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<妹姫・1話>従順メイドと高貴な女騎士





「小説家になろう」内の「ノクターンノベルズ」様で掲載させていただいていたエロ小説です。
長いシリーズなのと、一話なので、ちょっと説明を書きます。
(あらすじ)
平凡すぎる主人公は、ある晩突然謎の少年の声を聞き、精神を異世界へと召喚された。そこは、霊(ゴースト)と龍(ドラゴン)を基本として、エルフ、マーメイドなど多様な魔物が存在するファンタジー異世界。転生先の新たな身体「レイジ」は、皇帝の長兄つまり次期皇帝で、主人公は絶対的権力者として暮らすことになる。
王家の子孫繁栄のため、100人もの姫が通う学園で、主人公はセックスという言葉すら知らない処女姫たちに、色々なプレイで男との快楽を教えていくのだった。
***
そんな桃色ライフの一方で、最強ステータスを持つ主人公には姫たちを守る必要があった。魔力バトルの末に、主人公がたどり着く真実とは……

現在(3/17)「ノクターンノベルズ」様で28部まで掲載しています。このブログから入った方はこちらのリンク(ノクターンノベルズ「妹姫が100人いる!」)から飛んでいただければ最新話まで一気に読めます。

それでは、お楽しみください。

***

 ふいに目が覚めた。
 乗り物に乗っているようで、かすかに腰かけている座席が振動している。
 車内は二人がちょうど座れるくらいの広さしかない。
 朝の爽やかな光が窓から差し込んでいて、すぐ隣に腰かけた一人のの子を柔らかく照らし出していた。

(誰だ、この子)

 一言で形容すれば、まじめそうなメイドさん。
 メイド喫茶にいそうな、十七くらいの娘だ。黒髪はミディアムで、おとなしそうな顔つき。黒と白を基調にした清楚なメイド服が似合っている。

「あの……終わりましたでしょうか?」

 可愛い声だけど、大人っぽい落ち着いた喋り方をしていた。
 彼女は照れたように頬を赤らめ、顔を背けている。
 なぜかと言えば。

「な、なななっ?」

 彼女はメイド服の前ボタンを外し、肩をはだけさせ、上乳の谷間を俺の目の前にさらしていた。なかなかの巨乳。ミルキーな白色で、ぷるぷると柔らかそう。
 俺は、その谷間に手を置いていたのだ。慌てて離した。
 触れていた部分は、どうしてか青白く光り輝いていた。
 しだいに光は薄れていき、ついには跡形もなく消え去る。

「ご主人様……? 一体、なんの霊魔法をお使いに……?」
「あ? ご主人さま? 君の?」
「ええ、その通りですけれど」
「なんだと……」

 どういう状況だ。
 とりあえず窓の外を確認してみると、豪奢な飾りつけの馬車が隣をガタガタと並走していた。後ろにも、前にも同じデザインの馬車が走っている。
 馬車の向こう側、砂利が敷かれた道路の外には畑がどこまでも続いている。今の日本にこんな風景が残っているとは。
 自分が乗っている車を引いているのは、馬だった。
 と思ったら、その馬は白く、頭に一本角が生えている。
 もしかしてユニコーン?
 ますます困惑してメイドさんに目を戻すと、一言言われた。

「もしかして、その、ご主人様は、わたしの胸を触りたかっただけなのでしょうか」
「いやいや、何言ってんの!? 俺、気付いたら、君の胸の上に手が乗っていて」
「とぼけないでください……わたしに、霊魔術を使わせてくれと頼みこんだのはご主人様で」
「魔術? 意味わかんないけど……まず、君、名前は?」
「え……ウィルベルのことを、お忘れですか?」
「そうかウィルベルか。ウィルベルさんは、怒ってないの?」
「何をですか」
「胸を触られたことだよ」
「あれは、わたしの霊魔力を吸いだすためでしょう?」

 そういう設定のプレイなのかと思ったが、ウィルベルは至って真面目な表情できょとんとしている。
 
「尋常でない量の霊魔力を、吸い取られた気がします。すこしくらくらするくらいです。何にお使いで?」
「知らん……わけわかんねえ」
「まさか、忘却魔法を自分に使用したのですか? ご主人様程の霊魔術師なら、できるはず……」
 
 ウィルベルは、うーんと考え込む。
 何を話しかければいいかわからない。とりあえず情報を得ようと、馬車の中を見回す。
 足元に荷物があった。その口を開け、中から物を取り出してみる。
 様々な器具があり、どれも古めかしく中世の趣を帯びている。その中で、俺は一つの砂時計に目を止めた。
 さらさらと、青白い砂が流れている――上向きに。重力に逆らって。
 下部分には、あまり砂が残っていない。
 ウィルベルが、再び切り出した。

「先程のことですが、もし、ご主人様がわたしの体に興味を持ってくださったなら……わたしは、あの、光栄です」
「いやいや、だからそういうわけじゃないって」
「そのことなのですが、実はご主人様は、これからイディアル学園に編入するにあたって――」
「どこだそれ」

 話しの途中で言葉を挟むと、訝しげな表情をされた。

「ご主人様……あの、いい加減とぼけないでください」
「別にとぼけてないんだけどな」
「……それなら、窓から前方遠くをご覧になってみてはどうでしょう。そろそろ見えてくるはずです」

 見てみると、青く澄んでどこまでも続いていそうな空をバックに、巨大な白く輝く石造の建造物があった。朝日に照らされ美しい。
 西洋の城のように見えた。一つの一際大きな尖塔の左右に、一回り小さい尖塔が一本ずつ立っている。
 イディアル学園と言ったか。着いてから色々調べてみよう。

「あそこに行くのはいいけど、それが?」
「それにあたって、準備が必要なのです。カーテンを閉めていただけますか?」
「いいけど。……はい、閉めたよ」

 車内は日の光を遮られ、薄暗くなる。

「で、準備って?」
「粗相を、お許しください……ご主人さま」
「なっ!?」
 
 俺は、上質そうな布地のズボンを履いているのだが。
 そのジッパーが、ウィルベルの手でゆっくりと開かれる。

「失礼します……」

 するりと、そのまま指が入ってきた。
 ふにゃふにゃのペニスが、細い指先に刺激され忽ちカチカチに屹立。ウィルベルの目前に取り出される。
 頬を染めた彼女は長い睫毛の目を伏せ、かしづくようにペニスに大真面目な表情で顔を寄せる。

「ご主人様を女に慣れさせておけ、とご主人様のお父様から命令されています」
「はあ!?」
「ご主人様は、ご存知でしょうか……女の子は、柔らかくて、温かくて、その、とっても気持ちいいんですよ?」

 ウィルベルは、俺の顔を見上げてそんなことを言って、すぐに恥ずかしそうに目をそらしている。
 その表情が可愛くて、さらにペニスの張りが増す。
 と、そこで俺はようやく気付いた。
 彼女の手の中の息子は、大きく張っているのに、皮の中身が全く見えていない。包茎だった。
(なんでだ? 俺、ズル剥けだったはず……)

「あの……ひとまず皮を、剥かせていただきますね」
「え、ちょっと……うおお!?」

 ずるり、とカリを覆っていた皮が砲身から剥かれる。
 何とも言えない不安感と快感が混ざって、ぴくぴくと先端が震え、我慢汁が出てくる。

「では、先っぽを、失礼します……んっ」
 
 信じられないことにピンク色の亀頭を口に含んだ。
 先走りを、舌で舐め取る。
 清楚そうな顔をして、大胆だ。ためらいなく口奉仕するなんて。ここまでのやり取りで、しっかりものだと思っていたのに、どうなっているんだ?
 ムけたばかりの敏感な亀頭の先をチロチロと舐められ、痺れるような快感が走る。

「うあ……それすごい」
「ごひゅじんさまの筆下ろし、やらせていただけて光栄です……ちゅる」

 亀頭をつやつやした唇の中に咥え、顔を上下させて浅く口内粘膜で擦る。
 温かく、濡れた感触。歯の当たる感触もない。
(こんな快感初めてだぜ……オナニーとは格が違う)
 気持ちいいのはいいけど、そもそもの理由がよくわからない。

「うっ……学園に行くことと、女に慣れることに関係が?」
「ん……ちゅ、ちゅぱ……んはぁ」

 一旦唇を離すウィルベル。生温かい息がかかる。唾液が舌先からねろりと垂れる。

「今日からご主人様のお仕事は、学園に各地方から集まった王族の姫たちと、その……子作りをすることなのです」
「えええ!? すげえ嬉しいけどなにゆえ?」
「やはり忘却魔法でしょうか……皇族であるご主人様には、王族を繁栄させる義務があるではないですか」

 皇族? 王族? 義務? まあいいか、そのうちわかるだろう。

「……微妙によくわからんけど、なにそれ最高じゃん!」
「スムーズに新しい生活に移れるよう、ウィルベルは童貞のご主人様に、ご奉仕しているのです……ん」

 彼女は再びペニスに舌を這わす。敏感すぎるカリの裏側や、皮の内側を何度も何度も攻めてくる。べろりと大きく舌を出した顔は淫らで、もとの清楚さとのギャップが凄い。

「れろえろ……ちゅっ、ちゅぱ……いかがれすか?」

 まったりと、唾液をまぶしながら竿に舌を絡ませる。
 動きに合わせ短めの髪がさらさら揺れる。まじめそうな顔のくせに、その目元は熱に浮かされたようで、なんともエロい。

「そろそろ、でしょうか……では、とっておきを、お楽しみくらひゃい……じゅる」
「うおぉっ!」

 彼女は、さらにペニスを深く口の中へ導く。
 根元まで咥えこみ、くすぶったような金色の陰毛に口元を埋める。
(あれ? なんで俺の毛、金色なんだ?)
 感度も中学生のころのように驚くほど敏感で、自分のペニスじゃないみたいだ。
 その童貞ペニスは突然のフェラで、歓喜に震えていた。
 女の子は、柔らかくて、温かくて、とっても気持ちいい。ウィルベルの言葉通りだった。
 
「んく……んくっじゅぶるっ」

 音を立てて、ウィルベルは唇をすぼめて顔を上下させる。カリが喉奥の狭いところに引っかかって、きゅっきゅっと擦られる。俺は声も出ないほどの快感を得ていた。
 喉奥を刺激され涙目になったウィルベルを、褒めてあげる。

「ウィルベルさん……気持ちよすぎ。それに可愛いよ」

 目尻に溜まった涙を指で掬ってあげた。

「んじゅる……そんな、勿体ないお言葉れふ」

 少し照れた顔をされた。
 はやくも奥からこみ上げてきたものがある。
 行き場をなくして、狂おしいほど出口を探している。

「そろそろ出そうだ……! 出して、大丈夫っ?」
「お口の中で、好きなだけだしてくらしゃい……我慢なんて、しなくていいんれす……んじゅぶ」
「う……いいのか? 本当にだすぞ!?」
「いつでも、お気に召すまま――じゅぶ、じゅる、じゅる」

 顔を振るスピードを上げ、激しく奉仕するウィルベル。包茎ペニスは、もう我慢できなかった。

「イクぞっウィルベルっ……くっ」
「んぶ!? ん……んっく、んっく」

 脈動するペニスを、ウィルベルは両手で支え、ストローでも吸うように吸引した。
 初めての女の子の快楽に、腰が抜けそうだった。
 こくこくと俺の精液を飲み干していくメイドさんの姿は、可愛らしくもあり、淫らでもあった。

***

「初めての、女の子の口奉仕……いかがだったでしょうか?」
「女の子って最高だな!」
「それなら、よかったです……学園でも、女の子たちをたくさん抱いてきてくださいね。それがあなたのお仕事です」
「つうかフェラだけ? 続きはしてくれないの?」
「今はひとまずおしまいです。余裕があるなら、今日からでも、学園の姫達に、ええと……種付けしてあげてください」
「おお! まかしとけ」
「よかったです……と」

 あくまで平静な彼女は砂流が止まりかけている砂時計を一瞥し、彼女は荷物から小さな手鏡を取り出した。

「もう着きます。髪が乱れていますから、整えましょう」
「了解っと……あれ」

 彼女の持つ鏡には、金髪碧眼の爽やか白人イケメンが映っていた。
 十八くらいの体つきで、彫刻作品みたいな整った顔をしている。
 これが俺?

「誰だこいつうううう」
「ご主人様……お気の毒に」
 軽くため息をつくウェルベル。

***

 堅固な城壁には、大きく頑丈そうな青銅製のアーチ状の門が備えられていた。それをくぐると、庭園が広がる。
 庭園の一区画で、俺の乗る馬車は止まった。ここは駐車場のようで、並走していたたくさんの馬車が所狭しと並んで停められていた。
 すぐ近くに、イディアル学園がそびえ立っていた。
 その敷地内には、広大なお花畑が広がっていて、甘い香りが漂ってくる。

「見惚れているのですか? はやく行きましょう、遅刻しますよ?」

 ウィルベルに促され、俺は馬車を下りる。
 もう一度観察すると、馬はやっぱりユニコーンだった。
(俺夢でも見てるのかな)
 もし夢なら、しばらくは覚めて欲しくない。
 荷物を全て持って、ウィルベルは隣についてくる。二人で校門へ向かって歩き始めると、後ろから数多くの従者がぞろぞろとついてくる。

「にしても、すごく華やかな場所だね」
「ここイディアル学園は、「世界の半分」と言われています。大陸で最も豪華絢爛、美しい庭園を持つ、帝国随一の施設でしょう」

 学校なのに、なんでこんなに豪華なのか聞こうとすると。
 校門のところに、鈍く光る金属の鎧に身を包んだ人影が、数十人待ち構えていた。よく見たら、どうやら全員、騎士のようだった。
(しかもみんな胸部装甲が膨らんでるし、折り目の入ったスカートをはいてる……女の子じゃないか)
 鎧の隙間から髪を下ろしている者もいる。
(どうして、女の子が騎士なんてやってるんだ?)
 ウィルベルと共に近くまで歩を進めると、一人を除いて全員膝を地面につけて跪く。
 立ったままの一人は、レギンスからヘッドまで眩い|白金《プラチナ》の騎士鎧を着用していた。
 その騎士が、頂点に羽のついた頭部装甲を外し、胸元に抱える。頭を振ると、長く艶やかな金色の髪が、日の光に輝きながらふわりと舞った。毛先がウェーブしていて、高貴な印象を与える髪型だ。
 そのきりっとした顔つきの女の子は、凛々しい微笑を浮かべる。

「皇太子閣下、お迎えに上がりました」

 誠実な、耳に心地いい声だった。思わず言った。

「クールな女騎士!」
「な……閣下?」

 呆気にとられる美人騎士さん。なんと返していいかわからない様子。

「君、名前は何ていうんだ?」
「わ、わたしか? わたしの名はクリスティーユだが……ああ、自己紹介をすればいいのだな。このイディアル学園の生徒会長兼、騎士団長を務めさせていただいている」
「そうか、クリスティーユさんがここのリーダーなんだね。俺はレイジ。よろしく」

 砕けた言葉で挨拶されて、クリスティーユはきょとんとしていたが、なんとか調子を合わせた。

「……ああ。これから貴殿とは長い付き合いになるだろう。よろしく頼む」

 軽く礼をするクリスティーユの大きな胸やお尻を観察していると、ウィルベルが小突いてくる。

「ご主人様、あの、お言葉なのですが時間が押していて。このまま談笑していては遅刻してしまいます」
「そうか。じゃあ行こう――ん?」

 足を踏み出そうとすると、小さな薄紫色の体毛を持つ猫が、足元の花畑の中にいた。

「みゃあ」
「あ……可愛い」

 真面目くさった顔ばかりしていたウィルベルが、珍しく油断しきった感じで頬を緩める。いますぐにでも子猫を抱き上げたそう。
 彼女に猫をプレゼントしたくなった。

「野良猫かな? その学園って動物持ち込みあり? クリスティーユさん」
「校則では許可されているが……あまりわたしに近づけないでくれ――くしゅん」

 クリスティーユは凜とした雰囲気に似合わない可愛いくしゃみをして、口元を押さえている。

「もしかして猫アレルギー?」
「お恥ずかしいことだが、そうだ――くしゅん」
「じゃあ、この猫拾っていけないな。残念」

 俺は仕方なく置いていくことにした。しかし――
 
「ねえ君、ウィルベルと何してたんだ?」

 そう、猫が話しかけてきた。少年のような涼しげな声。あれ、口が動いてないけどどうやって喋ったんだ。

「この世界の猫って、可愛いうえに喋るんだな」
「はい? ご主人様……やはり強力な幻属性魔法をかけられたのでしょうか」
「え、ウィルベルは聞こえないの?」
「……非情に申し上げにくいのですが、猫は、その、喋りません」
「まじで?」

 心配そうなウィルベルの顔から、猫に目を戻す。

「昨日、お父様がウィルベルに命じてたんだ。僕に女の子のよさを教えてあげろって。そんなの知りたくもないね」
「は? お前誰だよ」
「あ、まだ言っていなかったね。僕こそが、君の召喚主のレイジ」
「召喚?」
「思い出して……|霊《ゴースト》の記憶を、呼び戻すんだ」

 猫が、ぴょんと胸元に飛び込んできた。触れ合った瞬間、頭の中で何かが閃き、記憶が甦ってくる。

(つづく)






<妹姫・2話>回想――転生前




 俺は、ネット小説「異世界転生したらガチのチート能力者だったから女の子を犯しまくったったwww」を最終話まで読み終え、深くため息をついた。
 とてもありきたりな物語だった。

「最近こういうのばっかりだなー」

 異世界転生。近頃流行るのはこのジャンルばかりだ。
 別に異世界転生が悪いとか、もう飽きた、とか言いたいわけではない。確かに異世界転生は魅力的なジャンルだ。つまらない現実世界を飛び立ち、ファンタジックな世界でやりたい放題したり、人生をやり直したりする物語は、読んでいて楽しい。
 既存のゲームの内容と照らし合わせ、文から映像が想像しやすいのも強いところ。

「でもさー、とりあえず転生すれば人気出る、みたいな風潮どうなのよ」

 たった今読んだネット小説「異世界転生したら(略)」は、かなり評価が高く、サイトのランキングでわりかし上位に挙がっていた。だから、読んでみたわけだ。
 しかしだ。
 どんなものかと蓋を開けてみれば、駄作の部類だった。
 ストーリーには構成というものがある。こういう伏線を敷いておいたからこういう展開が可能、とか、一貫してこういう設定だからこういうシーンが描ける、とか。
 そういった構成が皆無であることに加え文章がまるで中学生が書いたかのようだった。とりあえず格好をつけたいようで、難しい表現を多用、もしくは誤用している。そのくせに、ところどころ意味不明な表現があるところが、イタい。
 更新された最終話は打ち切り漫画のようだった。まあ、エタらなかっただけましか。
 しかもだ。

「最後いきなりあんな展開ぶちこんでくるとかないわー」

 次話はエロシーンだと見込んで用意しておいたパソコンの脇のティッシュ箱は、未使用のまま。まあそれはそれでいいことかもしれないけど。

「言ってしまえばエロけりゃいいんだろうけどさ……このレベルであのランキング上位かよ。衝撃の展開、とかもどちらかというと不必要なんだけどな」

 もとをただせば、エロ小説。エロいシーン以外に興味はない。要らないシーンで肝心のHシーンまでぶち壊しにされては、元も子もない。
 どうして、こんな作品が高評価なのかわからない。
 たぶん、「異世界転生」の言葉に釣られて、小説の良し悪しが見えていない読者が、たくさんいるのだろう。

「まあさ、こんなこと言っちゃってる俺はもっと面白い小説書けるかって言ったら、そうでもないんだけどね」

 そもそも無料で読ませてもらっているんだから、文句を言う権利なんてない。ましてや堂々と作者を貶すメッセージを送るなんて論外だ。
 俺は他に誰もいない部屋で独りため息をつき、うんと伸びをした。パソコンを閉じて、暗い部屋を出る。

***

 夕飯の支度を独りでしながら、転生したいなぁ、と思う。

 別に俺は異世界転生というジャンルを貶しているわけではない。むしろ、どちらかというと好きなジャンルだ。異世界に行って、人生やり直せたらどれだけいいだろうな、と真面目に考えるくらいに。
 
「こんなクソみたいな現実、消えてなくなればいいのに」

 また呟いた。独り言が、癖になってきているようだ。
 今の生活のどの辺がクソみたいかと言うと、まあほとんどがクソだ。
 安い時給のバイトでその日暮らし。そのくせに労働時間は長い。老人だらけのアパートに帰ってきても、自分の部屋では誰も待ってくれてはいない……。

 俺みたいな貧乏人にとっては、ネット小説を読んだりゲームしたりする時間が、一日で一番幸せな時間なのだ。

「よし、出来上がりかな」

 俺は、狭くて小汚いキッチンで、スーパーの特売で買ってきたクソ安い肉や野菜を炒めているところだった。
 皿に適当にフライパンの中身をぶちまけて、ぎしぎし軋むテーブルの上へと運ぶ。
 薄汚れた窓ガラスから外を見ると、もうほとんど日が暮れかけていた。
 ぼんやり眺めていると、しだいに太陽は地平線の向こうに飲み込まれていき、紫色の闇が、あたりに落ち始める。

「また一日が終わるのか」

 さっきからこうやって改めて自分の境遇を考えるのには、わけがある。
 特売肉と特売野菜を、車に補給するガソリンのように口の中に突っ込みながら、俺は小さくて画質の悪いテレビの電源をいれた。
 実は、俺の幼馴染の女の子がテレビに出るらしいのだ。
 リモコンで、チャンネルを変える。彼女が出演するドラマが放送されるチャンネルに。

「あ、いた!」

 さっそく、懐かしい面影のある顔が出てきた。
 間違いようもなく、彼女だった。眉目秀麗、笑顔が明るく、おとなしいお嬢様的雰囲気の彼女は、素晴らしく画面に映えていた。今まさに人気急上昇中なのも、うなづける。
 ドラマの中で、彼女はヒロインをやっていた。主人公役の男と仲良くしているのを見ると、気分が沈む。
 なぜかって、俺はその娘が好きだったからだ。

 おとなしくて、いつも俺の話を笑顔で聞いてくれるいい娘だった。
 外見は、深窓の令嬢みたいに慎ましく優雅だった。長い髪はさらさらと絹のように滑らかで、漆のように黒く、輝きがあった。
 胸は適度に大きくて、上品な印象を崩していない。全体的にみると、スレンダーなモデル体型をしている。

 記憶の中の彼女と、画面の中の彼女を照らし合わせていると、ドラマは急に彼女と主人公だけの場面になった。
 夏空に花開く大輪の花火のもと、ヒロインである俺の幼馴染は、その男に熱い視線を向けている。浴衣姿はその清楚な印象とマッチしていて、きっと今現在、日本中の男どもが彼女の姿を食い入るように見ているだろう。
 大体、この後の展開が予想できた。
 きっと彼女は、この主人公と……

「やっぱつまんね」

 画面の向こう側で何が起ころうが、俺には関係ないこと。
 自分で物語を体験できたら、いいのになと思う。

「ダメもとで、彼女に告白でもしとけばよかったのかな」

 俺は呟いて、キスシーンの前にテレビの入力を切り替える。
 
***

 一つの思いに、頭が支配されている。

「あの娘は人気女優にまで上りつめたのに、俺は一体何やってるんだろうな」
 
 今更どうにもならないことだ。俺は深くため息をつき、布団にもぐりこみ、頭だけ出して、ゲームのコントローラを握る。
 テレビ画面で起動したのは、「ハンマー&ソード」なるMMORPG。内容は次のようなもの。
 クエストに現れるモンスター主にワイバーンを倒し、経験値や仲間との好感度を上げ、主人公のレベルを上げていく。
 レベルが上がれば、さらに上級のクエストへ挑むことが出来るようになる。強いワイバーンの素材で強い装備を製造し、狩人として頂点を目指す。

「ふぁ……ねむ」

 このゲームはかなりやりこんでいるが、まだゲームの終わりは見えない。
 これからもアップデートされていくだろうから、きっと一生遊べるだろう。
 ステータス欄には、こう書いてある。

【ジョブ】 剣士
【LV】 132
【装備】 紅龍一式
【スキル】 火事場根性

「さてレベリングするか」

 機械的に雑魚モンスターを殺し素材をはぎ取りながら考える。
 今日も特に何もない一日だった。

「なんかだりぃ……」

 誰か別人に生まれ変われたら、中学高校時代からやり直すのに。

「おちる……」

 いつのまにか、まぶたが重い。頭がこっくりこっくり舟を漕ぐ。
 コントローラーが手から滑り落ちる。
 世界は闇に包まれて――
 刹那、男の声が聞こえた。

「あ……うまく繋がった。君が、「異世界の住人」なの?」

 涼しげなメゾソプラノの声だった。青年と言うより少年の声。

「は?」
「ごめん。君が知る由もなかったね。じゃあ、手早く手順を進めてしまおう」
「誰だお前」
「うーん……これから、君が代わりになる者、とでも言っておくよ。さて、質問1。君は、人生を後悔しているの?」
「いきなり質問てどういうつもりよ」
「頼むから答えてくれよ。手順が進まないだろ」
「わかったよ……そりゃもちろん、後悔してるさ」

 ずっと、やり直したかった。世の中の冷たさ、厳しさを何も知らなかった頃の自分から。

「肯定ってことでいいね。じゃあ質問2。今の生を捨てて新たな生を受ける覚悟って、あるかな」
「覚悟?」
「命って、重たいんだ。その肉体がこれまで生きてきた月日と、これから生きていく月日の可能性。その二つをともに剥奪して、僕は君の|霊《ゴースト》をこっちの世界へ「召喚」する」
「お前中二病なの?」
「ちゅうに……なんだいそれは? とにかく、肯定するかい?」
「するよ。今の生になんて、ひとかけらの価値もないからな」
「随分と、君は悟っているというか、冷めた人間だね。こっちに来たらびっくりするかもよ」

 声は仄めかすように言った。

「では、最後の質問いくよ。質問3。新たな人生を、全力で楽しめる?」
「たりめえよ」
 
 なんでそんな当然のことを聞くのか、わからん。

「よかったよ。では最後に、警告だ。君には、「運命《さだめ》」が待ち受ける」
「さだめ?」
「実は召喚先の身体……僕の体には、定められた行き先がある。君は……近いうちに、殺される」
「は? 転生する意味ねえじゃん」
「いいや、そんなことはない。霊|《ゴースト》は、この世界では輪廻転生するからね」

 ちょっと情報過多で頭がこんがらがってきたぞ。

「今はそれでいい。いずれ、この意味がわかるときが来るさ。「それまでは、探究せよ。冒険せよ。汝、我を代替し世界を味わい尽くせ」」
「あ?」
「契約終了っと。さあ、僕の世界へようこそ」
「ちょっと待て、もっと詳細に説明を――」
「大丈夫。僕がサポートするから」

 その言葉を最後に、俺は深海から引き上げられるように、目を覚ました。
 俺は布団の中にいた。
 床にはコントローラーが転がり、ゲーム画面はクエスト失敗状態。寝落ちしてる間にモンスターにぼこぼこにされたらしい。

「俺も幻覚が見えるレベルまで堕ち――うっ……!」

 やっと気づいた。
 胸の深い部分の痛み――心臓が、止まっていた。
(まじかよ……)
 苦しいけど、すでに身体から力は抜けていて。
 そのまま何もできないうちに、視界は揺らぎ、意識が消えた。
 俺はこの世界において、約二十年の実りのない生涯を終えた。
(つづく)







<妹姫・三話>姫と姫騎士の学園




 前世の記憶が全て蘇り、はっと我に返る。

「ご主人様? いかがなさいました?」
「そうだ、思い出した! これまでのこと、全部思い出したよ、ウィルベル」

 体中、鳥肌が立っていた。現在は次期皇帝の俺はついさっきまで、何の変哲もない男として、平凡で退屈な人生を送っていたのだ。

「まるで人が変わってしまったようなお顔です……」
「ああ、その通りだよ。ウィルベル、君の本当のご主人様は、コイツなんだから」
「はい?」

 胸に抱えた子猫を、持ち上げてウィルベルに見せてやった。
 しかし、彼女は小さい手足をばたつかせる猫を目前に、きょとんとするのみ。
 口で説明してやろうとすると――

「にゃう」
「痛っ!」

 かぷりと指をかまれた。同時に、声が聞こえた。いや、むしろ聞こえるというより、頭の中に響くよう。

――バカ! 言うなよ!

 ようやくわかった。これは、レイジのテレパシー。
 俺も頭の中で返事してみる。

――なんでだよ。ウィルベルに嘘つく必要あんの?
――中身が入れ替わってることが知れたらまずいんだ! ウィルベルだって告げ口しないとも限らない!
――お前はそれでいいの?
――女の子に関わらないで済むならこっちの体のほうがマシだね。

 風変わりな皇子もいたもんだ。
 手元のその子猫がにゃうにゃう鳴くのを見て、ウィルベルはふにゃふにゃ頬を緩めている。

「かわいい……」
「ウィルベル?」
「……はっ! 失礼しました!」
「とけそうな顔してたけど大丈夫?」
「は、はしたないところをお見せしました」
「取り込み中すまんが――くしゅん、その、お願いだからその子をわたしから遠ざけ――くしゅ」

 困り顔で話しかけてきたのは、騎士のクリスティーユ。くしゃみが止まらないのに加え、目もかゆそうにしょぼしょぼ瞬いている。

「悪いけど、この子は置いてけない。俺の警護はもう大丈夫だ、クリスティーユ。また後で会おうぜ」
「か、閣下……?」

 俺は戸惑うウィルベルを連れ、呆然とするクリスティーユたち騎士団一行を置いて学園の校舎へと進んだ。

「こいつを飼うことにしたよ、ウィルベル」
「あの、騎士団の方々がお困りのようなのですが――」
「ほら、この猫、可愛がってやりな」
「え、あ……すごい、ふわふわですね!」

 ウィルベルに子猫を渡すと、ぱっと笑顔が広がる。騎士団のことなど忘れ、にゃんこに夢中になった模様。

「子猫をお世話するの、夢だったんです! あの、この子……お名前をつけてはどうでしょう?」
「へえ、どんな名前がいい? ウィルベルの好きなようにどうぞ」
「スミレなんてどうでしょう? ちょうどスミレの花畑から現れたので」
「じゃあそれでいいんじゃね」

 子猫を手渡すと、ウィルベルは普通の少女のように微笑んだ。

「わあ……こんなに、顔がちっちゃい」

 おそるおそるスミレの頭を撫でるウィルベル。
 しかしその時、頭上から腹に響くような低い音が響く。
 どうやら鐘の音のようだ。
 見上げると、遥か高く、城の頂上の鐘楼で、結婚式場にありそうな金色の鐘が揺れていた。

「あぁ、時間! 遅刻です、ご主人様!」
「え、そうなの」
「わたしが子猫なんかにかまっていたせいで……すみません。少し急ぎましょう!」
「まあ遅刻しても怒られないでしょ、俺の地位身分なら」
「確かにそうなんですが……他の生徒さんたちに迷惑がかかりますから」

 俺は少し歩くスピードを上げて、建物へと踏み込んだ。

***

 メイドと白人男の姿を、城の最上階、ある小部屋から見下ろしている少女がいた。年の程は、十七くらいに見える。
 口に手を当て、欠伸を押さえた。
 本来滑らかな黒髪に、今は寝ぐせがついていて、まだ寝間着を身に着けている。彼女は透き通った声で、そっと呟いた。

「あの男の人が、わたしの運命の人……なのでしょうか」
「そうだ。それが皇族のしきたりだし、占術師もそう予言している」
「わっヘーゼル先生! いたの? びっくりしました。いきなり部屋にはいってこないで」
「何を言っているの? ここはわたしの部屋でしょう。仕事の邪魔をしていることくらい、自覚してほしいわ」

 ヘーゼルと呼ばれた彼女は大人の女性だった。皺のないスーツのような衣服を着て、その上にマントを羽織っている。豊かな胸にかかる銀色に輝く長い髪は、天然のゆるいカールがかかっている。
 その声はどこかひんやりとした響きを持っているが、それは彼女のぶっきらぼうな性格を表したもので、心の根は温かい。

「ごめんなさい……いつも部屋を転々としているから、感覚が薄れていました。それより先生、疲れてる?」
「そうよ、昨日は夜遅くまで作業していたから。明日までに、この膨大な量の古代資料を読み解かなければならないの。マリ、よければ手伝ってくれる?」
「悪いのですが……わたし、今日は始業式で」
「そうだった? もうそんな時期!?」
「もう、先生は仕事にのめり込むと帰ってこれなくなるんだから」
「のめり込まないと処理しきれないの……回復薬浸けで、もう何日も一睡もしてないんだから」

 ヘーゼルは王族ではなかった。平民の地位ながら、古代文字を勉強し、学問の力でイディアル学園の教授へと上りつめた。
 机の上の未解読の古代書の山を片付けるべく、彼女は椅子に腰をおろす。
 眼鏡をかけて作業を始めるが、それでも目の前の黒髪の少女はぼんやりと空を見ているので、彼女は一応訊いておいた。

「マリ。始業式、行かなくていいの?」
「ふふ、わたしは遅れても怒られないんです」

 天真爛漫な笑みを浮かべて、姫は答えた。

「皇女たる者がこの有様か」
「だって……」

 そう言われても、皇女はつぶらな瞳を曇らせるのみで、ベッドから動こうとしない。

「帝国も先が思いやられるな」
「もう、ヘーゼル先生、そんなこと言わないで。この国が滅びるわけないでしょう? わたしはこのイディアル帝国が大好き。常春の気候、善良な民、そしてわたしたち王族の魔術の恩恵を受け、栄える街。滅びるなんて、そんな心にもないこと、言わないことです」
「全く、世間知らずの姫はこれだから困る……」
「どういうことですか? ヘーゼル先生」

 そう大真面目に訊いた途端、

「マリっ! いるっ? わたし、アリス! 迎えに来たよっ!」

 太陽のように元気で明るい声がドアの鈴が鳴る音と同時に聞こえた。声が耳に入るだけで、気分がよくなるみたい。そう、マリは思った。

「国はどうでもよくても、友達は大事だろう?」
「……もう、わかったよ。今行きます、アリスちゃん」

 二人に背中を押され、ようやくマリはうんと背伸びをして、着替えを始める。

***

 城に入った途端、花園とはまた違う、甘いような匂いが鼻孔をくすぐった。
 どこかで、こんな香りを嗅いだことがある。記憶をたどってみる。
 思い出した――そう、この香りは、例の幼馴染みの女の子の家に遊びに行った時、部屋に染み付いていた香り。

「女の子の匂い……やばい興奮してきた」
「昨日まで性欲ゼロだったご主人様がそんなことを言うなんて……ウィルベルは光栄です」

 城はびっくりするくらい広く、迷路のように廊下はいりくんでいた。
 螺旋階段をテンポよく上がり、荷物と猫を抱えたウィルベルについていく。
 廊下の突当りを曲がって、俺はそこにあるらしい教室へと向かったが――

「いたぁっ!」
「うおっ!」

 何かと正面衝突した。
 俺は踏みとどまったが、相手は勢い余って地面に尻もちをつく。
 倒れているのは、学校制服姿の女の子だった。いや、似ているけど学校制服ではない。
(軍服か……?)
 肩のところが金色の肩章で飾り付けられている。転生前の現実世界ではありえない、派手な制服。意外と、プリーツスカートと似合っている。
 その女の子は見たところ、高校二年の、十七歳くらいだろうか。

「びっくりしたぁ……ごめんね、ぶつかっちゃって」

 彼女はしかめた顔を俺に向け、紺碧色の瞳の焦点を俺に合わせた。
 白金色の髪はセミロングで、頭の横に一つ作った結びがぴょんとアクセントになっている。ワンサイドアップというやつ。
 どこか世間知らずな感じの、素直な声で彼女は言った。

「ねえそれより、マリを知らない? ええと、皇女様の。あの子、待っててあげたのに先に行っちゃって、わたしが遅刻する羽目に」
「は? マリって誰? 皇女って?」

 野太い声で言うと、彼女は一瞬息を詰まらせる。澄んだ瞳を見開いて、口をぱくぱく。

「ああっ……れ、れ、れ!」
「れ?」
「レイジ様だあっ!」

 驚いた表情に、少しずつ笑みが広がっていく。

***

「みんなーっ! レイジ様の到着だよっ!」

 アリスが広い講堂中に聞こえるよう叫ぶと、その場にいた人々が、全員俺たちに視線を集めた。
 一拍遅れて、きゃあっ、と黄色い嬉しそうな悲鳴があがった。
 どれもこれも、中学生か高校生の女の子の声だった。
 そう、この学園には、女の子しかいないのだ!

「本当にあの方が、レイジ様?」
「偽物じゃないよね?」
「わあ! 初めてこんなに間近で男の人に会っちゃった!」

 高い声で喋る女の子たちは、みな制服を着ていた。それぞれ軍服風デザインの制服だ。
(どうなってんだこりゃ)
 可愛い女の子しかいない空間は、なかなか感動的だった。

「ノエル、こっちおいでよ! レイジ様だよ、ほら!」
「アリス、その人は……ほんとうにレイジ様なのです?」
「そうだよ。本物!」
「凄いです! お目にかかれて光栄なのです、レイジ様」

 興奮した様子のアリスが呼んだノエルという子は、頭部以外に甲冑を身に着けていた。
 ポニーテールにした薄い桃色の髪が、プレートアーマーの上にこぼれている。
(この世界、ピンク髪とかいんのかよ)
 クリスティーユたちと同じく下はスカート。青い目はぱっちりキラキラしている。可愛いけど、アホの子っぽい雰囲気を醸しているのが何とも言えない。凛々しい騎士鎧が全然似合っていないのだ。
 アリスと同じ、十七くらいに見える。

「君、名前はノエルって言うの?」
「そうなのです!」
「じゃあ、ノエル。一つ聞くけどなんで騎士鎧着てんの?」
「それは、ノエルがわたしの姫騎士だからだよ、レイジ様?」

 答えたアリスに訊き返す。

「なんだ姫騎士って。姫なのか騎士なのかはっきりしろ」
「ノエルは王族の姫でありながら、わたしに仕える騎士でもあるんだよ。ね、ノエル?」
「そうなのです! わたしはアリスに忠誠を誓っているのです!」
「ほう……一応理屈があるのか」

 ここは、お姫様が騎士をやる世界らしい。危なくないか、と考えていると。

「知らなかったの? 姫騎士だって、この国にとって重要な戦力じゃない」

 背後からまた、新しく女の子の声がした。どこか自信に満ちた響きの声。

「リナ! 凄いのです! かの有名なレイジ様が、わたしたちの学園にお越しになったのです!」
「レイジ様はみんなの憧れだものね」

 余裕を持った微笑みながら現れたのは、アリスと同じ制服姿の女の子。
 ライトブラウンの髪を、ハーフアップにしていた。ハーフアップというのは、髪の上部分だけをうしろで結び、下の髪はそのまま下ろした髪型。お嬢様結びと言ったほうがわかりやすいかもしれない。
(この子、なんか甘やかされて育った雰囲気醸してるな。いかにも姫っぽい)
 彼女は髪を指先でいじりながら、彼女は栗色の瞳を俺に向ける。

「お初にお目にかかります、レイジ様。わたしは、セイラ国の姫、リナと言います。よろしくね」
「おお、よろしく。俺って女の子たちの憧れなのか。リナは俺のファンなのか?」
「へっ!? わ、わたしは……」

 リナは誤魔化すようにノエルへと話を振った。

「ノエルはファンだよね? 以前帝国で馬車の中からレイジ様を見たとき、一目惚れしちゃってなかった?」
「ふえっ? わ、わたしは……そうなのです。レイジ様のこと、憧れていたのです!」

 ノエルは、一気に言い切った。少し頬を染めてキラキラした瞳で見つめてくる。
(女の子にこんな目線向けられたの初めてだ……)

「アリスもファンじゃなかったかしら?」
「え!? わたしは、うん……えっと、かっこいいと思ってました」

 赤面しながら、ちょっと目を反らされた。
 この会話のやりとりを見ながら心の中で思った。
(俺、思った通りモテてるな)
 鏡を見たときからいけると思っていた。第二の人生は、女の子とイチャイチャしながら過ごせそう。内心でほくそ笑む。

「ありがとう二人とも。嬉しいよ」

 表面的ではイケメンスマイルを浮かべると、周囲からきゃあっと黄色い声が上がる。目にハートマークを浮かべたような女の子たちばかり。アリスとノエルもぽっと頬を染めている。
(お姫様たち、ちょろいなおい)
 だがプライドが高いのか余裕を持っている子達も少数だがいる。そのうちの一人であるリナは背後から一人の女の子を引っ張ってきた。

「そうだサーニャ。学園一の秀才ちゃんは、男になんか興味ないの?」
「まったく……リナはそういう話ばっかり」

 呆れた口調でそう言うのは、金髪ツインテールの背の小さな女の子だった。中学生くらいに見える。
 この子は制服を着ている。瞳は薄青い。
 ジト目で言った。

「まるで発情期みたい」
「は? はつじょう、って何よ? 聞いたこともない言葉だわ」

 サーニャはぽかんとするリナに構わず、じっと俺を見つめ始める。俺の表情を窺いながら、ちょっと緊張した感じで喋った。

「初めまして。サーニャと言います。わたしはみんなより二才年下なので、レイジ様にとって後輩になります。ええっと、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
「その、いきなりすぎるかもしれないですけど、レイジ先輩って呼んでもいいですか?」
「いいよ、サーニャ」
「あ、ずるいのです! そうやってサーニャちゃんだけ仲良くなって!」
「ふふん、いいでしょ。それにしても」

 瞳の奥がキラリと光った。

「これが、男性……初めて近くで見た」

 興味津々と言った感じ。ノエルやアリスとは方向の違う関心がありそう。なんというか、俺を研究観察対象にでもしたそうだ。

「じー……」
「おい、サーニャ?」
「じー……」
「あの、すみません……お傍を離れてしまいました。メイド失格です」

 脇からそっと会話に入ってきたのは、メイドのウィルベル。

「おお、お前か。今までどこにいたんだよ」
「スミレが逃げてしまって……やっと捕まえたんです」
「わあっ! その猫可愛いっ!」
「……確かに、可愛い」

 アリスからサーニャまで、皆の注目が集まる。
 スミレはウィルベルの腕の中、ぶるぶる震え、毛を逆立てていた。

――うわあああああああ! 女だらけだああああ! やめてよおおおお!
――は? お前、女が嫌いなの?
――女なんて生き物、消えてなくなればいいのに!
――お前変わってんな……

 総勢100人くらいの女子生徒たちが、俺の周りに群れている。そういう性格なら、この状況は地獄だろう。
 その震える子猫を嬉しそうに抱きしめているウィルベルに、疑問を小声で訊いてみる。

「それよりさ、さっきから気になってたんだけど、王族って、女しかいないの?」

 男を初めて見た、という言葉が多く聞き取れた。

「大体そうですね。王族の血脈には、今現在、あなたとあなたのお父様、二人の男性しかいません。「王家の呪い」によるものです。加えて姫君たちは、子を産む相手である皇帝にまみえるまで、男との接触をしてはいけないことになっています」

 王家の呪い……? 今はいいや、また今度の機会に詳しく説明してもらおう。

「ふーん……俺のためにウブな女の子たちが用意されてるんだな」
「ご主人様の好きにしていいとのことです。全員、ご主人様のお父様である皇帝の娘ですから、彼女たちは、腹違いの妹ということになります」

 妹姫が、100人いる!
 みたいな感じなのだろうか。ラノベでそんなタイトルがあったような、なかったような。
(とにかくすげえ世界に迷い込んじまった)
 現実との違いがありすぎる。あとで落ち着いた時、もう一回まとめてウィルベルかスミレに説明してもらおう。

「ところでレイジ様。そのメイドさんは誰なのっ?」

 アリスがウィルベルを見て言う。

「ウィルベルって言うんだ。俺専属のメイドだよ」
「へえ……よろしくね、ウィルベルさん!」
「いえ……わたしこそ」

 ノエル、リナ、サーニャもそれぞれ笑顔で挨拶した。

「ノエル様、訊きたいことがあるのですが」
「どうしたのです? ウィルベルさん」
「どうして、今騎士鎧を装備しているのですか? これから、霊魔法の講義ではないのでしょうか」
「違うのです。今日は始業式早々、一時限目から実習があるのです。グループを作って、すぐ近くのダンジョンで、軽めのクエストをこなすのです。絆を深め直すのが目的なのです」
「ああ、そういうことですか。失礼しました」

 ウィルベルは納得できても、俺はできない。知らないことが多すぎて困る。

「なんだ、クエストって」
「魔法や武器を使って、魔物たちを倒しにいくの。回数をこなすうちに腕があがるし、同行者との絆も深まる。学園の教授がクエスト内容を決めるんだけど、難しいクエストをクリアすれば、報酬もたんまり出るわ」

 リナの言葉に、ふーんと頷く。
 現世における「ハンマー&ソード」を思い出した。たぶん、あのゲームと同じように、リアルにモンスターでも狩るつもりでいれば問題ないかな。
 いっそ全部、「ハンマー&ソード」にあてはめてみよう。
 この城は狩人の出撃拠点で、姫たちは同行者。仕える武器はハンマーと剣だけではなく、魔法も加わる。
 うん、こう考えると、わかりやすいな。

「はーい、みんな、それくらいにしときなさい。レイジ様に失礼でしょう」

 そこに、大人の女性の声がかかる。
 見ると、教壇に教授とおぼしき人物が立っていた。銀色の髪を持ち、少し疲れて眠たそうな顔をしている。美人なおかげで、その半開きな瞳がどこか色っぽい。
 アリスが彼女を見てヤジを飛ばす。

「あ、ヘーゼル先生また遅刻っ!」

 そういう名前らしい。ヘーゼルはアリスをちらりと見て、謝った。

「教師のくせに、遅れてごめんなさい。仕事を一区切りつけたくて。
 これから早速、実習を始めるわ。クエストのやり方わかんない人は、上級生に聞いて。四人一組のグループ全員揃って、定刻までには城に戻ってくるように。さあ、それぞれのダンジョンに行きなさい」
「ヘーゼル教授、相変わらず眠たそう」
 
 欠伸をしてすでに講堂から出ていこうとしているヘーゼルの後ろ姿を見て、リナも心配そうにそんなことを言った。そこに一転、アリスの元気な声。

「じゃあわたし、自室で着替えてくるよ。一緒のグループになろうね、レイジ様?」
「ああ、いいよ」

 アリスは元気一杯で可愛いし、何も問題ない。

「あ、わたしも姫騎士としてアリスに付き添うので、同じグループなのです。よろしくお願いします、レイジ様」
「わたしもレイジ様と一緒がいいわ! ね、わたしもついていっていいよね? ノエル?」
「もちろんなのです。レイジ様、いいのです?」
「そうしよう」

 俺はアリスとノエルとリナと同じグループになった模様。他の女子たちはため息をついている。サーニャは他の女の子たちと約束があるのか、既にグループになって会話を始めている。
 期を一にして、ぞろぞろと、皆が着替えるため講堂から自室へと帰り始めた。
(つうかみんな何に着替えんの?)
 ま、よくわからんが、さっそくクエスト行ってみよう。いきなり女の子たちをレイプしなくても、いつでもチャンスはありそうだし、様子を見たほうがいいだろう。
 とか考えながらぼおっとしていると、ウィルベルに言われた。

「ご主人様も着替えるんです」
「そうなの?」

***

 俺は、軍服っぽい男性用制服に腕を通した。腰に装備した剣を触りながら、ゲームにあてはめて自分のステータスを考えてみた。

【ジョブ】 剣士?
【LV】 ?
【装備1】 そこそこ上質な剣
【装備2】 配給軍服
【スキル】 ?

 まだ全然、自分の能力がわかんないな。
(つづく)







<妹姫・4話>回復ポイントと初体験




 数メートル先の草むらが、かさかさと揺れる。
 こげ茶色の毛むくじゃらの何かが、ちらちらと垣間見えていた。

「|巻き付け《アイヴィー》!」

 リナが手のひらをその何かに向けて伸ばし、呪文を詠唱した。
 彼女の胸の中心が青白く仄かに輝く。
 同時に微風が巻き起こると、彼女が纏った漆黒のマントや、同じく黒のとんがり帽子がさわさわと揺れた。その帽子の先っぽはへたりと折れている。
 リナはまさに魔女姿だった。
 ぷぎぃ、と悲鳴とともに、小型のモンスターが引きづり出される。

「よし、プギーの捕獲成功ね。見てた、レイジ様?」
「すごいな。驚いたよ」
「でしょ?」

 リナは満足そうな顔で、植物の蔓にがんじがらめに縛られた豚のような魔物を見下ろした。
 同じく魔女装束のアリスは、純粋に感心した様子。

「リナちゃん、上手! 草属性の魔法ってやっぱりこういう時使えるよね!」
「まあね。このくらい朝飯前だわ」
「頼りになるのです!」

 手のひらを合わせて感激するノエルは、先程と同じ騎士姿だった。
 上半身は甲冑に身を包み、下半身はスカートがひらひら揺れている。肘から先や足先もところどころ角ばった装甲に覆われている。相変わらず、全然似合ってない。
 明るい日差しに、手にした細く鋭い槍がピカピカ照らされていた。

「なあノエル。草属性って言ったけど、他にはどんな属性があったっけ」
「忘れちゃったのですか? でも大丈夫、忘れるのはみんな同じなのです」
「それはノエルだけでしょ。レイジ様ほどの方が、そんな子供でも知ってることを忘れるなんておかしいわ」
「ああ、そのことなんだけど。どうやらこの学園に来る道すがら忘却魔法にかけられたみたいで」

 ひとまず、これからはこういう風に「レイジ」としての記憶がないことを言い訳することにしたのだ。

「そうなのですか? 魔物に悪戯されたのです?」
「ああ、そうだったかも」
「気を付けてね、レイジ様。ダンジョンの奥地では、たまに幻属性を持つ強力な魔物が出現するらしいから」

 アリスは俺を心配してくれている。気遣いの出来る優しい子だ。

「わかった、気を付けるよ」
「うん。知らないなら、わたしが属性について説明するねっ。この世界に存在する魔法は、火、水、草、氷、雷、土、風、幻、龍属性。幻属性と龍属性はレアだから、その属性の付いた武器は、高値で取引されるし、作るのも大変なんだ」
「そうなのか……やっぱりゲームみたいだな」
「ゲーム? なによそれ」
「ああ、リナ、すまん。忘れてくれ。お前は草属性専門なのか?」
「専門もなにも、一人の人間は一つの属性の魔法しか使えないし」
「うん、リナの言う通りだよ。生まれつき、一人の女の子は、一つの属性を持ってるの。わたしが使えるのは火属性の魔法だよ、レイジ様」

 じゃあ、俺の魔力は何属性なんだろう。そう思うけど、俺は魔法を発動させる詠唱を全然知らない。後でスミレを見つけたら、魔法について説明してもらうのもいいかもしれない。
 考えていると、アリスが蔦に絡まったプギーに向かって、何気なく手をかざしていた。

「クラッシュ!」

 ぽん、と軽く弾けるような音がした。
 嘘みたいな話だが、プギーはその一瞬で霧散していた。
 キラキラ虹色に輝く霧は俺とノエルを除くアリスとリナにふわふわと漂って、胸の中に染みこんでいった。

「あ、わたしレベルアップしたかも!」

 アリスは瞳を輝かせた。いそいそと荷物から何やら器具を取り出す。
 虫めがねだった。それとも、虫めがねの形をした魔力の宿る道具なのだろうか。

「レベル10に上がってるわ、アリス。これでわたしと同じ二桁突入ね」
「やったぁ、リナのおかげだね」

 二人はいえーい、とハイタッチして笑った。

「なに? 今何が起こったの?」
「|魔物《モンスター》の体は、魔力で構成されているの。だから、瀕死になったモンスターをクラッシュすることで、魔力を奪うことが出来るんだ」
「それで、新たな魔力を吸収することで、わたしたちは自らの魔力を強化できるのよ。この「アナライザー」で、魔力を数値に変換して確認すれば、自分がいかに成長したか、達成状況を確かめられるわけ」
「そうだったっけ、二人ともありがとう」

 リナもわかりやすく解説してくれた。虫めがねは、アナライザーという道具らしい。
 今度はノエルに話しかけてみる。

「そういや、ノエルの魔法属性はなんなんだ?」
「わたしには、生まれつき魔力がほとんどないのです」
「え!? ないの?」
「それゆえ、姫騎士の役に就いているのです」
「個人差があるんだな」
「当たり前じゃない。魔力って言うのは、ちゃんと言えば霊魔力、なの。人それぞれの身体に宿った霊《ゴースト》から抽出する力なんだから、ばらつきがあるに決まってるでしょ?」
「あー、そうだったそうだった」

 霊魔法か。そういやウィルベルがそんな単語を口にしていた。
 魔法発動時、胸のあたりが光るのは、その辺が関係しているのかも。

「つうかさ、なんで俺には、プギーの魔力が流れ込んでこないんだ?」
「えぇ!? 覚えてないの? 相当強い魔法をかけられたのね」
「男の人には、魔力が備わっていないのです」
「え、そんな……そういえば、そうだったような、そうでなかったような」

 まじか! 少しショック。
 でも、思い当たることがあった。
 そうか、だから現在のスミレ、元「レイジ」はウィルベルの魔力を使って、俺を召喚したんだな。

「ってことは、俺は女の子から魔力を奪って使うしかないんだな」
「そうなのです」
「なるほど。こういうふうに?」

 俺は、隣にいたリナの胸に手を当ててみた。ふにゅ、と服の上からでも柔らかい。
(初めておっぱい触った! すげえ!)
 きゃっとリナが小さく悲鳴をあげるのと同時に、その胸の中心が青白く光る。内側から光を発しているようだ。
 
「|巻き付け《アイヴィ》!」
「んあっ……!」

 もう片方の腕を近くの頑丈そうな木に振りかざし、そう唱える。
 すると、喘ぐリナから何か熱い流れが身体を巡り、木に向かってそのエネルギーが放たれた。
 どこからか現れた蔓が、鞭のようにしなり、木に何重にも巻き付く。
 引き寄せようと意識すると、蔓は独りでに蠢き、木からみしみしと音が響き始める。
 あっという間に、倒木した。さっきまで木が立っていた場所には、葉がひらひらと舞うのみ。

「けっこう威力高いな……!」

 どうやら、男が使う魔法は強力なようだ。
 リナは触れられた胸を押さえるように、自分の体を抱いていた。

「レイジ様のば、ばか! いきなり触らないでよね!」
「だめだよリナちゃん! レイジ様にそういう言葉づかいをしてはいけないのです」
「そうだよ、リナ。でも……ちょっとわたしもびっくりしたなぁ……」

 アリスとノエルは、顔を見合わせて、少し頬を染めている。二人とも恥じらう乙女というわけだ。

「すまん、俺が悪かった」

 謝っておくと、リナはそっぽを向きながら腕組み。

「い、いいわよ謝らなくても。それにしても、男のほうがわたしたち女よりずっと高度で魔力消費の激しい魔法が使えるなんて、矛盾してるわよね。神様は、何を考えてるんだか」
「わたしたち騎士は、魔力が羨ましい限りなのです」
「でもさ、ノエルは騎士としてちゃんと武術を習ってるんだろ? 今度ちゃんとした大型モンスター討伐クエストを受注して、戦闘姿を見せてよ」
「えーと……ちゃんと戦えるようになったら……あ、なんでもないのです」

 慌てて誤魔化すノエル。
(思った通り、ノエルはなんちゃって姫騎士みたいだな)
 クリスティーユとは風格が違う。
 にしても、また情報がごちゃごちゃしてきたな。
 男は魔力を持たないから、女の子の魔力を使うしかない。ひとまずそれだけ覚えとこう。

「あ、わたし、一つ思い出したのです!」
「どうしたのよ、ノエル。今日受注したのは超簡単な「プギー十匹の討伐」よ。学期始めだしってことで、みんなでそう決めたでしょ? 前みたいに、クエスト内容忘れてたとか言わないでよね」
「実は、薬草を切らしているので、採集したいのです。調合して回復薬にするのです」
「あ、じゃあわたしも行くっ。今ぐらいって、ちょうど回復薬が尽きる時期だよね。レイジ様とリナはどうする?」

 俺も薬草がどんなものか気になったので、アリスとノエルについていくと言おうとすると、リナが腕をとんとんと叩いた。近い距離、小声で囁かれる。

「ね……二人で回復ポイント行かない?」

 リナは頬を染め、なんだか恥ずかしそうに言う。
(俺と二人きりになりたいみたいだな)
 普段偉そうにしてるリナが、今はなんだか初々しい表情をしていた。
 たぶん、回復ポイントとは体力を回復できる施設だろう。ゲームにはよく出てくる名称だ。
 リナと二人きりになれるなら、色々エロイことが出来そう。

「じゃあ、俺はリナに回復ポイントまで案内してもらうよ。少し疲れ気味だからね」
「そっか。わたしたちも少ししたら休憩所に行くから、二人でゆっくりしててね」
「一旦さようならなのです!」

 二人は俺とリナの間の雰囲気に気付かず、行ってしまった。
 静かになった。
 リナは、俺を見上げ少し頬を赤くした。自信ありげだった表情が、若干、俺の気持ちを窺うような表情になる。

「えっと……すぐそこだから。行こう? レイジ様」
「ああ、そうするか」

 ちょっと緊張した表情のリナと並んで、道なりに歩く。
 進む先、木々の間に、小さな小屋のような建造物が見えていた。

***
 
「リナって、二人きりになると無口なんだな」
「そ、そんなことないわ。さっき無理やり魔法を吸い取られて、疲れてるだけよっ」
「ふーん。それなら仕方ないな」
「わかればいいのよ、わかれば」

 リナは、明らかに緊張している様子だった。
 ちらちらと俺の顔を窺い、しきりに指で髪型を整えている。
 俺が黙っていると、本当に何も話しかけてこない。仲良くなりたいけど、何を話していいかわからない、と言った感じ。
 小さな小屋の扉の目の前まで、たどり着いた。

「へえ、ここが回復ポイントか」
「そうね。強い魔物に襲われて、勝ち目がないときはここに逃げ込むのも手よ」
「魔物が入ってこれないよう、魔法で結界でも張られてるのか?」
「まあ、大体そんな感じ。はやく入りましょ」

 俺と目を合わせることなく、いそいそとドアを開けて中に入ってしまうリナ。
 後について回復ポイントに入ると、ちょっとした家みたいなものだった。小さなキッチンが備え付けられているし、食料も棚に保管してある。テーブルと椅子や、本棚もあった。
 そして、かなりの人数寝れるキングサイズのベッドが、部屋の中心に一つ置いてある。

「……レイジ様も、ゆっくりしたら?」

 そのベッドに、リナは優雅に腰かける。
 黒いブーツを脱ぐと、しっとりと蒸れたふくらはぎや足指が露わになった。
(やべえ舐めたい)
 腕が触れ合うくらい近くに腰かけると、リナはまた、髪をてぐしで直している。
 それが終わると、俺と目を合わせたくないのか窓の外を眺め始める。
(かわいい反応だな)

「リナは、男とこんなに近づくのって初めて?」
「そ、そんなの当たり前でしょう? 王族の姫であるわたしには、皇帝であるレイジ様に会うまで、他の男が体に指一本触れることも許されない。そういうしきたりでしょ?」
「だから緊張してるんだ?」
「そ、そんなわけ……! わたしはこれでも王家の姫よ! このくらいで動じているようでは、国を治められないわ」
「じゃあ、リナのほっぺたが赤いのは、熱でもあるんだろうな。どれどれ」
「へっ!?」

 リナの前髪をかき上げ、額に手をあてると、さらさらした肌が少し汗ばんで温かかった。
 目を丸くして俺の手を掴んでどかすリナ。

「い、いきなり触るなぁ!」
「なんでだよ、熱測っただけじゃんか」
「ううぅ……そ、そうだけど……さっきだって胸を触ってきたし、レイジ様って少し破廉恥だわ」
「そんなこと言うなよ。俺、リナともっと仲良くなりたいだけなんだ」
「え……わたしと、仲良く?」

 リナの顔がぽっと赤くなる。

「リナは知ってる? 女の子と、男の子が、仲良くなった時にすること」
「な、何よそれ」
「セックス」
「せっくす……? 初めて聞く言葉だわ」

(マジかよ)
 必死になって笑いを噛み殺す。唇の端がピクピクするくらい。
 世間知らずの姫様には、真実を教えてやらなきゃいけないな。

「知らないなら教えてやるよ。まずは唇と唇をくっつけて、ちゅうーってするんだ」
「嘘!? その話、本当なの!?」

 リナは手のひらで口を押さえ、真っ赤になっている。でも興味津々のようで、訊いてくる。

「その後は、ど、どうするって言うのよ!?」
「それはお楽しみってことで。どうだ、リナは俺とセックスしてみたいか?」
「そんな……いきなり訊かれても」

 俺を困り顔で見つめながら、迷うリナ。背中を押してやらないとな。

「なあリナ。俺たちは、いつかは赤ちゃんを作って王家を繁栄させる義務があるじゃないか。俺の聞いた話によると、セックスして仲を深めると、赤ちゃんができやすくなるらしいんだ」
「あぁ……そういうことだったのね。赤ちゃんの作り方、ずっと気になってたの。大体の見当はつけていたのよ、わたしだって」

 リナは、わけ知り顔でふんふんと頷いている。
(ダメだ噴き出しそう)
 だがここで手を緩めるわけにはいかない。俺は前世において、幼馴染みに告白できなかったことを後悔していた。イケメンに生まれ変わったからには、全力で女の子たちを抱きまくる!
 なんとかイケメンスマイルを保って、もう一度質問。

「ってことで、リナは俺とセックスしたい?」
「まあ、王家の繁栄のためなら……仕方ないじゃない」
「じゃあリナ。色々驚くことがあっても、全て俺の言うことに従えるか?」
「し、従うわ……本当に、仕方ないわね」

 リナは恥ずかしそうに太ももの間で指をもじもじしている。

「じゃあまず、こう言うんだ。「レイジ様、愛してます」って」
「なによそれ!?」
「従うんじゃないのか?」
「い、言えばいいんでしょ!? れ、レイジ様……愛して、ます」

 ほとんど消え入りそうな声。恥じらう様子が、見ていてたまらない。

「次は、唇と唇をくっつけること……キスをしてみようか。こっち向いて、目をつぶって」
「うん……」

 リナは、俺と向かい合う。
 ほんのりとロイヤルリッチな感じのいい香りがリナから漂った。王家で大切に育てられた姫が、熱を帯びた表情で、ゆっくりと目をつぶり、そっと瑞々しい唇を前にさし出しているのだからたまらない。
 俺はベッドに置かれたリナの手に自分の手を重ねて逃げられないようにした上で、その唇を奪った。

「ん……! ぅん……」

 触れるだけのキスだが、リナの指は、ぴくぴくと反応した。
 初めてキスを体験した俺は、感動していた。
(女の子の唇が、こんな甘いなんて!)
 次に、俺は舌を少し出し、リナの唇をそっと舐めてみる。

「ん! ん……」

 なすがまま、俺に唇を舐められるリナ。甘い響きの息を漏らす。
 そのまま、俺は舌をリナの唇に差し込んだ。

「んうう! んちゅ……れろ……!」

 ディープキスをすると、リナは慌てて離れようとするが、手のひらを押さえられているので逃げられない。
(気持ちいい……止まらない)
 息が苦しくなってきたところで唇を離すと、涎が舌と舌の間でアーチを形作る。
 リナは半開きの瞳の、ぼんやりした顔で言った。

「なんだか、力が抜けちゃうわ……もしかして、わたしに魔法をかけたの?」
「なんにも。キスで、リナは感じてるんだ」
「かんじてる?」
「そう。赤ちゃんを作るのって、気持ちのいいことなんだ。たくさん気持ちがよくなればよくなるほど、赤ちゃんはできやすくなる」
「本当かしら……でも確かに……わたしたちの絆、深まってる感じがするわ」
「もっと近くにおいで」
「もう一回……キスするの?」
「次は、リナの体を触らせて」
「そ、そんなのダメに決まって……これも、従わなくちゃダメ?」
「ああ。絆を深めるためだから。今日で、赤ちゃん作っちゃおうぜ」
「それなら……仕方ない……じゃない」

 リナは熱に浮かされたような様子で、言われるまま俺の膝の上にまたがった。
 魔女衣装の前は、赤いリボンを交差させ、結んであった。それをするするとほどくと、簡単に襟がゆるまってしまう。

「いや……こんなの、恥ずかしすぎるわよ……」

 そう言いつつも、リナは嫌がらず、顔を背けるのみだ。やっぱり、俺に惚れてるみたいだな。
 華奢な肩や、細い鎖骨を出していく。黄緑色のブラジャーもゆっくりと外す。
 最終的に、リナは白くぷるんとした胸を露出した。ピンク色の小さい乳首がぴんと立っている。

「あ……やだ、そんなに見ないで……きゃ」

 恥ずかしそうに胸を隠そうとする手のひらをどけて、俺はリナの胸を揉んだ。コリコリと、固くなった乳首を摘まむのも忘れない。

「触っちゃ、ダメ……なんか、くすぐったいっていうか……んっ……へんな感じ」
「それ、感じてるんだぜ」
「そう、なの? ん、ふぁ……なんか、身体熱くて、おかしい……」

 リナの息が荒くなり、時折喘ぎ声のようなものが混じる。女の快感を初めて味わうリナは、戸惑っているようだった。
 
「ち、ちょっと! 一旦ストップ! やだ、なんかゾクゾクする……」

 まろびでた乳房を隠しながら、力が抜けたようにベッドに倒れ込むリナ。俺は彼女がいなくなった膝の上に、シミが出来ているのを見つけた。

「濡れちゃってるね」
「な、何これ! わ、わたし、おもらしなんてしてないんだからね!」
「わかってるよ。それ、リナの愛液だろ?」
「あ、あいえきって、なによ……? ひゃぁっ」

 俺は、問答無用で寝転がったリナの太ももを押さえつけた。黒いスカートの下、薄い黄緑色の下着が湯気が出そうなほど濡れていた。

「な、なにするのよ! そんな破廉恥なところ、見ないでっ!」
「俺の命令には、従う約束だろ? そのぱんつ、自分で脱ごうか」
「さ、さすがにそんな変な命令、聞かない……きゃっ!」

 なら、無理やり脱がすのみ。のしかかり、嫌がるリナを力でねじ伏せる。
 すぐに、彼女は足を広げさせられ、性器をさらすことになった。ピンク色の、鮮やかなサーモンピンクの綺麗なおまんこが、ぐじゅぐじゅに濡れている。

「レイジ様、本当に、これがせっくす、なの……?」

 観念したように、リナは抵抗を諦め、涙目で俺を見つめている。
 俺は、さっさとズボンの前を開け、ペニスをぼろんと取り出した。それを察知したリナが目を見開く。

「きゃ……それが、噂に聞く男の人の……? 大きく……ない?」
「普段は縮こまってるんだけど、可愛い女の子を見ると大きくなるんだ」
「か、可愛い……? と、とにかく、そんな破廉恥なもの、しまいなさいよ!」
「もうすぐセックスは終わりだから最後までやらないとな。リナのここに、小さな穴があるだろ?」
「そ、そんなところ、見ないでっ! レイジ様のばかぁっ!」
「ここに、俺のちんぽを突っ込むんだ。あ、ちんぽっていうのはこの棒な」
「嘘……そんなわけない! だって、そんなおっきいの、この小さい穴に入るわけないじゃない!」
「それが入っちゃうんだよな。いくよ、リナ」
「え、ちょっ……んあああぁ! 痛ぁっ!」

 ついに俺は、童貞を卒業した! リナの中に、ペニスが食い込んでいく。
 とろとろに柔らかい膣が、きゅうっと締め付けてくる。愛液まみれのぬるぬるした感触は、初めて味わうものだった。
(やべ……超気持ちいい! ちんこ溶けそう!)
 ついさっきまで包茎だった俺のペニスが、あまりの快感に悲鳴をあげる。今にも射精してしまいそう。
 ペニスをさらに押し込むと、ぷちぷちと中を裂いていく感触がある。リナの処女が散っていくのがつぶさにわかる。
 
「レイジ様が……わたしの中に……あぐぅ……!」

 ぎゅっと閉じたまぶたから涙をこぼすリナ。その膣からは、うっすら血が滲んでいた。
 一番奥まで押しこんで、ぴったりと腰を密着させる。リナはひくり、ひくりと震える太ももで、俺のわき腹を挟んでくる。

「ひぐっ……お願い……痛いの……動かさないで!」
「う……俺も、もう動かせねえ……限界!」
「え? きゃっ! どくん、どくんってしてる!」

(ああ……もう出ちまった)
 初々しいリナが可愛すぎて、処女おまんこが気持ちよすぎて、俺はすぐに射精してしまったのだった。
 意識が遠くなるほどの快感に、俺は背中を波打たせる。

「なにこれ……あったかい……? なにか、出てるの!?」
「ああ、これでセックスはおしまいだ」
「よかった……終わったのね」

 リナがほっと一息ついているとき、俺はベッドが青白く発光しているのに気がついていた。
(なんだ?)
 その光はあっという間に俺とリナを包み、俺はエネルギーの流入を感じた。
 ペニスの砲身や玉袋が熱くなり、再び精液が充填されるとともに、リナの破瓜の血が止まっている。

「うおっ! 回復した! そうか、このベッドはある程度体力が消耗すると回復魔法が発動する仕組みなのか」
「嘘!? なんか、もう痛くないんだけど……」
「よし、リナ。赤ちゃんっていうのは、そう簡単にできないんだ。もう一発くらい、リナの中に射精しとかないとな」
「いやあぁ! また痛くなるの!? もう痛いのはやめて、お願い!」
「ベッドがリナの膣の傷を回復してくれたし、もう痛くないんじゃないかな。赤ちゃんつくろうって言ったじゃんか、頑張れよ」
「無理ぃ、今日は、もう許して……レイジさまぁ……痛いのはいやぁ!」

 姫らしく自信に満ちた態度はどこへやら、泣き顔で懇願してくるリナ。
 しかしやめようという気はさらさら起こらず、むしろ興奮してきた。
 これから思いきり腰を振ろうとしていた時だった。

「リナっ、ただいまっ! たくさん薬草採って……きた……よ?」

 回復ポイントのドアが開いていた。
 戸口に立って薬草の入ったカゴを抱えたアリスは、笑顔のまま固まっていた。

「な、何してるの? 二人とも」

 まずいなと思って、とっさにリナの胸に手を触れた。
 んんっと喘ぐリナから魔力を強引に吸い取り、先程覚えた魔法をアリスに唱える。

「巻き付け!」
「わっ! きゃああ!」

 アリスを視界を覆い尽くすほど大量の蔦が襲い、そのカラダをぐるぐる巻きにする。
 触手のようにうごめく蔓は、みるみるうちに部屋一杯に広がっていく。
(使えるな、この魔法)
 同時に蔓でドアノブをガッチリ固定し、外から誰も入れないようにした。これ以上邪魔に入られるとめんどくさい。俺はエッチに熱中したいのだ。
 数えきれないほどの量の蔓に揉まれながら引き寄せられたアリスは、身動きがとれないままリナの隣に倒れ込む。

「きゃあっ、やめて! レイジ様、なんでこんなこと!? リナも、寝てないで助けてよっ!」
「ごめん……わたし、腰がぬけちゃって、動けなくて……」
「そんな……レイジ様、一体どうしちゃったの!?」

 目の前で、二人の魔女姿の美少女が、俺を恐怖の混じった目線で見つめていた。
(二人のおまんこ、味比べしてみるか)
 初エッチでこんなこと出来るなんて、最高だぜ!
(つづく)






<妹姫5話>蔓触手3Pと特殊なスキル




 大量の蔓が所狭しとひしめく部屋。俺はさっそく蔓を操って楽しんでいた。

「や、やめてよぉっ! ぶらさげないでぇ!」
「やめて……レイジ様! アリスが嫌がってるじゃない!」

 アリスは全身を蔓に巻き付かれ、上下反対向きに宙にぶらさげられていた。
 抜け出そうともがいているが、余計に蔓が絡まっていく悪循環。
 蔓の締め付けで、彼女の胸のふくらみが際立っている。

「アリスって何カップ?」
「へ? そ、そんなこと男の子には教えないよっ!」
「教えてくれたら蔓、ほどいてやるよ」
「ほんとう!? 嘘じゃない?」
「ああ」
「レイジ様、意外とエッチな人なんだね……。い、Eカップ……です……」

 頬を染めて、恥ずかしそうに言うアリス。

「でも本当かどうか確かめないと意味なくね」
「え……そ、そんな!」
「ひとまず、リナは休憩しながらそこで見ててね」
「え……あんっ」

 俺の意思に従い、リナの足や腕にもぎっちりと蔓が巻き付き、逃げられないようベッドに束縛される。

「自分の魔力で出来た蔓に縛られるなんて……最悪だわ」
「さ、アリス。脱がすよ」
「え、え? きゃぁっ!」

 触手をうまく使って、アリスの服のリボンを解いていく。
 前をはだけさせると……真っ白なふくらみが、たゆんとまろびでた。リナも同情する視線でそれを見ていた。

「二人とも、見ないでよぉ……」
「うん、確かにEカップくらいありそう。リナよりちょっとおおきいな!」
「なによ……わたしをからかってるの!?」
「大丈夫、リナのおっぱいも綺麗だよ」
「……ばか。許さないんだから」

 リナは赤くなって、俺を睨んでくる。
 無視して、俺はさっそく両手のひらでアリスの乳を根本から、すくいあげるように揉んでみる。もちもちとした感触。

「アリスの胸も、柔らかくていい触り心地だな……」
「え、いやぁ……触らないで! んああ……!」

 ぶらさげられたまま、切なげな目線を送ってくる。
 アリスのふとももが、きゅっと内股になる。今頃女の子の部分から、愛液がじゅんと分泌され始めたところだろうか。

「はぁ……乳首、だめぇ……あん……」
「アリスが、あんなに変な声……出しちゃってる……」
「わ、わたし、こんなの知らないよぉ……んっ! 身体が、勝手に! ……んあぁ」

 ぴくぴくと乳首を立たせながら、なおも甘くよがり続ける。
 俺も我慢できなくなってきた。

「それじゃあ、そろそろアリスにもセックスを教えてあげよう」
「せっくす?」
「レイジ様、ダメ! あんな痛い思いするのは、わたしだけで十分よ!」
「そのせっくす、って、痛いの? レイジ様?」
「最初だけな。リナ、お前は後でもう一回可愛がってあげるから、友達の処女喪失、しっかり見とけよ」
「やめてぇ! レイジ様ぁ!」

 リナは懇願するが、アリスはこれから何が起こるのかわかっていない様子で、ただ怖々と、俺を見つめている。

「レイジ様、しょじょって、なに?」
「アリスが純潔な証だよ。今から俺に奪われるんだけどね」
「え……?」

 触手を操ってアリスの体を操り、空中でまんぐり返しの状態にしてしまう。めくれたスカートから、割れ目の部分が濡れた下着が俺の目の前にさらされる。
 アリスは頑張って抵抗しているが、蔓触手は彼女の太ももをしっかりホールドしている。

「や、やだぁ! こんなはしたない格好させないでっ!」
「へえ、アリスはオレンジ色か。可愛い下着じゃん」
「恥ずかしい……うぅ……」
「今脱がせてあげるからね」
「ひゃっ! だめだめ、見ないでぇ!」

 俺は念じて触手を操る。アリスのお尻から下着をするすると抜き去った。ふくらはぎのあたりにひっかけておく。
 触手でアリスの股をしっかり広げさせると、おまんこからアナルまで、女の子の大切なところが隈なくさらされる。ほんのり、いやらしい匂いが漂う。
 アリスの性器は、リナと同じく綺麗で色鮮やかな桃色。ただし形はリナと少し違った。
(女の子一人一人、違うんだな)

「ひゃうぅ……」

 アリスは恥ずかしすぎて言葉も発せないようで、ただ俺を泣きそうな瞳で見つめている。
 ヒクヒク震え、愛液を垂らしているおまんこを見ていると、ペニスがガチガチに固くなる。

「他にも色々やりたいけど、とりあえず子作りセックスしようか」
「こ、こづくり……ん、んあああああっ!?」

 一気に、ズドンとペニスをアリスの中にぶちこんだ。中ごろまではいったところで、さらに力をいれてペニスを押し込み、肉襞をぶちぶちと裂いていく。

「い、痛あああぁいっ! あ、あ、ああああ!」

 アリスの絶叫が、小屋の中にこだまする。
 一方、一番奥まで挿入した俺は、夢のような快感を感じていた。
(リナとちょっと違う感触……気持ちよすぎる……)
 ペニス全体を、ぬめるヒダヒダが締め付けてくるのだ。たまらない。
 俺は、まぶたを濡らし、性器から血を滲ませるアリスに、優しく声をかける。

「アリス、大丈夫だ。すぐ、このベッドが回復魔法を発動してくれる」
「ひぐ、ううぅ……ほんとうに……?」
「見てればわかる」
 
 俺の言葉通り、次第に青白い光が辺りを満たす。
 それが消えた時には、アリスの性器から流れる血がすっかり止まっていた。

「あれ……もう、痛くない……?」
「じゃあ、さっそく絆を深めようぜ」
「え……うあああっ!?」

 俺はずちゅっとアリスの中をかきまわした。またすぐに射精しそうになるのをぐっとこらえる。

「あん、あん……え、なにこの感覚……はあぁ!」

 アリスは甘く喘ぎ始める。腰を振りまくりたいのを抑えて、言葉をかける。

「どう? アリスは何か感じてる?」
「な、なにこれ……? 体の中で、動いてる……わたし、こんな感覚、初めて……んあぁ!」

 再び腰を揺すると、アリスはきゅっと柔らかい膣を締めてきた。摩擦が強まって、素晴らしい心地。

「アリスの中、俺の動きに反応してきゅんきゅんしてるな。もう気持ちよくなってきたのかな?」
「こ、これ……んああ! そ、そんなの、わかんないよぉっ!」
「それならたっぷり教えてやるよ。男に貫かれる快感をね!」
「え、わ、ひゃあうぅ!」

 アリスの腹をがっしり掴んで、がしがしと勢いよく腰を振る。振れば振るほどペニスを誘い込むように吸い付いてくるおまんこは、絶品だった。

「やあぁっ! わたし、おかしくなってるよぉっ!? 奥までジンジン響くぅっ!」
「それが、男にハメられる快感なんだぜ」
「はめ、られる……あううぅっ?」

 俺は腰振りを続けながら触手を操り、アリスの胸をきゅっとしぼってみたり、口の中を蹂躙したりしてみる。

「っんぷ! むぐ、んんんっ……らめっ、口の中いじらないれっ変になるぅっ! おっぱいも強くしないれえっ!」

 アリスはいやだいやだと言いながら、どんどん発情した顔になっていく。
 こわごわと俺とアリスのセックスを見守っていたリナが、目を丸くして呟く。

「嘘……アリス、それ本当に気持ちいいの?」
「んるうっ! わ、わかんないけどっ! なんか、全身ざわついて、すごいの来るぅ!」
「おっと、もうイキそうなのか?」
「い、いくって何? あ、あああ、なんかくるうぅっ! ああぁっ――」

 アリスがびくんっと震えた。声も出せずに仰け反って、全身を波打たせる。足指の先までぴんと伸ばして、最後にがくりと全身から力が抜けた。

「はぁ、はぁ……あふぅ……」
「ア、アリス? 大丈夫? ねえ!? 涎垂れてるわよ!?」
「心配するな、リナ。今アリスは気持ちよすぎて動けないんだ」
「そんな……ありえな――いやぁ!」

 触手でリナも持ち上げ、空中で股を開かせる。
 俺はアリスのイキまんこから溢れる愛液とともに引き抜いたペニスを、リナの濡れっぱなしのおまんこにあてた。

「俺とアリスを見て興奮してたんだろ? ぐっちょぐちょだ」
「ち、ちがっ! レイジ様……お願い許して……わたし、さっきから何が起こってるか、全然わかんないよ……」

 困惑しきって再び泣きそうなリナ。自信にあふれた顔が、今は情けない媚び顔になっている。

「すぐにわかるさ。っと!」
「あ、あああん! レイジ様ぁっ!」

 挿入すると、リナは処女喪失の時とは少し色の違う、快感交じりの声を発した。
(にしても、たまんない感触だぜ)
 俺はリナの奥深くまでペニスを突き刺しながら、ふうと息をつく。

「どうだ、さっきと違う感覚がないか?」
「あれ……んんう、やだ、わたしまで、変な声出ちゃう!」

 ぐちゅりぐちゅり、とリナの中を蹂躙すると、甘ったるい声が、荒い呼吸とともに漏れる。

「はあ、んあ、んうう――」
「どうだ、初めて味わう、男に支配される快感は」
「うそ、なんだか、全身が熱くなって、ああぁなんかこれ、ダメぇっ!」
「気持ちいいんだろ? それを認めたら、もっと気持ちよくしてやろうか?」
「もっと、気持ちよく……? い、いやよっ! 気持ちよくなんてないっ! 抜いて!」
「いつまでそう言ってられるかな」
「んひゃっ! いきなりじゅぶじゅぶかきまわすなぁっ! あ、あんっ」
「ほーら、もっと強くしてやろうか?」
「つ、強くしてくれるの……? って、ダメよダメ! 認めないわ!」
「ったく、こっちが我慢できなくなってきただろうが!」
「ああぁぁっ! 激しいっ!」

 思い切りフィニッシュしようと、腰振りを加速する。
 触手がリナの乳首や口内を弄び、腋から足の根元まで絡みつく。リナは反発しながらも媚びるような喘ぎ声をあげてしまい、わけもわからずどんどん高まっていくしかなかった。

「ん、んぷぅっ、あふぅ、ああん、んぶうっ、やあぁっ……触手、使わないれぇっ!」
「リナもイキそうだろう? イクときはちゃんとそう言えよ」
「わ、わたし……何これ、あああぁっ、レイジ様ぁっ!」
「出すぞ、リナ!」
「ああ、もう嫌ぁ! イク、イクイクイクぅ!」

 俺が果てると同時にリナは、はしたなく叫びながら背を弓なりに反らして、アクメを迎えた。表情がすっかりとろけてしまっている。姫の誇りも威厳も忘れた、メスの顔だった。

「あー……あぁ……レイジ様ぁ」

 虚ろな瞳で見つめてくるリナ。俺を呼ぶ声はすっかり甘えるような響き。

「どうだ、俺との絆、深まっただろ?」
「せっくすって、すごい……レイジ様のこと疑って、ごめんなさい……」
「もっともっとセックスすれば、ますます絆が深まるんだ。俺はもう十分だと思うけど、リナがしたいならまだ続けてやってもいいぞ」
「……もう一回、してくれるの?」
「ちゃんとお願いすれば、してやるけど」

 リナは発情した媚び顔で、簡単に俺に屈服したのだった。

「レイジ様ぁ……もう一回、リナとセックスしてください……」

***

「あれれ? 開かないのです」

 その時、ノエルは回復ポイントの前で立ち往生していた。
 どうしようかと考えていると、中から聞こえてきた音に、彼女は飛び上がった。

「レイジ様ぁ、気持ちいいよぉ! すごいっ!」
「ふああ、すごいわっ! もっとしてっ! もっとぉ、あうう!」

 自分の主人であるアリスと友達のリナが、聞いたこともないような甘ったるい声で喘いでいるのだ。
 ノエルには何が起こっているのかさっぱりわからなかったし、推測できるほどの頭もなかった。

「ふ、二人とも!? 大丈夫なのですか!? 今行くのです!」

 ドアを破壊してみようと槍を構えるが、そこでアリスの媚びるような悲鳴が聞こえる。

「ダメぇ! もうダメなのぉ、それ以上来ないでぇ!」
「そんな、どうしてなのですか? わたしはアリスの姫騎士です! お役に立ちたいのです!」
「これ以上来たら、またイっちゃうからぁっ!」
「い、いっちゃう? リナさん?」

 王家では、性に関する教育を行わないのが通例だった。ましてやこの世界の文化レベルは低い。ネットも雑誌もないから、エロについて知るには、いわゆる「淫書」と呼ばれる書物を学園の図書館の禁書の棚からこっそり持ち出す以外になかった。
 そもそも「淫書」の存在すら知らないノエルにとっては、別次元の不思議現象にしか思えないのだった。

「わかったのです……ここで、お待ちするのです」

 ノエルは騎士らしく、主人の言いつけを忠実に守ることにした。

***

 一方その時、城のほうでは異変が観察されていた。

「なんだ……あの飛影は?」

 ヘーゼルは、例の塔の最上階の自室から、空を見ていた。
 仕事の手を休め、ほっと一息つくだけのはずだった。なのに、空に黒い一つの怪しげな影を見つけしまったことで散らかった部屋から双眼鏡を探し出さなくてはならなくなったのだ。
 レンズからその影を見た時、ヘーゼルの背筋に冷たいものが走った。

「あれは……龍《ドラゴン》……?」

 城に向かって飛来するのは、ダンジョン最深部に現れると伝承され、その姿が古代文献に描かれている伝説の黒龍にしか見えなかった。
(起きてはならないことが起きている……)
 ヘーゼルは冷静ながらも手早く棚から手鏡を取り出す。それはただの手鏡ではなく、魔力で新たな役目を付与された鏡だった。
 鏡には、ヘーゼルの顔は映っていなく、もやがかかったようになっている。

「マカデミア! 聞こえるか」

 呼びかけると次第に鏡のもやはとれ、そこに赤髪を一つに束ねた女の顔が映し出される。どこか不良めいた雰囲気がある女だ。
 その顔は人懐こい笑みを浮かべてふざけた口調で言う。

「研究部屋にこもりきりのヘーゼル教授どのか。そんな深刻な顔をして、何かあったのかい?」
「まずい。龍が城に向かってきている可能性がある。姫たちの戦力を集めて」

 眉をひそめる赤髪の女。

「そんな……龍なんて、本気で言ってるのか?」
「わたしがそういうくだらない嘘をつくと思うか」
「……ヘーゼルが言うなら事実のようだな。了解した」

 一転、鋭い表情になったマカデミアと呼ばれた女は鏡から姿を消した。

***

「ふう、ベッドがいくらでも精力を回復してくれるせいで、ついやりすぎちまったか」

 眼下には、精液を体内にも体外にもぶっかけられたまま、発情顔で仲良くヒクヒク震える二人の美少女魔法使いたちがいた。
 リナを魔力源とした蔓触手は、必要がなくなったので消した。

「レイジ様の白い液体が……わたしの体に、こんなにたくさん……」
「すっかり俺の女になっちまったな、リナは」
「わたしが……レイジ様の女……?」
「嬉しいか?」
「一番にレイジ様にセックスを教えてもらえるなんて、わたしは光栄な姫……なのかもね」

 リナはぼんやりと、俺に微笑んだ。

「やっぱりリナは俺に惚れてるんだね」
「惚れて……わ、悪いかしら」

 リナが恥ずかしそうに言う仕草が、たまらなく可愛い。
 ところで、気になることがある。

「アリス? さっきから全然喋ってないけど大丈夫か?」
「……ん、なーに、レイジ様? わたしも……レイジ様とのセックス、気持ちよかったよ」

 アリスは微笑みつつも、どこかぐったりとしている。

「調子悪いのか?」
「うーん……ちょっと、身体が変な感じで。体力は満タンなのに……おかしいな」
「ま、リナもアリスもセックス初体験して、女として生まれ変わったようなもんだからな。ちょっと身体に不調を感じるのも自然だろ」
「うん……」

 アリスは、寝返りを打って俺に背を向けた。

「さて、さすがに時間がまずいことになってそうだな。そろそろ帰ろう」

 時計はないかと、アリスの荷物をあさる。
 例の逆さ砂時計が出てきた。この世界の時計の役割を果たすのはこの道具らしい。下部分には、ほとんど砂が残っていない。
(これ、どういう仕組みなんだろう)
 何か設定された時間制限があると、それに合わせて砂が減っていく魔法道具なんじゃないか、と推測した。それなら、もうすぐダンジョン実習時間は終わりか。
 他にも何かないか探してみる。
 虫めがねが出てきた。アナライザーとか言ってたか。試しにアリスに向けてみる。

【LV】10
【HP】100
【EXP】15
【STR】23
【DEF】18
【MST】57
【MDF】53
【SPD】25
【SKI】?

 レンズの上でさらさらと黒い粒子のようなものが渦巻いて、そのように文字が浮き上がってきた。
(HPにEXPか……マジでゲームと同じだな)
 MSTはMAGIC STRENGTHを略したもので、魔法攻撃力。MDFはMAGIC DEFENCEの略で魔法防御力だと思われる。SPDはSPEEDかな。
 
「リナ、俺にアナライザーを向けて、俺のステータスを教えてくれないか」
「ん……いいわよ」

 乱れた髪を直しながら起き上がって、何気なくレンズを覗く。
 その目が、驚愕に見開かれた。

「何……これ!? レイジ様って……!」
「あ? なんだよ」
「やっぱり、凄い人なのね……読み上げるね」
 
【LV】150
【HP】1050
【EXP】0
【STR】103
【DEF】105
【MST】251
【MDF】204
【SPD】154
【SKI】御影の腕

 リナは、そう言った。数字ばかりでわかりにくいけど、リナより全然高いことはわかる。
 もともと細マッチョな身体だったから、攻撃力より魔法攻撃力のほうが高いのは予想していた。
 経験値がゼロなことから、レベルがカンストしていることも読み取れた。

「レイジ様は、この学園に来るまでずっと帝都で修行を積んでいたって聞くけど、どうやら本当みたいね」
「ま、まあな」

 最強ステータスのまま肉体を預けてくれたスミレに感謝だ。

「御影の腕……皇族秘伝の超レアなスキルじゃない。使って見せてくれない?」
「え、いや、今俺記憶喪失だし。どういうスキルなんだ?」
「霊を、人間から取り出せるのよ」
「マジで? すごいけどさ、取り出しちゃって大丈夫なの?」
「大丈夫らしいわよ。死なない限り、霊と肉体は完全には切り離せないって授業で習ったわ」
「取り出しても戦闘で使えなくないか?」
「霊が秘めた魔力を直接使えるから、普通の魔法とは比べものにならないほど強力な魔法を放てる……確かそうだったかしら」
「ほう……強そうじゃん」
「試しにやってみたら? わたしの霊、使っていいわよ」
 
 リナは目をつぶって、俺が何かするのを待っている。
(霊……魔力を吸い出す時みたいに、触ればいいのか?)
 胸に触れて、念を込めてみる。すると――

「んっ――!」
「うおっ」

 指が、リナの身体の青白く輝く部分にめり込んでいた。
 手ごたえを感じた。腕を引き抜くと、リナの中からなにか眩く光る青白いものが出てくる。
 それを取り出されたリナはくたりと眠るようにベッドに倒れた。

「リナ? ……おい、大丈夫か?」
「……」

 返事はないが息はしている。身動き一つしないが、死んでいるわけではなさそう。
 青白いものは、持っているだけで何か秘めたる力を感じさせた。
(リナの霊、取り出しちゃったのか……すげえな)
 途方に暮れていると、突然鐘が鳴り響く重い音が耳に入った。

「なんだ、いきなり。びっくりさせるなよ」

 遠く、学園の方角からだった。
 今朝と違うのは、激しく打ち鳴らされている点だ。なんとなく危機感をあおられた。
 とりあえずリナの霊を彼女の体に戻すと、リナはびくっと震える。そのまま起きない。
 寝ているふたりを置いて、外の様子を見ようと小屋の外に出てみる。
 ドアを開けた目の前にノエルが立っていた。

「あっレイジ様! アリスは一体……?」
「うお、びっくりした。いきなり出てくるなよ。アリスはなんともないよ、今中で寝てる」
「よかったのです……」
「それより、あの鐘の音はなんだ?」

 聞かれて、ノエルはふと緊迫した顔になった。

「あれは招集がかかっているのです……きっと何か、学園に危険が迫っているのです」

 そう言った瞬間、空が暗くなった。
 見上げると、俺たちの真上のはるか上空を、巨大な黒い生き物が飛んでいた。
 四本の手足は短く、翼が異様に大きい。
 俺たちは気付かれていないようで、その生き物は素通りして行った。まっすぐ、学園の方角へと向かっていく。

「なんだ……今の」
「あんな魔物……見たこともないのです」

 ノエルも戸惑った様子。嫌な予感がする。学園に急いで戻ることにした。
(つづく)







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