! レイジ殿になんと無礼なことを言うか!」

 一転鋭い目線になるクリスティーユ。ハクアと呼ばれた女の子は拗ねたような顔で言い返した。

「だって……ここは清らかな淑女の集まる神聖な学び舎、どうして男が入りこむことが許されるのかしら。当然の扱いでなくて?」
「ハクアは昔から男が嫌いなんだ。許してやってくれ、レイジ殿」

 俺はむしろ、このハクアという子に興味を抱いていた。こういうツンツンした子ほど、征服したときの喜びは大きいというもの。

「ふんっ、わたしには男など必要ないのですわ……」

 ハクアは席を立ち、優雅に生徒会室を出ていった。

「困ったやつだ……全く。冷ややかなところはあるが、本当はいい子なのだが」
「ハクアったら……あの様子だと、また相手の生徒と部屋にこもってしまいそうね」
「相手の生徒?」
「ハクアはね、チコという女子生徒と恋仲との噂があるの。もし本当だったら退学ものね……」

 リナが、湯気の立つ紅茶をお盆に乗せて持ってきながら、微妙な表情で言う。

「……不道徳にもほどがあるな。わが騎士団に引き入れ、精神を叩き直したいと思うことがよくある」

 その言葉を聞きながらその甘い紅茶を飲んで、俺はちょっと閃いた。
(姫騎士を叩き直す……その名目があれば面白いことができそうだ)

「そうだ、クリスティーユさん。姫騎士たちを少しかしてくれよ」
「ふん? もちろんいいが、彼女たちに何か用があるのか?」
「腑抜けた精神を叩き直そうかと思って」

 クリスティーユの顔がほころぶ。

「おお……それはありがたい! レイジ殿直々の指導をしていただけるのなら、姫騎士たちも身が入るだろう。そのうち腑抜け騎士どもを選んで閣下に引き渡そう」

 色々とクリスティーユさんと話していると、すごくしっかりした人だとわかった。「騎士道精神」という軸が根付いている。
(この人は簡単に口説き落とせそうじゃないな)
 しかし今や俺は歩けば姫達が寄ってくるイケメン、うまくやれば、どんな美少女でも美女でも攻略できるはず。
(この誇り高い女騎士殿を俺の女にしてやりたい……!)
 無理やり犯してもいいが、出来れば心から俺に服従させたい。そんな妄想をしているとクリスティーユが何か思い出した顔をした。

「レイジ殿! そういえば、昨日予定していた校内散策を行っていないではないか! よければ、今すぐにでも始めたいのだが」

***

「ここイディアル学園には、特設のプールがある」

 俺はクリスティーユに連れられて、廊下を歩いていた。
 隣を歩くリナが何やらほくそ笑む。

「普通のプールだと思ったら、大間違いよ?」
「ほう……楽しみだな」

 クリスティーユは廊下を俺を連れて歩いて、澄んだ水の張られたある一室へとたどり着いたのだった。
 前世の高校にあったのと同じようなプールだった。

「普通じゃねえか」
「見てなさいってば」

 リナがふふんと笑う。少し違うのは水深が深く、底が見通せないこと。
 
「誰かいないか? 水棲の姫たち!」

 屋内プールみたいな場所に、クリスティーユの凛々しい声が反響する。
 すぐに、パシャッと水面に大きな影が浮かんでくる。
 プールの淵に手をつき、一人の女の子が顔を出す。

「あ、クリスじゃない。こんにちは。昨日は大変だったみたいね」

 水色の髪を肩に流した、白いビキニ姿の女の子だった。ちょっと大人びた雰囲気を持っている。豊かな胸が、今にも水着から零れ落ちそう。
(エロい……)
 揺れるおっぱいに加え、濡れた髪や肌は艶々と輝いて魅力的だった。

「こんにちはナギサ。昨日大活躍してくれたのが、この隣にいるお方だ」
「隣の方は……あら、男性じゃない! びっくりしたわ! もしかしてこの方が……レイジ様?」

 ナギサはかすかに頬を染め、無防備に見せていた豊かな上乳を隠すように水中に上半身を浸した。

「よろしくナギサ。ナギサは泳ぐのが上手いんだね」
「ん……そうか、レイジ様はマーメイドを知らないのだな。ナギサ、見せてやってくれ」
「へ? 嫌よ、恥ずかしいもの」
「少しくらいいいだろう? いつもわたしの前ではそうしているではないか」
「クリスに頼まれたら、断れないじゃない。もう……」

 ナギサはパシャッと跳ねて、水面から飛び出した。
 プールサイドに出てきたその本当の姿に、俺は目を見張った。

「に、人魚!? すげえええ!」

 ナギサは腰のところから膝のあたりまでを水着のスカートで隠していたが、見える部分、膝より下は一本の尾びれになっており、全て光沢のある鱗に覆われていた。
(マジかよマーメイド美しいんだけど……)
 整った形の尾びれには気品を感じるし、鱗は一枚一枚光の当たる角度によってキラキラと輝きを変え、玉虫色の宝石のよう。

「ん……しょ、と」

 ピチピチと尾びれを跳ねさせながら、ナギサは両腕を床について、動きにくそうにしている。胸がぷるんと揺れる。
 
「レイジ様……その、もういいかしら。この無様な格好、けっこう恥ずかしいの……」
「そうか悪いな、戻っていいよ」

 ナギサが水に飛び込むと同時に、もう一人マーメイドが水面から飛び出してきた。

「誰か、呼んだー!?」

 どこか荒っぽい声でそう言う彼女は――口に、まだピチピチ動く魚を咥えていた。野生的な輝きを持つ瞳が、クリスティーユを捉える。

「これはこれは生徒会長さんじゃないですかー! なに、なんかわたしに用?」
「ミナモ! 口に物をいれながら話さない! 失礼でしょ!」
「はーい、ナギサ……あれ、その隣の人、もしかしてイディアルの一番偉い皇帝さん?」

 おさかなさんばいばい、と魚をプールに放って、ミナモはけろりとした顔をしている。それを見て俺はふと気づいた。

「もしかして……近くに湖があるって聞いたけど、このプールはそことつながってる? プールに魚がいるっておかしいでしょ」
「その通りだ。さすが、レイジ殿は察しがいいな」

 会話しながらもう一つ思い出していた。
(そういえば……近くの湖には……)

「その湖には、水竜がいるって本当か? 討伐したいんだけど」

 言った途端、二人のマーメイドが驚いて顔を見合わせる。

「おー、それはマジで言ってるのかい、レイジさん?」
「わたしも同意見よ……触らぬ神に祟りなし、だわ」
「へえ、水竜って強いのか」
「かなり手ごわいと思います……しかも水中で戦うことになりますから」
「うん、ナギサの言う通りだ。あんたらヒューマンは、陸上のほうが絶対戦いやすいぜ?」
「マジか……そう簡単には討伐できそうにないか。封龍剣すぐ作れるかと思ったんだけどな」
「封龍剣……! 貴殿はあの伝説の武器を作るおつもりか!」
「ああ、逆に俺以外、作れるやつなんていないだろ」

 言い切ってみると、ミナモが目を輝かせて喋りだす。

「おー! そこまで言うなら、ルシカ様に運勢を占ってもらったらどうかな、ナギサ? もし予言がいい感じなら、すぐにでも討伐に出かけてもいいぜ、わたしは」
「あぁ……それはいいアイデアね! レイジ様も、一度くらいルシカ様に挨拶して行ったほうがいいんじゃないかしら」
「占い? 俺はいいや、そういうの」
「違うって! そんじょそこらの占いとは違うの、ルシカ様のは完全に「予言」なんだよ!」
「予言?」
「そうよ。ルシカ様は、一度たりとも予言を外したことがないわ。魔力で未来を見ているのよ」
「ほう……魔力で、か」

 インチキではなさそうだ。魔力は占いもできるのか……まだ俺の知らない魔法がたくさんありそうだ。

「じゃ、さっそく行くかっレイジさん! これ使って!」

 ミナモは真珠みたいな小さく白い球体を俺に投げて、水の中へ潜っていく。
 ついてきてくださいね、と言い残してナギサもプールの中へ消えてしまった。
 俺はもらった真珠を口に含んで上の服をばっと脱ぐと、リナが軽く悲鳴をあげる。

「ちょ、ちょっとばか! いきなり脱ぎはじめないでよね!」
「殿下は思い切った方だな……だがその制服は水中でも重くならない特殊仕様なはずだ。そのまま飛び込んでも問題ないぞ」
「そうなんだ、超便利だな。二人は来ないの?」
「わたしたちの制服には防水機能はないの! 行けるわけないでしょ! 水着なんか箪笥の奥のほうだし!」
「わたしも今は水着が……それに湖の案内役としても、彼女たちのほうが適しているだろう」

 姫たちが水着を着て、俺の目を楽しませるよう制服の観点からも仕組まれているのかもしれない。

「じゃあひとまずお別れだな。なあ、この白い球体って、どうせ呼吸のためのものなんだろ?」
「ああ。それは息継ぎ真珠。口に入れておけば一時間くらい息が持つぞ」

***

 マーメイドに連れられ、プールの澄き通った水の中を潜っていく。耳元でゴポゴポと音が響く。
 二人の泳ぎは、無駄がない。すいすいと先へと進んでいってしまう。下半身が泳ぎに最適化されているのは強い。
 プールの底の一角に、四角い穴が空いていた。
 そこを抜けると、湖の底に出る。美しい岩や海藻に太陽の光が躍っていた。湖の底に光が届くほど、水は綺麗だった。
 前方を見て、俺は衝撃を受けた。
(竜宮城みたいだ……)
 水中に城のような構造物が建てられていた。青く美しい水の中、日の光に彩られ、夢のような景色だった。
 見惚れていた時だった。

「――!」

 背後から、大きな水の流れ、勢いを感じる。振り向くと――
 全身鱗に覆われた、巨大な身体。俺の何十倍もありそう。大きな翼、カサゴのように尖った背びれ……でかすぎて全体像が把握できない。
 水竜がこちらを警戒せず、悠々とすぐ傍を泳いでいた。
 豪華客船が通り過ぎていくような迫力に、俺は舌を巻くしかなかった。

***

「まさか……あんな大変な予言になるなんてね」

 俺はルシカに会い予言の儀式を済ませた後で、ナギサと城に帰ろうとしているところだった。
 俺が湖の波打ち際の岩場を歩いていて、水の中隣をナギサが泳いでついてきている。

「正直意味がわかんなかったんだが」
「ルシカ様の予言はいつも抽象的なのよ……あの眼には、そこまで具体的には視えていないのかもしれないわね」

 占術師ルシカは、水中の暗い洞窟にひっそりと棲む、両目を白濁させた老婆だった。顔に刻まれた皺は、生きてきた時間の長さを感じさせ、威厳を湛えていた。
 純血マーメイドで、耳のところにひれがついているのが印象的だった。
 彼女は、俺が祠に近づくや否や、甲高い声をあげた。

「貴様……この世の人間ではないな? 立ち去れ……!」

(俺が異世界転生したこと、バレてるのか……!?)
 耳のひれを震わせ、威嚇するように鋭い銛を手に取るルシカをナギサが宥め、なんとか予言を執り行ってもらえることになった。

「恩に着るがいい、今回限り特別に占おう……霊を触らせろ」

 老婆は俺に近づき、険しい顔で言ってくる。

「再び龍は襲撃するだろう……これは予言ではない。永遠の運命、魔法使いがその身に背負うべき罪の代償……」

 その言葉を前置きに、ルシカは俺の胸に触れ、自分の胸に手を当てる。眩い白い光が辺りを満たし、魔法が詠唱され、世界が白く歪んでいく。術をかけられている間、俺は巨大な力が俺の意思を押し流そうとするのを感じた。
(すごい魔力だ……)

「視える、視えているぞ……貴様のたどり着く行く末が。ああ……なんと因果な。貴様の魂は、その肉体から切り離されるだろう……ある者の悪意によって」

 要は、俺が殺されると。またそれか。ナギサが息を飲むのが聞こえた。

「この国に、いや、この世界に、危機が迫っている……全ての因果は、貴様に集結していることを肝に命じるがいい……止めることは出来なくても、遅らせることはできる……魔の国イディアルの大転換期が、すぐそこに……」

 ルシカの予言は、最後にそう締めた。
(わけわかんね)
 昨日も襲撃があったんだし、少しは危機感を持とうとは思うが、別に今すぐ焦ることもないと思う。こういう時に取り乱して無駄に足掻くやつほど、うまくいかないのだ。

「ま、さっきの予言、頭の片隅にでも置いておくよ。ルシカさんを説得してくれてありがとな、ナギサ」
「感謝されるほどでもないわ……あの御婆さんは、いつも頑固なのよ」

 ナギサは大人びた顔を、ちょっと照れた感じで赤らめた。
 ふと、水面に出ている、ナギサのつややかに濡れた背中の肩甲骨に目が留まる。ビキニの肩紐が気になる。
(むらむらしてきた……)
 女の子と気持ちよくエッチして、もやもやした気持ちをリフレッシュしたいところ。
 ハーフマーメイドって……エッチできるんだよな?

「ナギサ、ちょっといいか」
「どうしたの?」

 彼女はすっかり俺に気を許しているようで、微笑んでいる。

「ナギサって、王族の姫だよね」
「そうよ……? わたしは王族の血が混じったハーフマーメイドの一族。この湖には、逆に完全な純血マーメイドのほうが少ないわ」
「初めて人魚の身体を見て、俺感動したよ。こんな種族が存在するなんて、って。もう一目だけでも、その尾びれを俺に見せてくれないかな」
「いやよ……わたしたちって、尾びれを水から出すとすごく不安になるの。なんていうか……あなたたちヒューマンが言う、地に足が付かない感じと言うか……」

 ナギサは恥ずかしそうに目を反らして、ぶくぶくと水の中に沈む。

「そうか……残念だなぁ」

 俺ががっかりとため息をつくと、彼女はちらっと見てきて、気遣うように訊いてくる。

「そんなに……見せて欲しいの?」
「ああ、気になって仕方ない」
「もう……少しだけよ?」

(この子、お姉さん肌だな……)
 困っている人がいたら放っておけない感じが、滲み出ている。
 ばしゃり、と湖から飛び出し、岩の上に美しく虹色に輝く鱗に覆われた尾びれをさらし、腕だけで上半身を支える。
 ビキニ姿の上半身は、おっぱいがやわらかそう。肌もつるんとしていて、撫でまわしたくなる。

「これで……いいかしら」
「ああ。ちょっと悪いな、ナギサ」
「え……なに!? きゃっ!」

 お姫様だっこで抱え上げると、ナギサは全く抵抗できずに尾びれをピチピチさせ、頬を上気させている。

「ナギサ……向こうの岩陰で、セックスしようぜ」
「せっくすって……? わ、わたしをどうするつもり!?」
(つづく)






<妹姫8話>二人目のメイドとファンクラブ




「今日は講義無し、学校はお休みとのことです。昨日、あれだけ大変なことがありましたからね」

 俺はウィルベルと一緒に破壊された校舎の修復作業を見に来ていた。
 それぞれ役目を割り当てられた姫たちが、風属性の魔法を使って石を浮き上がらせ、もとあった位置へと戻したり、土属性魔法で「組立《コンポーズ》!」と石材を修復したりしていく。作業はすいすいと進んでいて、明日にでも学園は元通りになりそうだった。

「せっかくのお暇ですし、学園のあちこちを回ってみたり、これから共に過ごす生徒さんたちの様子を見に行ったりしてはいかがでしょう?」
「ああ、身体も全回復したし、そうしてみようかな」

 俺は肩をぐるりと回して見せた。

「ご主人様が起きたときにおそばにいれなくてすみません……一晩中おそばにいるつもりだったのですが、保健室の先生たちが面倒を見てくれると言ってくれたので、自室で休ませてもらいました」
「……あの二人か」

 とんでもないビッチエルフだった……二人のおまんこ、きつくて気持ちよかったなぁ。
 定期的に保健室に通うことになりそうだ。

「それにしても、ご主人様が無事で本当によかったです……! しもべであるわたしをドラゴンから守ってくれるなんて、ウィルベルは驚いてしまいました」
「そんなの当たり前だろ。可愛いメイドさんを失うわけにはいかないし」
「ご主人様……! ウィルベルは幸せ者です!」

 ウィルベルは感動した様子で頬を染めている。その胸に抱かれたスミレに頭の中で話しかける。

――おいおい、お前これまでウィルベルにどういう扱いしてきたんだよ?
――君が優しすぎるだけじゃないか? まあウィルベルがいい子だってことはわかってたけどね。

 スミレはウィルベルに頭を撫でられて、みゃーおと気持ちよさそうに鳴く。ウィルベルに抱かれるのには、もう慣れてしまったようだ。

「お前はいっつもスミレを抱えてんな」
「それはもちろんです。ご主人様がわたしに初めて与えてくださったペットですし、なにより可愛いじゃないですかぁ……」

 ふにゃふにゃ笑って、スミレをぎゅっと抱きしめ、頬ずりする。さすがに嫌なのか、スミレのほうは抜け出そうと暴れはじめた。

「でもこの子……こうやってしょっちゅう逃げようとするんです」
「そりゃ猫だからな、そういうもんだろ」

 言った傍から、スミレはウィルベルの腕を振り払って、廊下を走って逃げていく。
――そろそろ限界だ……空気から女の匂いがしない場所に行くよ。
――ご愁傷様……

「ああ、待ってくださいったらぁ……行ってしまいました」

 ウィルベルはスミレの消えた方角を寂しそうに見ている。

「すぐに帰ってくるよ。さ、そろそろ移動するか」
「そうですね……もうスミレったら……」

 歩き出すと、俺たちを観察していた姫たちの一団に出くわした。みんな、きゃあきゃあと騒いで俺を見て頬を染めている。瞳がキラキラして、まさに恋する乙女と言った感じ。

「ご主人様は、やはりお姫様たちに相当人気を博しているようですね……昨日ご主人様が寝ている間も、たくさんの姫君がお見舞いに来ていました」
「全員一気に種付けしちゃ、つまんないしな……」

 俺が押し通ると、姫たちの集団は黄色い声をあげながら2つに割れた。
 全員、高校のクラスに一人いるかいないかくらいの美少女だ。俺の顔を期待げに見て、声をかけてくれるのを待っている様子。
(いつか全員犯してやろう)
 その間を通り、俺はひとまずアリスの様子を見に行くことにした。

***

「あ、ウィルベル……久しぶり!」

 校舎内の廊下を歩いていると、声をかけてきたのはメイドさんだった。
 白と黒色のウィルベルのメイド服とは違う服装だった。水色や白色で彩られた、爽やかなデザインのメイド服を来ている。
 髪はセミロングのシルバーブロンドで、フリルのついたヘッドドレスをつけている。

「メルティ! ご主人様に仕え始めてから会っていませんから……何年ぶりでしょう?」
「五年ぶりじゃないかしら。ウィルベル、大きくなったね……」
「身長はたいして伸びていませんよ?」
「胸よ」
「やめてください……」

 ウィルベルは胸に手を当てて恥ずかしそうにしながら、紹介した。

「彼女は、わたしの幼馴染みのメルティです。見ての通り、姫様のメイドをやってます」
「ほう、メルティさんよろしく」
「ウィルベル、羨ましいわ……レイジ様のメイドなんて……」

 メルティは、思ったことをはっきり言うタイプらしい。照れたはにかみ顔で言った。

「わたしも、お供してもよろしいでしょうか?」
「メルティったら……あなたのご主人様は放っておいていいのですか?」
「だってシルフィはすぐに一人でどこかに行ってしまうんだもの……どうせわたしのことなんか必要としていないんだわっ!」

 手のひらをぎゅっと握って頬を膨らますメルティ。
 メルティはどうやら、主人に相手にされていないようだった。きっとスミレが俺と身体を交換しなかったら、ウィルベルもそういう運命を辿っていたのだろう。

「またメルティはご主人に失礼なことを言って……あ、ご主人様着きました。ここがアリス様の部屋です」

 ウィルベルは一つの扉の前で足を止めた。さっそく呼びかける。

「アリス。調子が悪いらしいじゃないか。見に来たよ」
「れ、レイジ様!? どうしてわざわざわたしなんかのために!?」
「回復ポイントにいる時から具合悪そうだっただろ。俺のせいじゃないかと心配になって」
「……。ごめんなさい。部屋には入らないでね。面倒かけちゃって悪いんだけど……これを食堂に持っていって欲しいんだけど……いいかな」

 ドアの下の小窓から、食べ物の乗ったお盆が出てくる。ほとんど手が付けられていない。

「食べないのか?」
「なんだか……変な味がするの。青臭いというか……」

 味覚に異常……どういうことだろう。これは何か理由がありそうだ。

「でもお腹は不思議と減らないの、大丈夫だよ、レイジ様?」
「そうか……無理するなよ」
「うん」

 アリスは元気そうだし、無理に部屋に押し入ることもないだろう。じゃあな、と挨拶して歩き出す。

「次、生徒会室にでも行こうか。クリスティーユに会いたいな」
「騎士団長様ですか? わかりました、ご主人様」
「メルティも一緒に行きます!」

 と踏み出した時だった。
――石造りの床ががしゃりと崩れた。

***

「落とし穴、成功! ガーネット、お手柄よ! 計画通りね!」

 落下点ちょうどのところに、ソファが用意してあり、俺はそこにお尻で着地すると、やたら威勢のいい声が響いた。
(なんだなんだ!?)
 部屋には明かりが灯っておらず、暗闇に包まれている。
 自分が落ちてきた穴を見上げると、ちょうど崩れた石の破片が再構築され、修復され差し込む光が消えていくところだった。きっと土属性魔法だ。

「これでレイジ様はわたしたちだけのものよ! ふふふっ!」

 ぱっと光が満ちると、ここが物置のような倉庫のような部屋だと分かる。
 目の前に、きりっとした眉に、目力のある美少女が腰に手を当て立っていた。
 髪型はプラチナブロンドを腰まで届くポニーテールにしたもの。服装は普通の制服だ。

「誰だお前」
「ふふふ……聞いて驚きなさい! このわたしは、レイジ様ファンクラブ(過激派)会長、アミーナよ! 以後見知り置きなさい!」

 びしっと指をさしながら、自信に満ちた表情で高らかに宣言。なかなか様になっている。普段からこういう人なんだろうな……

「俺のファンクラブ……? そんなもんがあるのか」
「いいえ、ファンクラブ(過激派)よ! クラブの中でもやばい派閥だから、覚悟しなさい? ふふふっ、他の子たちとは一線を画してるんだから」
(自分でやばいって言ってる時点で……)
「そう……皇帝様に落とし穴を仕掛けるなんて、わたしたち以外にはできない」

 そう言いながら穴を土属性魔法で塞いでいるのは、黒髪ぱっつんで、かすれた感じの感情のこもらない声の美少女だった。制服がよれよれで、全然見た目に気を使っていないのがわかる。
 どことなく、普通の人とは違う時間を生きているような雰囲気が漂っている。
(でも確かにやばいことには違いなさそうだ……)
 100人いれば、イレギュラーも出てくるわけか。
 俺はもう一人、部屋にいることに気が付いた。

「この子は?」
「レイジ様……っ! 握手してくださいっ!!!」

 他の二人とは違い、普通な雰囲気の、ブラウンの髪をセミロングにした美少女がいつの間にか脇にいた。ぺこり、と頭を下げて、両手を俺に差し出している。

「こら、ルナ! どこにでもいるようなファンと同じことやってるんじゃないわ!」
「はっ……! すみません、アミーナ様!」
「ふん、まったく。わたしたちは普通じゃないの! ヤバいのよ! そのことをしっかりわきまえなさい!」
「はい!」

(ああ……他人と違う自分に酔ってるタイプか……)
 この世界に中二病という概念があるのかどうかふと気になるが、アミーナがまた高らかに言った。

「さて、もちろんだけど、あなたはわたしたちから逃げられないわ、ふふふ! この部屋には魔法がかけられているから、簡単には探知されない。これからたっぷり付き合ってもらうんだから」

 アミーナは人差し指をピンと立て、部屋を行ったり来たりしている。

「何をするんだよ」
「ふふふ……聞いて驚きなさい? わたしたちは、とある手段を使って、殿方について、ある情報を手に入れた。長い長い諜報戦だったわ……!」
「なんの情報だよ」
「これからわかることになるでしょうね、ふふふっ! ルナ、レイジ様を取り押さえなさい!」
「失礼します! きゃあっ、わたしレイジ様の腕に触れてる! 殿方の筋肉すごい!」
「ルナ、安易に騒がない! 過激派としての誇りはどこにいったの!?」
「はい! すみません!」

 いつの間にか後ろに回っていたルナが、俺の両腕を動けないよう、押さえつけてくる。
 その力は弱くて、逃げ出そうと思えば逃げ出せるけど、面白そうだからあえて俺は怖がってみる。

「ウワア、イッタイコレカラナニガハジマルンダ」
「身動きがとれないのね? これから起こることを、あなたは受け入れるしかないのよ!」

 そう言った後、ごくり、とアミーナは音を立てて唾を飲んでいる。 

「で、何すんの?」
「ふ、ふふ……! 今に見てなさい! レイジ様、おそろしくてたまらないでしょう?」
「ヤ、ヤメテクレー」
「ふふ、ふふふ……」

 アミーナは顔を上気させ、軽く汗をかきはじめた。

「アミーナ、もしかしてためらってる……?」
「そ、そんなわけないでしょうガーネット! わかってないわね、こうして焦らすことで、レイジ様の恐怖は今も膨れ上がっているのよ!」
「オ、オタスケヲー」

 アミーナは踏ん切りをつけたようで、こつこつと足音をたて、悠々と近づいてくる。
 ふふふ、と不敵な笑みを浮かべながら俺のももをよじ登り、またがるように膝立ちする。
 彼女のてのひらが、俺の肩に乗っている。彼女の体温が伝わり、ロイヤルお嬢様ないい匂いが、ほんのり香った。

「か、括目しなさい……!」

 過激派にふさわしいビックリなことをアミーナはやってのけた。一思いに、なにゆえか自分のスカートのすそを指でつまみ、そっとまくりあげたのだ。
(すげ……おまんこが)
 アミーナは、はいていなかったのだ。女の子の丸みを帯びた臀部の曲線は、無二の美しさだ。

「ど、どう……かしら」

 アミーナは一生懸命恥ずかしさを押し殺して、余裕のある顔を演じようとしている。しかし、恥ずかしくてたまらなそうに、ぴくぴくと内股の太ももは震えている。

「下着をはかないなんて……先生に見つかったら退学ものなんだから! どう? 驚いたでしょう!」
「これはびっくり仰天……」
「で、でしょ!? ふん、どうよ、女の子に、お、おまんこを、見せつけられる気分は!」
「アミーナ……むりしすぎ」
「きゃあっ、アミーナ様……あんなに破廉恥なこと!」 

 二人にいわれる本人は、何やら息が妖しげに乱れてきている。

「はぁ……は……わたしアミーナは、知っているの。殿方を喜ばせる方法を……殿方の聖剣……きゃ、や、やっぱり」

 アミーナは俺の股間にそっと指を這わせ、立ち上がっている逸物に触れるとびくっと緊張したようにその動きを止めた。

「読んだとおりだわ……ふふ、全てはわたしの計画通りね!」

 少し調子を取り戻した様子で、アミーナは至近距離で俺にびしっと指さした。鼻に指が触れる。

「わ、わたしに……その聖剣で愛情の印を、き、刻みつけなさい!」

(聖剣て……)
 読んだとおり、とか言ってたけど。まあいい、とにかく今はアミーナ様の命令に従おう。

「ひゃうっ! あ……ゆ、ゆびが!」
 
 アミーナのおまんこに指をあて、くちゅくちゅと動かす。すでに愛液が分泌されて、いい感じに出来上がっている。ふにふにと柔らかくて、ペニスを咥えこませたら気持ちよさそう。
 愛液に濡れた指をくんくんと嗅いで、女の子のいやらしい匂いを確認して言う。
 
「アミーナ……お前、俺とセックスしてみたいんだな?」
「せっくす……きっと聖なる男女交渉のことね! その通りよ! そうすれば、わたしはレイジ様に誰よりも近しい姫になれるんだわ!」

 俺は手早くペニスをズボンから取り出し、ルナが悲鳴をあげ、アミーナがひゃぁっとらしくない可愛い声をあげるのも無視し、一気にアミーナのおまんこに突き立てる。

「あぐうぅ!? く、くぅ……!」

 俺の肩をつかむ指に、ぎゅっと力が入る。不敵な笑みを浮かべていた顔は、未知の痛みや女の子らしい恐怖心によって、俺の表情を窺う女の顔になっている。

「う、うそ……もうはいっちゃったの……?」
「これでアミーナは、俺専用の女の子だな」
「せんよう……見なさいルナ、ガーネット! これは過激派の勝利よ――んひゃっ」

 俺は彼女の小さめの胸に手を当て、「オールリカバリー」と唱える。
 この呪文は魔力の消費は多いが、一般的で簡単な魔法らしい。アミーナの膣が回復する。

「あれ……レイジ様、今何を――」

 言わせる前に、対面座位の格好で、一気に腰を突き上げる。
 ぐりゅりゅ……とペニスがアミーナのとろとろおまんこを掻き分ける。そのままの勢いで、アミーナの中を行ったり来たりする。

「んん――! あん、あ――いやぁ、なにこれ、ふあぁ……なか、擦られて!」
「なかで俺のが動いてるの、感じるだろ?」
「す、すごい……! 読んだとおりだわっ! 「主様の聖剣が突き上げるたび、わたくしの身体の中で甘やかな感覚が――」んひゃっ!」 
「あの絶対に弱みを見せないアミーナ様が……レイジ様に……」
「あんなの、アミーナじゃないみたい……」

 抱き合って腰を振る俺たちを見て呆然としているギャラリーに、俺は手招く。

「君らも、一緒にする?」

***

 俺はアミーナを床に寝かせ、征服感を感じさせる正常位で、ラストスパートをかけた。

「んひゃっイクっ……! あの本の中の女の子みたいに――んんん!」

 アミーナの足が俺の腰に力強く絡まり、びくびくと全身がふるえわななく。眉をよせ切なげで、しかし快感に悦を感じた複雑な表情でアミーナは俺を見ている。
 抜こうとすると、アミーナはうわ言のように呟く。

「これで、レイジ様はわたしのものね……ふふふっ……」
「次はガーネットとするか。アミーナ、足が」
「えっ……そんな、まだ駄目よ! ファンクラブ(過激派)会長の名において命令するわ! んひゃっ」

 思い切り子宮口をついてやると足が緩んだ。その隙をついて、隣で開脚したガーネットに挿入する。彼女は俺とアミーナの行為を見て自慰をしていたので、おまんこはぬれぬれだった。どうやらムッツリすけべらしい。

「あんっ……レイジ様……はぁ、んっ……」

 控えめな喘ぎ声をあげ、ガーネットが身を強張らせる。無頓着な服装で、無感情な声しか出さなかったガーネットが、やたらエロイ発情した声を出している。

「れ、レイジ様……いた……い」
「リカバリー……治ったか?」
「うん……ん、あっ……」

 ぱちゅぱちゅと撹拌してやると、ガーネットはメス顔でいやいやと首を振る。
(思ったより可愛い子じゃん……)
 膣の上部分、豆粒くらいの大きさの突起を指でふにふにしてやると、ガーネットはしょっちゅうクリでオナニーしているらしく、敏感に反応した。

「あはぁっ……ん……だ、だめ……」
「出すぞ、ガーネット!」
「ん、んあぁ……んくぅ!」

 ぱっつんの黒髪を揺らして、彼女は穏やかに果てた。
 俺は自分のペニスを回復して、次はルナの前に移動。
 
「あの……わ、わたわたしにも……?」
「ルナ……行くよ」
「ん……んんんん! うそっ! レイジ様と繋がっちゃった! くうっ!」
「大丈夫……ルナ」

 痛みに瞳をぎゅっとつぶり耐えるルナの手を、ガーネットがきゅっと握る。

「だい、じょうぶ……んん! ほんとうに、こんなに痛いんだ……あの本は、全部本当なんだね」
「リカバリー……さ、ルナも気持ちよくなろうか」

 さっそくがしがしと腰を打ち付けると、ルナの表情がとろける。

「ああん! 中で熱い鋼鉄が、暴れてます! もっと穿って……! 力強くぅ!」
「あれ……思ったよりルナってエロイね」
「ルナは……普通な顔して、変態だから」
「腹筋も触らせてください! ああっ……八割れ! すごい興奮するぅ!」

 ルナはさわさわと俺の腹にタッチして、頬を真っ赤に染めている。ときめいたのか、膣がきゅんと締まった。

「レイジ様、手も繋いでください!」
「ルナ、わたしと代わりなさい! 会長を差し置いてあなたは――」
「アミーナ、こっちにおいで」
「わ、わたしに命令するなんて……!」

 なんだかんだ言ったり睨んだりしながら従うアミーナを傍にはべらせ、そのおまんこを指でかきまわす。

「んひゃぁっ!! ……んあ、かきまわしたらぁっ!」
「またイクのか? アミーナはセックス中は素直で可愛いな」
「わ、わたしは! こんないいなりになるためにやってるんじゃ……んひゃ!」
「あっ! レイジ様、イきます、イくぅ……!」

 ルナはセックスでの初アクメを迎え、声も出せずにびくびく痙攣するが、4Pはまだまだ終わらない。
(やっぱりこんな風に女の子を食いまくれるなんて、最高だな……)

***

 何度もイかせると、回復ベッドを使っていないので、姫たちはへとへとになってしまった。
 俺は一度萎えたら、姫たちの魔力を使って「リカバリー」と唱え、ペニスを回復させる。そうして何回でも勃たせることができた。
 床で女の子の甘い匂いを漂わせながら、寝転がる三人に訊いてみた。

「なんだか三人とも、セックスが何か、知ってるみたいだったけど」

 アミーナはふん、と体勢を整え、再び自信を持った表情になる。さっきまで情けない声で喘いだことなど忘れたようだ。
(ブレないな……)

「ふふふ……聞きたいの? 特別に教えてあげるわ! 施錠された禁書の棚に陳列された淫書……それをわたしたちは苦難を重ねた末に手に入れたのよ!」
「鍵かかってんのになんで持ってんだよ」
「夜の一人遊びに使うから……」
「ガーネット……お姫様はそんなことしちゃいけません。鍵はどうやって開けた?」
「それはある生徒から……ね、アミーナ様?」
「そうよ、ルナの言う通り。これはわたしたちだけの秘密なの……ふふふっ!」

 まあいいか、誰でも。と思っていると。
 ガーネットが、懐から薄い書物を三冊取り出した。一人一冊ってところか。

「読む……?」
「常備してんのかよ……どれどれ」

 ぺらぺらとページをめくり、目を走らせてみる。

 ……皇帝様の熱い聖剣が、乙女であるわたしの秘所へと突き刺さる。同時にわたしは貫かれる悦びに……
 ……わたくしは愛情をこめて、皇帝閣下の白熱する鋼鉄の槍に舌を這わせ……
 ……ご主人様は筋骨隆々としており、わたしは勇ましく八つ割れた腹筋に指をのせ……

 なにやら華やかな文章で修辞されてはいるが、実質は獣のようなセックスがひたすら描かれている。

「こりゃお姫様には刺激が強いだろ……」

 書物のタイトルを見ると、どれも「日記」。この学園の過去のお姫様たちが書いたみたいだな……

「他の姫たちに渡るとよろしくないな……没収かな」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! どれだけわたしたちが苦労してそれを手に入れたか……」
「エッチな気分になったら、俺の部屋にきなよ。な、ガーネット?」
「うん……」

 黒髪ぱっつんのガーネットは頬を染めた。アミーナも赤くなりながら、俺に淫書を手渡してしまったガーネットを叱りつけている。
(面白い子たちだったな……)
 帰ろうと思って天井の穴の跡を見上げ、俺は気が付いた。

「まさかお前等、アリスにちょっかい出してあの部屋の前に俺をおびき寄せたわけじゃないよな!?」
「それは違うわ! ガーネットのスキルは「索敵」。一度見た相手の位置情報を感じ取ることが出来るのよ。言ってしまえば絶対にばれないストーカーってとこかしら。それを使ってあなたの場所を正確に把握し、落としたわけ。ふふっ完璧でしょ」
「おいおい……スキルまでヘンタイかよ」

 アリスの一件は彼女たちとは関係ないらしい。
 俺はやれやれと首を振り、部屋の出口へ向かう。
 
「出ていくの!? だめよ、まだわたしたちと一緒にいなさい! 絶対に逃がさないわ!」
「ごめんなアミーナ、俺クリスティーユさんに会いたいんだ」
「あ――んっ」

 俺はアミーナの胸に手を当て、念を込めた。指が青白い光に溶けていき、手を引き抜くと、そこに青白いものが掴まれていた。

「……」

 アミーナは床にぱたりと倒れた。そっと霊を戻すと、彼女はびくっと動くが、起き上がる気配はなかった。一度霊を取り出すと、動けるようになるまで一定時間かかるのはリナの例で学習済み。

「じゃあね、また今度」
「ん――!」

 次にガーネットの魔力を胸から奪って「解体《デコンポーズ》!」とその部屋の木製の扉を崩壊させた。
 すると――

「レイジ様、ここにいたのね! ウィルベルたちと探してたんだから……なっ!」

 リナが部屋の中で半裸のアミーナたちを見つけ、ジトっとした目で俺を見る。

「こ、この子たちともしたのね……」
「したけど……ほら、姫たちに種付けるの、俺の仕事だし」
「そうかもしれないけど……」

 リナはなんだか納得いかなそうに俺を見ている。

「じゃ、リナも一緒に女騎士さんに会いに行こうか」
「女騎士? だれのこと?」
(つづく)






<妹姫7話>双子エルフの保健室




「これはあくまでも、男性機能の検査ですからね? レイジ様?」
「わたしたちのおっぱいで、お射精してくださぁい……うふふ」

 突然だけど、俺は今、ナース姿の双子エルフに看護という名のおっぱい検診を受けていた。
 ふたりのあわせて四つの豊乳が、俺のペニスを全方向から刺激しているのだ。
 柔らかすぎて、どこで胸と触れ合っているのか、境界がわからなくなるほどだ。

「すげえ……くっ」
「わたしたちほど巨乳のお姉さんって、お姫様方の中にはあまりいないでしょうからぁ」
「年上も素敵だってことも、今日は覚えて帰ってくださいね」

 クスクスと笑いながら、二人は半脱ぎ状態のナース服からこぼれた大きな乳房を手のひらで寄せ、むにゅむにゅとペニスに擦り付ける。
 二人は銀髪セミロングだったが、頭の横におしゃれな編み込みを作っていた。右を編み込んでいるのがレイシアで、左を編み込んでいるのがアイシア。
 レイシア、と呼ばれたほうのエルフがうっとりと頬を染めて言う。

「それにしてもすっごーい……レイジ様のおちんぽ、ぱんぱんに膨れ上がってますよぉ」
「興奮していただけてるんですねぇ、うふふ」

 彼女たちは舌をべろんと大きく出して、とろみのある唾液をペニスや自分の巨乳にまぶしていく。
(上手だな……気持ちよくてたまんねえぜ)

「二人は、どこでこんなことを……?」

 そう訊くと、双子の二人はぴったり同時ににっこりする。

「ご存じないですかぁ? わたしたちは帝都近くの箱入り娘とは違うんですぅ。ハーフエルフの弱小国は、ひっそりと森の奥深くにあるので」
「情報統制が少し甘めなんですぅ。色々知ってますよぉ」
「男の人がどうされたら気持ちよくなっちゃうかとかぁ」
「女の子が男の人にどんな風に犯されちゃうかとかぁ」

 息ピッタリで二人は言って、うふふと笑いあう。
 発言から面白いことが読み取れた。二人ともハーフエルフだったのか。純血のエルフは他にいるようだ。

「二人とも経験済みなのか」
「ええ? 違う違う、そういうことじゃないってば」
「わたしたち根が真面目だからぁ、勉強熱心だっただけだよね? 回復魔術に関しても、えっちなことに関しても」
「意外だな。てっきり二人とも単なるビッチかと」

 そう言うと、二人は顔を見合わせて笑う。

「ひどぉい。身体は大切にレイジ様に捧げるために守ってきたのに。一応私たち王族だし、下級身分の村男に身体を渡すなんて嫌だわ」
「皇帝殿に犯してもらえるしきたりならぁ、願ったりかなったりだよねぇ」
「あとあとぉ、純血のヒューマンおちんぽのほうが気持ちいいっていうし」
「うんうん。なによりレイジ様みたいなイケメンとエッチしたいし」

 これがイケメンの特権か……。

「そろそろピクピクしてきましたよぉ」
「ここからぁ、赤ちゃん汁がどぴゅどぴゅって出るって読んだけど……本当なんですかぁ?」
「見てなよ……そろそろイキそうだ」
「了解でーす」

 俺の言葉を聞くと、二人のエルフはますます乳を寄せ、刺激を強めてくれる。
 二人とも楽しそうにマシュマロみたいな胸でペニスをしごく。もう限界だった。

「ぐあ……出る!」
「「きゃあっ!」」

 ペニスの脈動が終わるころ、二人を見ると……白濁液が顔や胸や服に飛び散っていた。ねっとりと、糸を引いている。

「やだぁ、たっぷりかかっちゃいましたよぉ……ナース服がどろどろですぅ。先生にぶっかけるなんて、いけない生徒ですね……」
「精液臭くなっちゃったじゃないですかぁ……こうなったら、責任取ってもらわないといけませんね?」

 二人は、精液を浴びながらも一層興奮した様子で俺を見つめている。
 いつも通り回復ベッドがぼおっと薄く光り、へたりかけていたペニスを再び勃起させる。
(次は本番かな!)
 そもそもどうして、こんな嬉しい事態になったんだっけ……

***

 目を開くと白い天井が見えた。
 俺は清潔なベッドの上に寝転がっていた。カーテンがその周りを取り囲んでいて、周囲から隔絶された空間になっている。どうやら、ここは病室、いや保健室のベッドといったところか。
 静けさが辺りを支配しているあたり、今は深夜だろうか。
(いてて……)
 右腕を動かそうとすると、まだ少し痛みが走る。
 顔をしかめて呻くと、カーテンの一部がするり、と開いた。二人の女性が、向こう側から出てくる。

「目、覚めました? レイジ様」
「御身体の具合はいかが?」

 俺の腕を再生してくれた二人の女性が、揃って俺の顔を上から覗き込んでいた。声が全く同じだ。

「ああ、ちょっと痛いけど平気だよ」
「まあそうじゃないと困りますよねぇ」
「わたしたちが心を込めて回復魔法かけたんですものぉ」
「そういえばそうだったな、ありがとう」
「いえいえ」
「お仕事ですから」

 俺が黙ると、二人は何やら俺を見てこそこそ囁きあい始めた。

「えーと、何か俺の顔についてるのか?」
「いえいえ、なんでもないですってぇ」
「ゆっくりお休みしてくださいね」

 二人はカーテンの向こうへ戻っていった。しかしまだ相談する声がかすかに聞こえる。
 全神経を傾け耳をそばだててみる。

「最初にやっちゃおうって言ったのはレイシアでしょ?」
「でもぉ、お誘いするなんて恥ずかしいしぃ……わたしよりアイシアのほうがエッチじゃん、わたし知ってるんだからぁ」
「そんなことないってばぁ、オナニーだって二人一緒に、同じ回数しかしたことないでしょう?」
「それは、アイシアがしてるとわたしもしたくなっちゃうからでしょ……わたしたち、そういうスキル持ちなんだから」

 どう考えてもエロイ話をしてる。なんとなく自分がこれから何をされるか予想できた。どうしようかと思っていると。

「もう、わかったよぉ、レイシア。わたしが行く」

 アイシアと呼ばれたエルフがカーテンを開き、ベッドの脇でしゃがみこむ。
 俺と同じ目の高さで、頬を染めて囁く。

「あのぉ、レイジ様?」
「どうした……何か俺としたいことでも?」
「はい、その通りですぅ……特別検診、させていただきますね」
「特別?」
「そのぉ、帝として一番大事な能力……生殖能力を、お測り申し上げたく存じます」
「まじで? いきなり?」
「よろしいですかぁ?」
「……仕方がないな」
「はい。では、おズボン下ろしますね……うふふっ。レイシア、お許しいただいたよぉ」
「はーい……レイジ様、二人で検診させていただきますね」

 そうして、俺はあれよあれよと言う間に服を脱がされてしまったのだった。

***

「素股って言葉、レイジ様はご存知ですかぁ?」

 カーテンで仕切られた密室の中。
 ナース服のスカートを脱ぎ去り、黒いパンストに包まれた下半身をさらけ出したレイシアが、俺の上に馬乗りしている。ストッキングに染みついた女の匂いがほんのり香る。
 この状況だけで、ペニスはガチガチに固くなってきている。
(エルフおまんこ、超楽しみだぜ)

「次は素股してくれんの?」
「はい、責任とってもらわないといけませんから、ね? レイジ様も、たくさんエッチなこと、したくないですかぁ?」

 レイシアは、パンストにくるまれた温かい太ももで、膨れ上がったペニスを挟み込み、きゅっ、きゅっとしごき始める。
 すっかりズル剥けになったペニスの皮が、ずるずると動きに合わせて剥けたり被さったりする。

「レイシアの太もも、いかがですかぁ?」
「むちむちだし、パンストがすべすべ……ペニスについた唾液のおかげでヌルヌル滑るし」
「ではでは、もう少し深くまで挟みますね」

 レイシアは股間にペニスを挟んで、パンスト越しにおまんこをなすりつけ始めた。
 円を描くいやらしい腰振りで、見ているだけで勃起の力が増す。

「レイシア、上手だぞ……もっとやれ」
「はぁい、レイジ様ぁ……んんっ」

 レイシアも、性器にあたる男のモノで感じているようだった。
 そこで異変が起こる。脇で見ていた同じくパンスト姿のアイシアが、股に手のひらを挟んで、なぜか悶えはじめる。

「ああ、ダメですぅ! レイシアが気持ちいの、伝わってくるよぉ」
「アイシアったら、一人でそんな声出さないっ……あぁん」
「でもぉ……びんびん伝わってくるんだもん……」

 アイシアとレイシアのエルフ耳が、交信するようにぴくぴく動いている。
 保健室は二人の喘ぎ声で満たされ、なんともエロイ雰囲気。

「アイシア、お前どうしたんだ?」
「あの、わたしたち……二人でペアの、|共感《シンパシー》のスキル持ちなんですぅ……だから、レイシアが気持ちいいと、わたしも……ふあぁっ」

(双子らしいスキルだな)

 俺は二人を困らせてやろうと、自分からレイシアのパンスト越しの素股にペニスを出し入れする。

「だ、だめですよぉ……わたしがレイジ様を治療しているのにぃ!」
「ひゃあッ! 伝わってくる快感、一気に強くなっちゃいましたぁ!」

 リズムよく腰振りしていると、ビクっ、とレイシアが震える。パンスト越しに、とろみのある愛液が溢れ出すのが感じられた。

「いやぁっ! ……はあ、はあ……レイジ様より先にイってしまいましたぁ!」
「ああぁ! アイシアもイきますぅ! イクぅ!」

 遅れてアイシアもびくんと達してしまった。何も触ってないのに。
(面白いな……どっちかをイかせればもう片方もイっちゃうのか)
 これから二人に何をしてやろうかと企んでいると、レイシアが待ちきれなさそうに言った。

「はぁ、はぁ……ではでは、そろそろわたしたちの処女、ご賞味になりますかぁ?」
「きっとこれまでで一番、気持ちいいですよぉ……?」

***

「いやぁん、レイジ様ったらエッチな生徒さんですぅ」
「ヘンタイさんなんですね、わたしたちを並べて犯そうだなんてぇ」

 ベッドの上には、二人のエルフが並んでよつんばいになっていた。
 黒の光沢のあるパンストにくるまれた丸いお尻を俺に向かって突き出している。お尻から太もも、足指までぴっちりと覆うパンストは半分透けているが、下着が透けて見えていない。

「二人とももしかして、ぱんつ履いてない?」
「ばれちゃいましたぁ?」
「このストッキングは、下着の役目も果たしてるんですよぉ? 直ばきって言うんですぅ」
「じゃあ一気に脱がすよ」
「あんっ……」

 二人のパンストに指をかけ、同時にずりさげる。真っ白なお尻が黒い生地に包まれた太ももといい感じのコントラストだ。

「おまんこ、すうすうしますぅ……」
「ったく、お前らもうとろとろじゃねえか」

 愛液を垂らすふたつのおまんこが、挿入を待ちかねてヒクヒクしている。いやらしい女の匂いが、カーテンに区切られた部屋の中に充満していた。

「先に突っ込まれたいのはどっちだ?」
「もちろん、レイシアにいれてくださぁい」
「ダメですぅ、アイシアにくださいよぉ。いくら「共感」するからって、生おちんぽのほうがいいに決まってるじゃですかぁ」

 二人して、ねだるようにペニスにお尻を押し付けてくる。漏らした先走りが、白い尻肉を汚していく。
(もう我慢できねえ……)

「じゃあ、さっき素股してくれたレイシアで。よっと」
「ああぁん! はいってきますぅ――くぅ、いたぁ……」

 ぬるぬるなエルフおまんこのヒダ肉を、みちみちと拓いていく。
 レイシアが身をのけぞらせて痛みに耐えると同時に、アイシアもエルフ耳をぴくぴくさせ、痛覚を「共感」する。二人そろって辛そうな表情になり、背筋を強張らせた。

「うそっ……こんなに痛くなってるの、レイシア!?」
「レイジ様に気持ちよく種付けしていただくんです……くうう、耐えましょう、アイシア」
「頑張れ、二人とも。じゃ、アイシアも処女喪失しちゃおっか」
「えぇ? ……いやぁ、んんんん!」

 レイシアから引き抜いたペニスを、アイシアに一気にぶち込む。めりめりと柔肉が裂けていく。再び、共感した二人を痛覚が襲う。

「いったあぁ……二回も痛みを味わわなければならないなんてぇ」
「もう痛いのイヤですよぉ……」

 二人とも口調は変わらないが、目尻に涙が浮かんでいる。やっぱり未開通のおまんこを無理やり開拓されるのは、なかなかの苦痛を伴うらしい。

「大丈夫だよ、二人とも。このベッドも、回復ベッドだろ?」
「えぇ? このベッドっておまんこも回復してくれるんですかぁ? あ……」

 二人を青白い光が下から照らしだす。光が消えたころ、二人は驚きの声を上げる。

「すごぉい……万能ですぅ。もう全然痛くないですよぉ」
「またおまんこがうずうずしてますぅ……レイジ様、はやくわたしたちに女の快楽を、教えていただけませんかぁ?」

 すっかりエロイ発情顔で、二人が俺を振り返る。
(しょうがないエロエルフたちだな……こんな淫乱が保健室の先生なんて驚きだぜ)
 俺は、アイシアのみちみち締まる愛液まみれおまんこを、ずちゅずちゅ撹拌しはじめる。
 途端、気持ちよすぎて俺は思わずため息をついてしまう。
(エルフおまんこ、キツキツで超気持ちいいじゃん)
 アリスやリナより狭い感じで、奥ゆきも狭い。簡単に、子宮口をノックできてしまう。

「あぁん! すごいですぅ! レイジ様のヒューマンおちんぽ、太くておっきいぃ! こつんって奥に当たってますぅ!」 
「やだぁ、アイシアがみっともないくらいおちんぽで感じてるの、伝わってきますぅ……!」

 二人は同時に甘ったるく喘ぎ始め、カーテンの中はラブラブな雰囲気に包まれる。アリスとリナの時も思ったが、3Pって賑やかで楽しいな。
 女の子は、温かくて柔らかくて気持ちいい。一人でもウィルベルの言う通りなのに、二人も相手にしたら、こっちまで女の子の甘さにとろけてしまう。

「そろそろレイシアのおまんこに交代だ!」

 ぬるり、と愛液を掻きだしながら、アイシアからペニスを引き抜く。
 レイシアの性器からは、独りでに透明な愛液がトロトロと溢れ出していた。

「はぁい、お願いしますぅ……触られてないのに感じまくってるレイシアにおちんぽ下さぁい――やあぁん、きたぁ、おちんぽ来ましたぁ!」

 一気にペニスを打ち込むと、さっきまで挿入していたアイシアのおまんこから愛液がぴゅるっと飛び出した。潮吹きというやつだ。ゾクゾクと何度もお尻を震わせて、アイシアはぴるっ、ぴるっと最後までフェロモン汁を出しきってしまう。

「……んあ、はあぁ……! 嘘ぉ、アイシア、なにもされてないのに潮吹きしちゃいましたぁ!」
「まだ休憩は出来ないからね。レイシア、動かすぞ!」

 ぱちゅんぱちゅんと腰を振ると、二人はエルフ耳で「共感」しながら、淫らに腰を揺らめかせ夢中になって喘ぎまくる。

「んほぉぉ! ダメですぅ、また潮吹いちゃいますよぉ!」
「生おちんぽ、熱くて固いですぅ……! ゴリゴリ奥まで届いてますってばぁ!」
「まだまだこれからだよ。二人同時に攻められたら、どうなっちゃうかな?」
「そんなぁ! らめですらめぇぇ……!」

 アイシアの狭いおまんこに指を三本打ち込むと、二人は狂ったように喘ぎだす。エルフ耳がぴくんぴくんと壊れたように震え、二人の唇から涎が垂れる。こっちを振り返る表情はすでに、子作りに夢中な発情期のメスそのものだ。

「きゃあぁっ! 気持ちいいのが、増幅してますよぉ! さっきの二倍ぃ!」
「いやぁぁ! 指でかきまわされて気持ちいいのに、アイシアのおちんぽ感覚まで来ておかしくなるぅ!」

 共感、すげえな……俺もそのスキルで女の子と快感をシンパシーしてみたい。
 そんなことを考えるのでさえ精一杯なくらい、俺は追いつめられていた。エルフ膣の締め付けはどんどん強くなり、精液を搾り取ろうと必死だ。

「出すぞ!」
「はあい!  あん、レイジ様のオス汁、たっぷりレイシアに出してぇっ!」
「レイジ様ぁ、種付けお願いしますぅ! アイシアにもお射精共感させてくださぁい!」

 しゃぶりあげてくるエルフおまんこの最奥までペニスを突っ込み、俺は果てた。

「ぐっ出る!」
「きゃああああっ……! 熱い赤ちゃん汁がいっぱい入ってきますぅ!」
「すごぉい! 子宮の中までっ!」

 二人は感動した様子ではあ、はあ、と甘々な息を吐いている。
 極楽の感覚に酔いしれるとともに、辺りに青白い光が満ちてくる。どんどんペニスが回復していく……
(次は、アイシアに中だしかな)

***

 何度もたっぷり中だしをお見舞いされた二人は、未だ軽く喘ぎながら俺の左右に寝そべっていた。秘所からは、とろとろと白濁液が溢れ出している。
 俺は余韻に浸りながら、なんとなく気になったことを訊いてみる。

「なあ、アイシア、レイシア。黒龍が現れた時、これまではどうやって対処してきたんだ」
「ええ? そんなの、知りませんよぉ……だって、龍の城への襲撃があったのって、数百年ぶりらしいですよぉ」
「そうそう。わたしたち、まさかこんな大変なタイミングで赴任しちゃうなんて、思いもしなかったよねぇ?」

 俺を挟んで、二人のエルフはうんうん、と頷きあう。
(マジかよ転生のタイミング最悪じゃねえか)
 まあ女の子をいくらでも犯していい最高の境遇に転生出来ただけでも嬉しいのだが。

「何か、龍を退治する代々伝わる方法、みたいなのって無いのか」

(君は、近いうちに殺される)
 転生前に言われた言葉が気になって仕方なかった。出来るだけ、死につながる要素は取り除いておきたい。もっと姫達といちゃいちゃしたいもの。
 レイシアとアイシアは同時に答えた。

「「やっぱり、封龍剣でしょ」」
「封龍剣?」
「そう。ドラゴン退治と言えば伝説の封龍剣だよね」
「必要な素材は、「黒龍の甲殻」「水竜の背びれ」「火竜の尻尾」とかだった気がするけどぉ……」
「集めるの超大変だよねぇ。大体黒龍を倒すのに黒龍の素材が必要って、ちょっと矛盾してない?」
「それわたしも思った。水竜は隣の湖の中にいるらしいけど、火竜は生息地が遠いから、遠征しないと討伐できない魔物でしょう?」

 そうか、封龍剣とは作るのが大変な、いわゆるレア装備というやつか。

「龍属性武器なのか?」
「そうだよぉ。他にも龍属性武器はあるけど、あれが一番属性値が高いし、なにより超カッコイイよねぇ」
「冒険者の憧れの装備なんですよぉ。普通の冒険者が手に入れるのはほとんど無理ですけどぉ、レイジ様なら、なんとかなるんじゃないですかぁ」

 火竜とか言ってたけど、遠征って何だろう。訊いてみた。

「ええ? 遠征っていうのは6人一組で城を離れキャンプをしながら、生息地が離れた魔物を狩りに行くことですよぉ。それも覚えてないんですかぁ? 記憶喪失?」
「そうそう、そう言えばわたしさっき魔力の検査したけど、レイジ様には何も魔法がかかってなかったよぉ」

 少し疑いを含んだ目線が向けられる。
(正体がばれたらいけない)
 俺はスミレの忠告を思い出した。

「きっとかなり高度で、簡単に検出されない魔法なんじゃないかな」
「そんな魔法あるっけ、レイシア?」
「まあ、高位の知性のあるレベルの魔物なら、できるかもしれませんねぇ……たとえば、サキュバスとか」
「やだぁ、そんな下品な魔物の名前出さないでよぉ」

(この世界にはサキュバスなんかもいるのか)
 俺はそんなことを考えながら、意識を眠りの中へと沈ませていった。

***

「レイジ様……大丈夫なのです?」
「お見舞いしに来てあげたわよ」

 翌朝、制服姿のノエルとリナが花とお菓子を持って俺のもとを訪れていた。背後に、数多くの姫達が俺を一目見るために押しかけている。

「あれ、アリスは?」
「実は部屋から出てこなくなっちゃって。無理にはいろうとしたら、すごく焦った感じでだめだめって言うの。どうしちゃったのかしら」
「焦った感じ? 落ち込んだ感じとかじゃなくて?」
「そうなのです……姫騎士として仕えるわたしに対しても、同じ扱いだったのです……しょんぼりなのです」

 ノエルでも会えないのか……ちょっと気になる。あとで部屋を見に行こう。
 そう思っていると、リナが心配そうに言った。

「で、あなたの肩はもう完治したわけ?」
「ああ、昨日の夜は痛んだけど、もう全然痛くない。今日からこの保健室を出れる」

 巻いてあった包帯を解いて、肩を見せる。傷痕すら残っていない。

「わたしたちのおかげですよね、レイジ様?」
「また保健室に来てくれたら、昨晩みたいな検診してあげてもいいですよ?」

 レイシアとアイシアがくすくす笑いながら現れる。

「あ、先生たち……レイジ様を直してくれて、ありがとうなのです」
「いえいえ」
「お仕事ですから」
「なんかほわほわしてるイメージだけど……先生たちはすごく優秀な魔女なのよ。普通だったらここまで完璧には元通りに治らないわ」
「エロいだけじゃないんだ……」
「ん、レイジ様……どういうこと?」

 リナが訝しげに俺を睨む。

「いやなんでもないけど」

 彼女のじとっとした目線は次に先生たちに向く。どうかしましたか? と双子エルフはニコニコと受け流している。

「話変わるけど、お前ら、マリっていう姫を知らないか?」
「え? 知らないも何も、第一皇女様じゃない。いずれあなたの正妻になるお方よ」
「そうなのです。マリ様はわたしたちより一つ位が高い、皇族なのです。レイジ様とマリ様の子供が、次期皇帝になるのです」
「ああ……皇族、王族ね」

 幼馴染みそっくりの顔つきを思い出して、胸が騒ぐ。あの子とも、俺は子作りを許されているらしい。

「あ、その時のことだけど、ウィルベルに訊いたら、あなた、相当ムチャやったらしいわね。今度そういうことしたら、わたしが許さないからねっ」
「心配かけたか?」
「あ、当たり前でしょ……!」

 リナが腕を組むと同時に、ノエルが唇に指をあてながら何か思いついたような素振り。

「あれれ……どうしてリナはレイジ様のことを「あなた」って呼んでいるのです?」
「う、うるさいわね。ノエルには関係ないことよ」
「ずるいのです! いつの間に仲良くなったのです!?」

 ぷんすか怒り始めたノエルを無視して、俺はリナに訊いた。

「龍の襲撃の被害の方は大丈夫なのか」
「ええ。倒壊するほどでもないわ。壊れた校舎も復旧作業が進んでる」
「あっ、そう言えば……これが落ちていたのです」

 ノエルははっと何か思い出し、自分の身体のあちこちをさぐり始める。

「古代兵器の一撃で、龍の体の部位が破壊されたらしいのです。これはレイジ様が持つべきものだから、渡しておくように、と教官が」

 ノエルが懐から取り出したのは、薄い板状の、黒い岩片のような物だった。

「これってもしかして!」
「「黒龍の甲殻」らしいわよ。わたしたちみたいな普通のステータスの人間にはレベルが高すぎる代物だわ。超レア素材なんだから、大切に使いなさいよね」

 さっそく、封龍剣作成に向けて、一つの素材が揃ってしまったではないか!

「ありがとな! これがあれば、封龍剣までの道のりは短いぞ!」
「封龍剣……まさかあなた、あの伝説の装備を作るつもりなの!?」

 目を丸くする姫達に向かって、俺はにやりと笑って見せた。

***

【ジョブ】 魔術師?
【LV】 150
【装備1】 なし
【装備2】 配給軍服
【スキル】 御影の腕
(つづく)






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