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グラビアアイドルが義姉になった! 涼音編<22>




 その日を境に、俺は優美さんに引け目を感じるようになった。二人きりになったときに、素直に優美さんを求められなくなった。優美さんに嫌われているわけではないのはわかっているのに。普段通り笑顔を向けてはくれるけど、ちょっとだけ距離を置かれている気がしてしまう。
 数日後、陽菜ちゃんが天辻さんの家に遊びに行ったときもそうだった。

「天辻お姉ちゃんの家、泊まってきていい?」

 陽菜ちゃんは意気揚々とそう言った。天辻さんと夜通しお喋りしてお泊り会をするらしい。基本的に女の子と遊ぶのが好きな陽菜ちゃんでも、女の子の家に泊まるのは珍しいから少し驚いたけど、陽菜ちゃんが楽しそうにそのことを話す様子から、天辻さんと相当仲良くなっていることが察せられた。

「天辻お姉ちゃんがわたしの家に遊びに来てくれたから、今度はわたしが遊びに行くの!」
「いいわよ。わたしは仕事があるから、一緒に行けないの。楽しんできてね」

 そうして、陽菜ちゃんは笑顔で出かけて行った。
 優美さんと俺が二人きりで過ごす時間ができたけど、なんだか空気にいつものように温かさのようなものがなかった。

「陽菜もすっかり涼音ちゃんになついちゃったわね。なんだかちょっとくやしいかも。前までわたしにばっかり甘えてくれたのに」
「……あ、そうですね」
「ちょっと寂しいかもなぁ……でも、陽菜がいなくても、直人がいるし大丈夫。ふふっ」
「……」
「直人? 今日、ちょっと調子悪い?」
「あ、そんなことないです」

 優美さんに話しかけてもらっても、なんだかうまく返せない。間違えた返答をしたら、嫌われてしまうのではないかという不安でいっぱいになって、沈黙してしまう。居心地が悪くなってしまったのか、優美さんは自分の部屋に戻ってしまった。
 俺は居間で一人考える。どうすればいいのだろうか?
 様々なこれまでの出来事が回想される。姉妹と三人で楽しんでいた時間。天辻さんが現れて、少しずつ俺との距離を縮めていく。優美さんとの待合室でのエッチ。陽菜ちゃんの部屋でのエッチ。そして天辻さんの家でのエッチ……
 どこかで引き返すべき時点はあっただろうか? どこかでやり直すべき失敗はあっただろうか? こうなるのは仕方のないことではなかったのか? そして、どこかに全員で仲良くできるような抜け道はないのか……?

「急に外泊したら心配するから、これからは、やめてね?」

 その言葉を発した時の優美さんの、俺を疑う表情。
 天辻さんとお互いに気持ちいいところを触りあって、なめあって、エッチして……すべて、記憶は鮮明に頭の中に残っている。思い出すだけで興奮する。でも今は、思い出すと同時に、少しだけ罪悪感を感じるようになった。
 そういう関係になった発端はなにげのない出来心だった。天辻さんの体を触らせてもらって、少しずつ色々なことをしてしまって、いつのまにか優美さんに秘密でエッチをする仲になってしまった。男として、あんな状況で我慢できるわけがなかった。スタイル抜群の天辻さんの下着姿が頭をよぎる。
 天辻さんは、もしかしたら最初から俺のことを気に入っていて、誘惑するつもりだったのかもしれない。そのつもりで俺の家にやってきて、優美さんや陽菜ちゃんがいない隙を狙って、俺に甘い罠をしかける。たぶん、初めからそういうつもりだったんだろう。今となってはわかりきったことだけど、それがわかっても俺は天辻さんを嫌いにはなれなかった。
 いわゆる小悪魔みたいに、ちょっかいを出して気を惹いて、好意を向けさせる。自分からは下手に出ず、あくまで手玉に取るように引き寄せる。天辻さんのそんなやり方はずるいけど、俺はそれに魅力を感じていた。
 このままでは優美さんたちとの関係に亀裂が入るのは時間の問題な気がした。でも一方で、不思議となんとかなる気もしてきていた。
 俺は、天辻さんとエッチするようになっても、優美さんのことは大好きだったし、陽菜ちゃんのことも大好きだった。姉妹のことがどうでもよくなったわけではなくて、ただ、同じくらい天辻さんのことも好きになっただけだ。
 同じように、優美さんや陽菜ちゃんだって、天辻さんと俺がエッチするのを知ったうえで、俺のことを好きでいてくれるんじゃないか。そして天辻さんとの仲も今のまま保ってくれるんじゃないか……そんな期待が、なんとなく、心の奥のほうに残っていた。

 決定的な出来事は、思ったよりすぐに起きた。

……

 その日の天辻さんは、少し様子がおかしかった。
 最初は何気ないことだった。天辻さんが、俺たちの家に泊まりに来た。ちょうど優美さんのお母さんと父さんは出かけていたから、四人きりだ。

「こんばんはー! お邪魔します」

 優美さんは、それを歓迎したが、天辻さんもさすがに罪悪感を感じていたのか、いつもの調子でなかった。俺と目が合うと、いつも通りなら目配せでもしてクスっと笑いそうだったのに、今日はちょっと困ったような表情を見せた。

「直人とテーブルで待っててね。もうすぐ夜ご飯できるから」
「はーい、先輩。あれ、陽菜ちゃんは?」
「今、お風呂入ってるわよ」

 天辻さんはなんだか陽菜ちゃんが気になる様子だった。ネグリジェ姿の陽菜ちゃんが脱衣所から出てくると、笑顔でおしゃべりし始める。この間のお泊りで、以前よりずっと距離感が縮まっているように感じた。
 少しして、エプロンを着た優美さんが、いい匂いを漂わせながらキッチンからお手製料理を運んできてくれた。

「おいしそー! ねえ、先輩はなんでこんなに上手に作れるんですか? わたしは料理本読みながらでも全然これに敵わないよ」
「子供のとき、お母さんが料理してるところ、ずっと見てたの。そうだ、陽菜もお料理上手なんだから、たまにはわたしの代わりに作ってよね」
「えー、わたしはいいよ。お姉ちゃんのほうが上手だから。お姉ちゃんと一緒にだったらいいけど」
「それならわたしも混ぜてお料理会しましょうよ、先輩。あ! あとそういえば、この間の旅行の話、優美先輩は来れそうですか?」
「ごめんね……その日、やっぱり撮影のお仕事はいっちゃった」
「それじゃあ、俺と天辻さんと、陽菜ちゃんの三人?」
「そうだね。残念だけど、お兄ちゃんとお姉ちゃんと……たのしみ」

 和気藹々とお喋りは続いていた。
 問題はそのあとだった。その日は優美さんと陽菜ちゃんが同時に風呂に入ることはなく、これまでのように天辻さんと二人になるタイミングはなかった。だからそのまま何もないだろうと想像していたけど、天辻さんの悪戯心はその程度ではなかった。ご飯を食べ終わりごろごろしながらテレビを見たりふざけあっているうちに夜も遅くなり、姉妹と天辻さんは一緒に寝室へ向かった。俺も一人で部屋に戻り、布団をかぶって眠ろうとしていた。
 うとうとしかけていたころだった。

「弟くーん、起きてるー?」

 突然、小さいこそこそ声が聞こえた。すぐそばからだった。
 体を起こそうとすると、上に何かがいて起き上がれなかった。驚いて布団をよけると、すぐそばに女の子がいた。

「こういうのって、なんて言うか知ってる? ……夜這い、だよ?」

 天辻さんだった。あまりにも唐突すぎて混乱した。これまでずっとバレないように努力してきたのに、優美さんと同じ屋根の下で夜這いしてくるなんて、危険すぎる。
 どうしてこんなに積極的に仕掛けてきたんだろう?
 そんなことを考えながらも、やっぱり目の前の天辻さんの魅力に悩殺されていた。完璧な体形、なかなかお目にかかれないくらいの巨乳、整った顔かたち、さらさらのショートヘア……目が釘付けにならないほうがおかしい。
 ラフな寝間着のTシャツと短いパンツを身に着けていても、フェロモンが漂ってくるような色気。お風呂上りのいい匂いがして、くらっとした。

「え……どうして……?」
「いいじゃん。ちょっとイチャイチャしよ」

 天辻さんはそのまま俺の上に覆いかぶさるように抱き着いてきた。触れるとやわらかくて温かい体。そのうちでも一番やわらかい、豊満なおっぱいが胸板の上に押し付けられる。そんなことをされたら我慢できなかった。もっと近くに感じたくなって、つい背中に手をまわして、天辻さんを抱いてしまう。目の前に天辻さんの顔が来て、囁かれる。

「ふふ……ちゅーしよ」

 俺が何かを言う前に、天辻さんのほうから唇を触れ合わせてきた。柔らかくてつるつるした唇の感触。俺の唇をはむはむと甘噛みしていたかと思うと、舌が出てきて俺の口の中をぺろぺろと舐めた。歯と歯茎にそって、舌が動き回る。俺も呼応して舌を絡めて、いやらしい音を立てながら唾液を交換する。

「んふ……んちゅう……」

 ぬるぬるした感触が気持ちよくて夢中になってキスをしていると、ふいにズボンの中に手のひらが滑り込んできて、優しく股間を撫でられる。勃ち上がってきていた肉棒がぐんぐん固くなって、臨戦態勢になる。

「カチカチだ……えっちしたくなってきた?」
「でも……こんなところ、優美さんに見つかったら……」
「もっと気持ちよくなろ? 弟君がしたいなら、わたしは何回でもおまんこずぶずぶされてもいいよ?」

 そんな卑猥なことを囁いて、いやらしく微笑む天辻さん。しゅこしゅこと固くなった肉棒をしごきはじめると、俺の中の自制心が、どんどんとろけていくのがわかる。

「ねえ、いいじゃん? 気持ちいいことしようよ~」
「あ、天辻さん……そこ……! で、でも、やっぱり、優美さんが……」
「わたしと二人きりのときは、あんなに積極的だったのに……もう、もっと男らしいところ見せてよ」

 天辻さんは不満そうな顔をする。急に自分の体を移動して、俺の股間に顔を寄せた。すでに露出されてギンギンに硬くなっている肉棒に、すぐにむしゃぶりついた。亀頭に温かいトロトロの唾液がまとわりついて、舌が這い回る。ぺちゃぺちゃ、と卑猥な音が鳴る。手のひらとは全く違う快感が来て、抵抗する気が失せていく。

「んじゅ……じゅる……んふっ」

 天辻さんは肉棒の根元をしごきたてながら、気持ちいいところを上手になめしゃぶる。舌が亀頭に沿って、カリ首に沿って、下品な音を立てて吸引する。どんどん快感が込み上げてきてたまらなかった。
(だめだ……こんなの気持ち良すぎて我慢できるわけない……!)
 
「じゅぶ……れろれろ……ねえ、えっちしたいって言って?」
「えっちしたい……」
「じゃ、しよっか。あはっ」

 天辻さんが服を脱ごうとした時だった。ついに起きてはいけないことが起きてしまった。部屋のドアが開いて、優美さんが入ってきたのだ。

「……あ」

 優美さんはある程度、中で何が行われているか覚悟してから入ってきたようだった。俺と天辻さんが折り重なっているのを見ても、甲高く喚いたりせずに、ただ頬を膨らませて怒った表情でこう言っただけだった。

「涼音ちゃん! やっぱりっ……! 直人から離れて!」」
「ゆ、優美先輩っ! こ、これは……違くてっ」

 鋭い声に天辻さんはびくり、と背を震わせて、しばらく言い訳しようと言葉を探していた。しかし言い逃れできないと観念した様子で俺から離れて立ち上がった。先生に叱られた生徒みたいに、足元を見つめて優美さんと目を合わせようとしない。
(まずいことになった……空気が凍り付いてる)
 優美さんはこれまで見たことがないくらい怒った様子だった。腕を組んで、天辻さんを睨み付けながらびしりと指さして言った。

「直人には、手出しちゃだめって言ったじゃない!」
「わたしだって、最初はここまでするつもりなかったんです! ちょっとちょっかい出すだけのつもりで!」
「ちょっかい出すつもりではいたわけね……! とにかく、直人はわたしと陽菜のものなんだから、勝手なことしないでっ!」
「でも、弟君も……けっこう乗り気だったし……?」

 天辻さんが言い訳じみた口調で言いながら、顔をあげて急にちょっと反抗的な目をした。まるで先生に逆らう生徒のようだ。俺にとっては迷惑この上なかった。優美さんはカチンと来たようで、唇を噛む。

「仕掛けたのは涼音ちゃんなんでしょ!? だいたい、涼音ちゃんみたいな可愛い子が誘惑したら、どんな男の子はムラムラしちゃうに決まってるじゃない!」
「そうですかぁ? 優美先輩のこと、本気で好きなんだったら、ちゃんと断るんじゃないですか~?」
「うっ……もしかして、先輩に喧嘩売ってるのかしら……どうなの、涼音ちゃん……!!」

(こ、こわい……)
 今すぐにでもつかみあいのキャットファイトが始まりそうな雰囲気だ。二人のぶつかり合う視線に、バチバチと火花が散る。俺の大好きなグラビアアイドル同士の口喧嘩なんて見たくなかった。そんなことを考えながら傍観していると、急に俺にも優美さんから鋭い視線が飛んできた。

「直人もなんだからね! いくら可愛い涼音ちゃんに誘惑されたからって……!」
「ご、ごめんなさい……つい……」
「ついってどういうことよ! グラビアアイドルだったら、誰でもいいとか思ってるんじゃないでしょうね!?」
「違います! 俺は優美さんが一番です! 優美さんがいないとダメです!」
「えー? 弟君、ほんとはわたしのことも好きなんでしょ~? わたしともえっちしたいんでしょ~?」
「天辻さんももちろん、好きですけど……でも、それとこれとは別で……!」
「な~お~と~!」
「お、怒らないでください優美姉さん! 優美さんのことも、天辻さんのことも好きで……」
「わたしの家でこの間みたいにエッチもしたいけど、優美先輩とエッチするのもやめたくないってことかぁ。弟君、欲張りだね~」
「あぁっ! やっぱりこの間も、涼音ちゃん家に泊まってたのねっ! もう……!」
「その時も最初はそんなつもりじゃなくて……!」
「うそ~! ほんとはわたしに誘われるの期待してたんじゃな~い?」
「それは……!」
「もういい……これ以上聞きたくないっ! 直人、来てっ!」

 優美さんはついにぷいっと視線を反らして、天辻さんに付け入るスキを与えず俺の腕をつかんで引っ張って立たせた。そのまま天辻さんを置いて俺を部屋から連れていくつもりみたいだった。

「直人は渡さないからねっ!」
「それはわたしのセリフです、先輩っ! いいところだったのに――」
「――明日になったら、すぐ出てってね、涼音ちゃんっ!」

 天辻さんを遮ってそう言い残して、その場を去った。俺を自分の寝室に連れて行ってくれた。

「優美姉さん、ごめんなさい……」
「……もう。陽菜には黙っておいてあげるわ」

 優美さんはそう言ったきり、話しかけてくれなかった。ぐっすり眠っている陽菜ちゃんの隣に寝そべって、俺に背を向けて布団にくるまる。俺は途方にくれながら優美さんの隣に寝そべった。
(どうしよう……優美さんに嫌われちゃったな……)
 目の前が真っ暗になったような気分だった。終わりだと思った。
 
 そう思っていた。まったくの勘違いだった。

 まさか翌朝、優美さんと陽菜ちゃんが俺の肉棒を舐めしゃぶって、たっぷり気持ちよくしてくれるだなんて、俺は本当に予想すらしていなかった……!
(つづく)







 
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