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<ふたなり寮>ACT1

長編を予定しています! ちまちま更新していきます。
たっぷりふたなりの魅力をお楽しみください!




「お姉ちゃん、おーきーて」

 ユリカの朝は、いつもその一声から始まる。
 妹のカナが、起こしに来たのだ。

「おーきーて、ってばっ」
「うるっさいなー、カナはー」

 ユリカは眠気に勝てず、布団をかき寄せる。
 カナの声は、鈴が凛と鳴るような、澄んだ響きを持っていた。かなり贅沢な寝覚ましだが、ユリカ本人は別にそうとは思っていない。
 カナに布団の上から馬乗りされ、ぱし、ぱしと布団ごとはたかれて、やっと音をあげた。

「何よ~もう少し寝かしてくれてもいいじゃんっ」

 うんざり顔で、ユリカはむっくりと身体を起こす。自然と、近距離で対面することになった。
 ユリカとカナ、姉妹二人揃って、いわゆる美少女だ。
 ただ、ユリカはだらしなく寝坊しているのに比べて、カナは家を出る準備が整っている。

(相変わらず、模範的で可愛げがないんだからっ)

 ツインテールの髪型が、ばっちり決まっている。
 中学校の制服を着こなしていた。女子たちの間ではデザインが大人っぽく、可愛いことで有名な、清楚なセーラー服だ。
 そんな制服に不釣り合いなのが、その胸だった。女子高生でもほとんどいないくらいのサイズで、色気を漂わせている。これまで男子生徒たちの視線を集め続け、これからもそうなることが確かだった。
 だが、姉のユリカはほとんど気にしていなかった。せいぜい、姉である自分より大きいサイズにむかついて、時々ちょっかいをだすくらいだ。

「おはよ、おねーちゃん。髪ぼさぼさだよー。ちゃんと髪結んで寝ないからー」

 ユリカは、妹に比べてだらしない性格をしていた。
 胸のあたりまで、ストレートの髪を伸ばしている。長いと面倒なので、切ってしまってもいいと思っていた。
 まるで子供の世話をする母親のように、カナはその髪を整える。カナは中学二年生、ユリカは高校一年生だというのに、傍から見たら誰もそうは思わないだろう。
 ユリカはまだ寝ぼけ眼で、妹の優しさに全くありがたみを感じていない。

「後で自分でやるってば……カナは」
「日曜日じゃないんだよー?」
「春休みでしょ? もーすこし寝かせて」
「何言ってるの、おねーちゃん。今日は始業式、おねーちゃんの記念すべき、紫蘭学園初登校日じゃんっ」
「え……うそっ? 今日って、えぇっ?」

 ユリカはカレンダーを二度見する。電波時計の日付と見比べたら、妹が正しいことが明らかだった。
 額に手を当てて、ため息をつく。

(わたしったら……ほんとにずぼら)

「カナは先に学校行ってていいよ。もう始業式は済んで、とっくに授業始まってるんでしょ?」
「おねーちゃん、わかってないなー。わたし、おねーちゃんの新しい制服姿がみたいの。紫蘭学園の制服が」
「そんなの、制服が届いた日に見せたじゃん」
「だって凄く似合って、モデルさんみたいなんだもん、おねーちゃんっ」

 カナはユリカに抱き着いて、甘えた。ユリカも姉らしく、ふふっと笑って抱き返している。
(こーゆうところはやっぱり、可愛いんだから)
 姉妹でじゃれあっていると、突然インターホンが鳴った。

「ユリカさん、いますかー」
「友達のキョーコとシオリです」
「あっ、迎えに来ちゃった。急がないとっ」

 ユリカは、パジャマを脱ぎ散らかして、新しい制服に身体を通す。

 本当に、何気のない日常だった。それが思いもよらぬ形で崩れだすとは、ユリカは全く知る由もなかった。

◇◆◇◆◇

「わー、ユリカ、美少女だー」
「素材がいい上に、可愛い服着たら、最強」

 先程まで乱れっぱなしの服装だったユリカは、髪を整え、紫蘭高校の制服を身に着け見違えていた。
 
 化粧などしなくても、若々しい少女の肉体は、すべすべと滑らかだ。短めのチェックのスカートから覗く太ももも、傷一つなく、適度に肉がついている。
 全体の印象として、道行く男どもが、ちらちらと目をやるほどの美少女だった。

「そんなー、褒めても何も出ないってばー。キョーコもシオリも、可愛いって」

 キョーコはとシオリは、ユリカの親友だった。中学生のときからずっと同じクラスで、ずっと一緒にお喋りして、遊んできた。そして同じ部屋で勉強して、同じ高校、紫蘭学園に入学することになった。

 キョーコは、流行のファッションやアイテムが好きな、ごく普通な女子高生だ。胸の大きさもそこそこで、髪も肩にかかるくらい。ユリカに負けず劣らず美少女で、当たり前のように彼氏がいた。
 ユリカはよくその彼氏の話を聞かされている。ユリカは一度も男と付き合ったことが無い乙女なので、興味津々で耳を傾けていた。

 一方シオリは、見た目からなんとなくおとなしそうな雰囲気が出ている女の子だ。髪はショートで、胸はカナと同じくらい大きい。こっちも美少女で、小動物的な可愛さが、中学クラスで、男子生徒たちの人気を買っていた。
 小説・漫画に限らず、よく本を読んでいて、家の本棚はいっぱいになっている。インドア・内向的な女の子だ。ぼそっと、呟くように話すのがそれを端的に表している。

 勉強面で、キョーコとユリカはシオリに助けてもらっている面が多い。人気女子校である、紫蘭学園に合格できたのも、ほとんどそのおかげだった。

 三人とも雰囲気が違うが、全員人目を惹くくらい美少女だ。

「おねーちゃん、モデルみたいだよー。ばいばーい」

 三人が並んで歩き出すと、カナは、最後まで満面の笑顔で送り出してくれていた。

「いい妹ちゃんだねー」
「羨ましい」
「でしょー? わたしも妹がまじめすぎて、困っちゃってさー」

 ユリカは内心で幸せな気分になりながら、手をひらひら振って、得意な気分になっている。それが彼女のいつもの行動だった。すぐに調子に乗ってしまうのだ。子供のころから可愛い、可愛いと言われ、育てられた結果だった。

 数時間後には、調子に乗っていられる状況ではなくなることなど、知らなかった。

◇◆◇◆◇

(どんな女の子たちと友達になれるかな……きっとみんな品が良くてまじめなんだろうなー)

 ユリカは紫蘭学園での新しい女子校ライフを楽しみにしていた。
 なぜなら、ユリカは男子があまり好きではなかった。根本的に、綺麗で、可愛いものが大好きなのだ。カッコいいものとか、激しいものは嫌いだった。
 周りに物腰が柔らかくて、見た目が華やかな女子しかいない環境は、望むところだったのだ。

 もちろん、色恋沙汰に興味がないわけでない。しかしユリカにはキョーコとシオリという姉妹同然の親友がいて、その友達付き合いが十分楽しかったから、十分だった。

 そんな思いで紫蘭学園の校門をくぐったユリカは、気分が高揚するのを感じていた。 

「わー、なんか可愛い子、多くない? すっごい雰囲気いい!」

 試験会場として訪れてはいたが、在校生たちが生活しているのを見ると、やはり印象が違った。
 校舎は新築されたばかりで、すっきりと綺麗で、現代的で、お洒落だ。
 そして大事なのが、女の子たちがクスクス笑いながら、楽しそうにお喋りしている姿だった。なんとなく女の子らしくしおらしく、それでいて活気があった。

「うん。わたしが勧めただけのことはある」
「そりゃー、みんなちゃんと勉強してきた、ちゃんとした娘《こ》たちなんだから、身だしなみだってちゃんとしてるからねー」

 キョーコもシオリも自分と同じく、これから過ごすことになる日々を想像して、胸を膨らませているように、ユリカには見えた。
 人だかりを掻き分けて、クラス分けの掲示を見に行って、三人は抱き合った。

「みんな同じクラスだー! やったねっ!」

 そういうことで、三人一緒に、案内に従ってクラスに向かう。

「わたしたち、やっぱり縁があるね!」
「ま、別のクラスでも休み時間になったら会いに行くし、変わらないけどねー」
「わたしもそうするつもりだった」

 そのまま、三人は寄り添いながら教室の前までたどり着く。三人とも、興奮が冷めないままでいる。ユリカは貼りだされた座席表を見て言った。

「さすがに席はちょっと離れてるか……クラスで新しい友達も作らないとねー」
「ううん。三人だけでやってくのもいい」
「シオリの言う通りだって! むしろそうしたいしっ」

(こんなに仲のいい親友がいて幸せっ!)
 気分よくユリカはドアを開けて、教室に入ろうとした。と、ドアの向こう側にも教室から出ようとしていた人がいて、ぶつかりそうになってしまう。
 ユリカはバランスを崩して、その場で尻もちをついてしまった。
(つづく)






<ふたなり寮>ACT2




「いたた……」

 相手を見上げて、ユリカはふっと浮き上がるような感覚があった。
 お人形のように、綺麗な女の子だった。自分でもよくわからないまま、見惚れてしまう。
(綺麗な人……)
 その女子高生の髪は金色に輝いていた。瞳は澄んだ水色で、きらきら輝く水晶玉のようだ。
 ユリカは手を差し伸べられて、ちょっと頬が熱くなった。手をつないで、起きるのを手伝ってもらう。

「大丈夫? いきなり出てきてごめんなさい。あなた、クラスメート?」

 これまで見たことのないくらいの美少女が、自分を見つめている。ユリカはその事実に心臓の鼓動が早くなる。
 ユリカは自分に話しかけられていることが一瞬わからず、返答が少し遅れた。

「はいっ。ユリカ……と言います!」

 うふふ、とユリカは上品に笑う。どこかいい家のお嬢様なのかな、とユリカは思った。

「敬語なんて使わなくていいのに。おかしな人ね。お隣の二人は、お友達なの?」
「はいっ! こっちがキョーコで、こっちがシオリです」

 ユリカと違って、キョーコもシオリも何も感じず、よろしくね、と普通に返している。

「わたしはサヤカ。ユリカさん、これからよろしくお願いね」

 サヤカは軽く優雅に手を振って、どこかへ歩いて行ってしまった。キョーコが、未だ尻もちをついたままのユリカをからかう。

「ユリカー、何キョドッてんの? ほんと人見知りだよね。わたしたちがいなかったら、クラスでぼっちだったんじゃなーい?」
「ち、ちがうってば。そういうんじゃなくてさ……」

 お尻を払いながらユリカが口ごもっていると、シオリがマイペースに言う。

「あの人、ハーフなのかな?」
「そうじゃないの? だって髪染めるのは校則で禁止されてるって、わたし生徒手帳読んだし」
「キョーコ、染めるつもりだったの?」
「まあねー。折角高校デビューだし、そういうのもありかなって」

(キョーコが髪染めたら、ギャルになっちゃいそう)
 ユリカはそう思って、ひとりクスクス笑う。キョーコはそんな一面を持っていた。

「ユリカ、何笑ってんのー」
「ごめんごめん、なんでもないって」

 その時、がらがら、と教室のドアが開いた。ユリカより長い髪をなびかせて、人影が現れる。

「こんにちはー! 席についてねー」

 三人は、散り散りになって自分の席に戻る。ユリカは座席表通り自分の席に向かって、驚いた。

「あら、お隣だったなんて。よろしく」

 ユリカの隣の席はサヤカだった。またもや緊張しながら、ユリカは答えた。

「よ、よろしくお願いしますっ」

 ユリカは緊張を紛らわせようと、教壇に立つ人を見る。
(あの人が、一年間一緒に過ごす先生ね)
 教職に就いてからあまり経っていないのか、ユリカたちとあまり歳の違いはないようだった。スーツを着た体は出るとこは出ている、つまりグラマーで、大人のお姉さん的な雰囲気を纏っている。
 スカートの下のふとももは、真っ黒なストッキングに包まれてむっちりしている。

「はーい、わたしは、これから一年間このクラスを担当する、ツバキと言いまーす。よろしくね」

 生徒たちと友好的でありたいようで、何気ない雑談の話し相手になれそうな、口調だった。生徒たちの初対面の第一印象は良いようで、緊張はほどけ、打ち解けた感じになっている。

「家がちょっと遠い人たちはそこに泊まることになってると思うけど、白百合寮の監督もしているから、そこに住む人たちは覚悟しなさい? 生徒だけで何でも好き勝手できると思ったら、大間違い。わたしがビシバシ取り締まっちゃうからね!」

 ファイティングポーズを取ると、少し笑いが起きる。

「みなさんは、これから有名高校紫蘭学園の生徒です。別に脅すわけじゃないけど、その名に負けぬよう、品位と誇りを持って、毎日を送ってくださいね! それがきっと貴女たちのためになるから。さて、出欠をとりまーす」

(あー、このいい感じの先生がわたしたちとこれから生活するんだ。ラッキーっ!)

 結局、ユリカはその後サヤカとまともに会話できず、その日は解散になった。
 キョーコとシオリがやってきて、ツバキについて感想を言う。

「あの先生、いい感じじゃん。わたし気に入ったー」
「わたしもそう思う。優しそうな先生」

 三人とも同じ意見で、ユリカは安心した。こうして、休み時間には三人で共感しあえる。これからずっとサヤカと隣だとしても、なんとかやっていけそうだ。
 少し元気が出て、言った。

「さ、早速寮に行ってみよっか! これから三年間、過ごすわけだから早く見に行きたいじゃん?」
「さんせー」

 シオリは先生に当てられた小学生のように、はい、と元気に手を挙げている。
 
「わたしもユリカに賛成かな。もう荷物届いてるだろうしさ、荷解き終わらせちゃおー」

 いえーい、と三人で仲良く手をつないで、少し遠くに見える白百合寮に向かう。
(どんなところなんだろう、白百合寮は)
 ユリカは、わくわくと心が躍るのをずっと止められないでいる。

 その姿を、奇妙な姿をした動物が見ていた。耳と尻尾が生え、一見猫のようだが、決定的に猫ではない。白く丸い球体に、顔と四本の足と、尻尾が全部くっついた姿をしている。

「きゅー」

 その生き物は、三人のうちのユリカを見つめて、そう鳴き声を上げた。

◇◆◇◆◇

「じゃんけんぽいっ……やったー!」

 三人は白百合寮の玄関前で、「荷物取り」を決めていた。ジャンケンに買った二人が既に郵送済みの荷物を取りに行き、一人は楽が出来る。そういうルールだった。
 ユリカはそのジャンケンに勝利して、無事二人より一足先に寮の自室に向かったのだった。

(楽しみ……これからわたしたちが、過ごしていく部屋!)

 ユリカとキョーコとシオリの部屋は、同じ階にあるらしかった。ユリカの部屋は、その階の一番奥、階段やエレベーターから一番離れた位置にあった。

(移動するの大変だなー)
 これから三人分の荷物を運んでくる二人に少し申しわけなくなりつつ、ドアの前に立つ。

「失礼しまーす!」 

 誰もいないことはユリカもわかっていた。なんとなく、新しく出会った部屋に対してそう言って、扉を開いたのだ。

 高揚感を覚えながら、新たな住居を期待したユリカだった。これからの楽しい生活を疑ったことなど一度もなかった。
 ユリカは、その時既に、自分の運命が決まっていたことなど知る由もなかった。

「えっ……」

 ユリカの目には、驚くべき光景が映っていた。あまりの驚きに声も出ず、ひゅっと喉がなるのみだった。
 その部屋は、明らかに普通の部屋ではなかった。とにかく部屋中が気色の悪いピンク色に染め上げられていた。
(なによ……これ)
 ピンク色の部屋は、生きているかのように蠢いていた。
 ユリカは目の前の部屋を表す言葉が頭にふっと浮かぶのを感じた。肉壁だった。どくどくと波打ち、バケモノの液体が分泌される肉壁。
 まるで、巨大なバケモノの内臓にもぐりこんだようだった。
 しかし、その光景に悲鳴を上げる間もなく、突然ユリカは頭がぐらりとするような感覚を覚える。
 次の瞬間、霞が晴れるようにして、目の前の光景が一変していた。

「……あれ」

 そこは、全く普通の部屋だった。勉強机、箪笥、ベッド……どこにでもある、ありふれた部屋の佇まいに、ユリカはまたもや声も出ない。
(今の……何だったの?)

 狐につままれたような気持ちで部屋の中に入り、歩き回る。どこをとっても普通の部屋に戻っていた。

「意味……わかんない。幻覚?」
「きゅー」

 ユリカは唐突に聞こえた鳴き声にはっと振り向く。
 足元に、小動物がちょこんと座っていた。ユリカは呑気なことに、それを見て瞬時に気分が変わってしまう。

「あ、可愛いっ!」

 しゃがみこんで、頭を撫でる。しかしユリカはそこで、この生き物のどこかがおかしいことに気付いた。
 胴体がない。ふかふかと柔らかいクッションみたいな丸い球体に、猫みたいな顔と、足と、しっぽがくっついている。

「この子、なんて品種だろう……始めて見たー」
「きゅー」
「どうしてこんなところにペットが……白百合寮はペット禁止だよ?」
「きゅー」
「鳴き声、可愛いね。そうだ……君の名前はキューにしよっか。ほら、見た目もアルファベットのキューに似てるし―」

 キューはおとなしいことに、ユリカにわしゃわしゃと身体を撫でられていたが、そのうち手を離れて、しゃばみこんだユリカのスカートの中に入っていこうとする。
 ユリカは、内股を柔らかい毛にくすぐられ、くすくす笑った。思わず尻もちをついてしまう。

「こら、キューったら……」
「キュー……キュキュキュッ」
「え、いやぁっ、何よキュー……きゃっ!」

 ユリカは痺れるような快感を覚えて、頭が真っ白になっていた。キューが下着の中にするすると尻尾を忍び込ませてきていた。それがやたらに、気持ちいいのだ。
(や、やだ……いやっ)
 ユリカは柔らかい毛に擦られる快感で、身体の力がふっと抜けるのを感じた。ふとももの間に侵入してくる小動物をなんとか遠ざけようとするが、ますます柔らかい尻尾から得る快感は増していく。
 ユリカは床に寝ころんだまま、悶えることしかできなかった。

「んっ……いやぁ、キュー、やめてよぉっ」
「キュキュッ……キュー」
「あ、だめ……そこはっ! あぁんっ!」

 ユリカの表情が、強烈な快楽でとろけていく。太ももはぎゅっとキューを挟み、上半身は仰け反って、ひくひくと震える。
 キューの尻尾はユリカのクリトリスをさわさわと撫でていた。
 もはやはばかることなくユリカは甘く喘いで、キューの愛撫に身を任せていた。

「なんで……んんっ! わたし、こんなの……あっ、もうダメっ!」
「きゅ~」
「イクぅっ! あっ……あぁっ」

 絶頂した瞬間、ユリカはあまりの気持ちよさに、気を失っていた。キューは尻尾をユリカから離し、可愛らしい顔でその桃色に発情した女子高生の肉体を見下ろしている。

◇◆◇◆◇

「おーい、ユリカ! 大丈夫?」
「寝てるの?」

 ユリカが目を開けると、たくさんの荷物を抱えたキョーコとシオリが、心配そうに見下ろしていた。
(……あれ、わたし、どうしちゃったんだろう)

「な、なんでもないって。ちょっと瞑想してただけっ」
「はー? なにそれ、ユリカってそんな趣味あるの?」
「意外」

 ユリカは上半身を起こした。キョーコとシオリの声も、耳に入っていない。
 まださっきの体の火照りが冷め切っていない。自分の乱れようを恥ずかしく思いながら、スカートの裾を直しているときに、気付いた。

(……ん)

 自分の股間に、何か知らない感触があった。まだキューが隠れているのかと思ったが、そうではない。触ると、自分の身体を触っている感触があった。
 それは突起だった。一本、ふにゃふにゃしたものが股間から生えている。
 そして、その一本の下に、二つの玉が薄い皮にくるまれて、存在していた。

(なに……これ)
 棒は根元から先端まで、ふにふにとした感触だ。
 ユリカは、頭の芯から、冷えていくのがわかった。この感触は、明らかにこれまでの自分の体にはなかったのに、なんど触っても自分の体だった。
 視線の先に、まだ部屋に残っていたキューが映る。
 
(もしかして……キューの仕業なの?)
 ユリカは見つめるが、キューは表情を変えない。

「ユリカ、ぼーっとしてるけど大丈夫?」
「え、……う、うん」
「あの猫、ユリカ知ってる? なぜか部屋から離れてくれないんだけど」
「わ、わたしが連れてきたの! 後でわたしが出しておくね」
「そう? つうかさー、わたしたち荷物運びで汗かいちゃったよ。早速だけどさ、この寮って、共同浴場があるらしいじゃん。どんな感じか、見に行かない?」
「ご、ごめん! 今無理! 後で行くから、二人で先いってて!」

 ユリカは逃げ出すように、キューを胸に抱えて部屋のトイレに駆けこんだ。まさか、キョーコとシオリに今の裸を見られるわけにはいかない。

「ユリカ、様子おかしくない?」
「うん……心配」

 キョーコとシオリはそう言いつつも、風呂に行く準備をし始めた。
 ユリカはその荷解きの音を聞きながら、トイレの便座に座る。スカートを脱ごうと手をかけて、心臓がどくどくと鼓動を早めるのを感じた。
 えいっとスカート下ろして、ユリカは思わず声をあげる。

「うそっ! こんなの、どうしたらいいの~!」

 股間に生えていたのは、男性の性器だった。ユリカはその実物を見たことがなかったが、一目瞭然だった。
 少しの間、ユリカはソレを見つめていたが、ふいに恥ずかしくなって目を反らした。
 代わりにキューに目を移す。

「どうしてくれるのよっ! あんたがこれ、やったんでしょっ!」

 ユリカは返答を期待せず、ただ気持ちを吐き出したくてそう言ったのだった。しかし、その猫のような生物は、流暢な日本語で、こう言ったのだった。

「そうだキュー。君は、今日からふたなりだキュー」

 驚きで瞠目するユリカに、キューは可愛らしい無表情を見せるのだった。
(つづく)






<ふたなり寮>ACT3




「そうだキュー。君は、今日からふたなりだキュー」

 その声の主は、間違いなく膝の上の生物だった。
 全く口を動かしていない上に、人間の言葉を使って、キューが喋っている。
 ユリカはその事実が信じられず、しばらく絶句した。その後やっと出てきた言葉も、舌足らずになってしまう。

「うそっ! ……ど、どうなってるの?」
「ボクはたくさんの新入生の中から、たった一人、君を選んだんだキュー。つまりは、それだけのことなんだキュー」

(い、意味わかんない……)
 つぶらな瞳に見つめられながら言われて、ユリカは混乱するばかりだ。
 キューはそんなユリカをからかうわけでもなく、慰めるわけでもなく、淡々と可愛い声で説明する。

「この学園で、ボクは一人の女子生徒に、生殖器をデザインする役目があるんだキュー。その役目を、果たしたんだキュー」

「役目……なに言ってるの? わたし、そんなこと知らないっ!」
「とにかく君は、そのちんこを使って、学園の可愛い女子高生たちに種付けをすればいいんだキュー」

 そう言いながら、キューはユリカの白く柔らかい太ももの上を歩き回る。股の間の萎えた肉棒に、そっと尻尾で触れた。
 そのまま、亀頭のところを、ふさふさした白い毛の生えた尻尾でくすぐる。

「ひゃっ! くすぐったいからやめてっ!」
「これはくすぐったいんじゃないキュー。快感なんだキュー」
「か、かいかん!? わたし、そういうの興味……んんぅっ」

 体中がしびれるような、甘い感覚を得て、ユリカは思わず背筋を正してしまう。その綺麗な顔が、とろんとゆるみはじめていた。
 同時に、ユリカは股間がむくむくと膨らみ始めていることに気付いた。

「お、おっきくなってる!?」
「これは、勃起って言うんだキュー」
「ぼ、勃起!? ふああ……や、やめてよ、キュ~っ」

 ユリカは口では嫌がりながらも、次第に息を荒げ、肉棒がぱんぱんに膨れ上がるのを黙認している。

(やだ……わたし、なんでキューのこと、止めないの!?)

 すっかり初めて感じた男性器の快感に夢中になってしまっているのだが、ユリカはそれが信じられないのだった。
 肉棒は、そのまま最大限まで硬くなり、自然と包皮が剥けていった。先端から先走り汁が溢れ出し、つつっ……と根元まで垂れていく。
 ユリカは頬を赤く染めながら、困り顔になっている。

「なんか……青臭い匂い、するよ~っ!」
「これがちんこの匂いなんだキュー。いずれこの匂いが愛おしくなるくらい、セックスに夢中になるキュー」
「い、いや……こみ上げてくるっ! なに、これぇっ!」

 そのうち、ユリカは射精の予感を覚え始めていた。初めての肉棒快感に耐えきれず、早くも絶頂を迎えようとしていた。丸く柔らかいお尻に力が入り、何かを吐きだそうとしている。
 しかし、そこでキューが突然、尻尾を離す。

「え、キュー……や、やめちゃうの?」
「ここからは、自分でするキュー。そっちのほうが、力加減が出来て、ずっと気持ちいい精通が出来るキュー」
「そ、そんなの……するわけないじゃないっ!」

 怒鳴ってしまうユリカだが、キューは無反応でいる。その無表情を見て、ユリカはむらむらと欲望が湧き上がるのを感じていた。
(どうして、途中でやめちゃうのよ~……もうすぐで、イケそうなのにっ!)

 ぴく、ぴくと肉棒が震え始める。それはまるで肉棒が刺激を求めているように、ユリカには見えた。
(もうちょっと、だけだから……はしたなくても、やっちゃえっ!)

 ユリカは持ち前のずぼらさを発揮し、みっともないのを承知で、肉棒を自分でぎゅっと握りしめた。途端に、包皮がずるりと剥け、亀頭が根元までずり下がる。
 空気に亀頭が振れる解放感と、自分の手のひらが擦れる快感で、ユリカの頭は真っ白になった。

「うあぁっ! これ、いいよぉ~っ!」

 すぐさまユリカは自分の肉棒をしゅっしゅっと擦り始めていた。その度に来る快楽がたまらなくて、そのまま仰け反ってしまう。

 制服を着た美少女女子高生が、下着からはみ出た肉棒を擦りまくって、たまらなく気持ちよさそうな顔をしている様は、めちゃくちゃにエロイ光景だった。
 だがもちろん、それを見てもキューは無表情でいる。

「ああぁっっ……イクぅぅっ! イクよぉ~!」

 頬を染め、涎を垂らし、目がうつろになったまま、ユリカはそう叫んでいた。
 同時に、肉棒の先端から弾けるように白濁液が飛んでいた。尿道を精液が駆け抜けていく快感で、ユリカは全身を強張らせ、仰け反らせながら、目を見開いていた。

(や、やばっ……これ、くせになっちゃうよ~)

 びゅっ……びゅるるるっ……びゅっ!

 そんな音が出そうな射精を続けながら、ユリカの顔はだらしなく、ゆるみきっていた。
 全ての精液が絞り出されてしまったような盛大な射精の後、ユリカはぐったりと仰け反ったままでいた。長い髪が、額に浮いた汗で、顔に張り付いている。
 つい、独り言をこぼしていた。

「うそ……こんなに、男のちんこの射精が気持ちいいだなんて……!」

 素直に、感動していた。
(こんなの、男はセックスしたくなるに決まってるじゃない……)
 世の中の、すぐやりたがる種馬男子に、共感してしまうユリカだった。

 そんなユリカの言葉に、キューはこう返している。

「この学園の女の子の子宮に、精液を注ぎ込んだ方が、もっともっと気持ちいいキュー」
「い、いやよ……そんなこと、できるわけないでしょっ」
「どんなに足掻いたって、無駄だキュー。君はこれから本能に負けて、女の子を犯しまくり始めることに決まってるんだキュー。可愛い女子のおまんこにちんこを挿入するのは、天にも昇る気持ちよさなんだキュー」
「天にも昇る程だなんて……大袈裟よっ!」

 そう言った時だった。こんこん、と部屋のトイレのドアがノックされた。ユリカがはっと身構える。

「ユリカー、まだトイレはいってんの? もしかして一人エッチ中?」
「ち、違うからっ! そんなわけないじゃんっ」

 ユリカはキョーコの声が図星で、勢いよく反論してしまった。
 慌てて床やドアに飛び散った精液を、トイレットペーパーでふき取り、流す。肉棒の先にぬるぬるとこびりついた精液も拭きとって、それが終わるころには勃起は完全に萎えきっている。

「ボクの声は、君にしか聞こえないキュー。だから、安心してボクを抱えて、トイレを出るんだキュー」

 わざわざそう言ってくれるキューを抱えて、ユリカはトイレの外に出た。
 途端に、ユリカは瞠目することになる。キョーコとシオリが、風呂上がりの、下着姿でそこにいたのだ。二人とも、可愛らしいフリフリの下着だ。
 別にそのこと自体は、よくあることだった。三人は一緒にお泊りすることはざらで、シャワーも一緒に浴びたことがある。裸の姿はよく知っていた。

 しかし、今のユリカには、キョーコとシオリの肉体が、違うものに感じられた。
 やたらと魅力的なのだ。身体のラインが、目に焼き付くように感じた。胸の膨らみが、お腹のくびれが、お尻の丸さが、素晴らしいものに見えた。
(うそ……二人とも、こんなに色っぽかったっけ!?)
 思わずごくりと唾を飲んでしまう。そして、次の瞬間恐ろしいことに気が付いていた。

(お、おちんちんが……膨らんできてるよ~っ!)

 自分では意識していないのに、むくむくと勃起していた。さっき射精したばかりだと言うのに、一向に性欲が衰える様子を見せない。

「人間の男子の健康的な反応だキュー」

 見ると、足元に無表情でキューが佇んでいる。

(これが……健全!?)

 ユリカがちょっと前かがみになっていると、キョーコに目を細められた。

「ユリカ、またぼーっとしてるよ。マジで大丈夫?」
「ぜ、全然?」
「……なんかイカクサくない?」
「そそそそんなことないってばー。あー、ここに来る前、スルメ食べたからかも」

 あまりにも適当な言い訳だが、キョーコとシオリは、特に気にした様子ではない。普通に納得していた。二人とも女子高生、あまり物事を深く考えていない。
 むしろ、イカのほうに興味は行っている。

「ユリカ~、スルメなんてどこで買ってきたの? わたしにもわけてよー」
「わたしもスルメ食べたい。ちょうだい、ユリカ」

 二人が迫ってきて、ユリカはまたごくりと唾を飲んでいる。
(二人とも、なんかいい匂いがする……)
 甘酸っぱいような、なんともいえないいい匂いだった。ユリカは、それが女体が発するフェロモンのような体臭だとはわかっていない。
 しかしとにかく、その匂いを嗅ぐごとに、肉棒が勃起を強めるのは感じていた。

「ちょっと、ふ、二人とも、やめてよ……」
「うーん? くれないの?」
「ユリカ、けち」

 するとさらに悪いことに、シオリが無言でユリカの後ろに回り込んで、羽交い絞めにした。こうやって何気なく表情を動かさずに、すごいことをするのが、シオリだった。

(あ、あたってる!)
 シオリのEカップは超えるような巨乳が、ぴったりと背中に密着していた。
 これまではおっぱいの感触なんて気にしたことのなかったユリカだが、今日はやたら気持ちよく感じてしまうのだった。

「ねえねえ、ポケットにはいってるの? いじっていい?」

 キョーコがとことこと近づいてきて、身動きの取れないユリカの身体を、すっとくすぐるように触った。

「ひゃんっ! キョーコ、やめてってば、くすぐったいよー!」

(それに、キョーコのいい匂い嗅いでると、頭がぼーっとしてきちゃう……)
 近い距離にいると、その匂いを感じたくなくても感じてしまうのだった。

 そして、勃起はどんどん大きくなって、スカートを持ち上げそうになっている。
(やばい……二人に、おちんちん生えてるの、ばれちゃうっ!)
 それを覚悟したとき、背後から声がかかった。

「こらーっ! 三人とも騒がしいわよ。他の部屋の生徒に嫌われちゃうわよ?」
「ツバキ先生!」

 そこにいたのは、今日教室で会ったばかりの、グラマラスなお姉さんだった。ユリカはその姿を、思わず足から顔まで舐めまわすように見てしまう。

「これからは品位を持って、常識的な騒ぎ方をすること。それと、ユリカさん……少し目つきが変よ?」
「あ、なんでもないんですっ」

 ユリカはぽっと赤くなって、俯いた。恥ずかしいのと、ツバキ先生の目を直視出来なかったのが、原因だった。

◇◆◇◆◇

 それから時間が経って、ずっとキョーコとシオリと談笑していたユリカは、二人からはなれて、またトイレに籠っていた。
 股間が、ずっと勃起しっぱなしで、我慢汁を垂れ流しっ放しだったのだ。
 それをティッシュで拭きながら、ユリカはキューに言った。

「切ない……おちんちんが切ないよ~! どうしてくれるのよー!」
「もしその切なさが嫌なのなら、セックスしちゃえばいいんだキュー」
「そんなのむりむりむりっ! このくらい、我慢して見せるわよっ」

 ユリカはのぼせたような顔でそう言って、ひくひくする肉棒を手で抑え込む。
 しかし、ユリカの意思はいつまでも続かなかった。少し先の未来で、ユリカは性欲に負けて、女子生徒を犯すことになるのだった……
(つづく)






<ふたなり寮>ACT4




 その夜、ユリカはひたすら悶々として、眠ることが出来なかった。
 仕方ないことだ。隣で、可愛い食べごろの女子高生が、無防備に眠っているのだから。
 キョーコとシオリの寝息を聞きながら、彼女たちが寝返りをうつのを見る。パジャマ一枚の下に、柔らかい体があるのを感じ取る。
 そのたびに、ユリカの股間に生えた異物は、大きく固くなっていく。

「あ~、もうこんなのイヤ……!」

 ユリカはむくりと起き上がって、枕元に置いていた時計を手に取る。夜の12時を回っていた。
 興奮しているせいで、まったく眠気が訪れないのだ。
 しかたなく、起き上がる。しばらく夜風に当たって、気分転換でもしようと思うユリカだった。

「ユリカ~、まだ起きてるの?」
「び、びっくりした! 起きてたの?」
「今、ユリカがもぞもぞって、起き上がったせいで、目が覚めちゃった」

 シオリが眠気眼を擦りながら、身体を起こす。パジャマがずり下がっていて、肩が露わになっていた。
(し、シオリ……なんでそんなに色っぽいのよ~!)
 ユリカは途端に前かがみになって、慌てて言った。

「わたし、ちょっと外の空気浴びてくるから。おやすみ~」
「ん、わかった。おやすみ~」

 ぱたりとまた横になるシオリを尻目に、ユリカはその部屋から出た。
 少し温度の低い空気を浴びると、頭が少し冷えるのがわかった。
(わたし、ばかみたい……隣で寝てるだけなのに、こんなにガチガチになっちゃうなんて)
 股間の男性器の先からは、我慢汁が気持ち悪いほど溢れていて、下着を汚していた。

「気持ち悪いよぉ……」

 女の子のいない空間に出てきたことで、少しずつ勃起は収まっていく。
 男性器の、下着の中のポジションを、服の上から直しながら、ユリカは窓のある場所まで歩く。
 その窓を開けて、外の空気に吹かれると、少し汗に濡れた長い髪が、さらさらと流れた。彼女の股間に起きた異変を知らない男子が見ていたら、少し見惚れるような光景だった。

 ユリカ自身、気持ちよくなって、そのままぼおっとしていようと思っていた時だった。

「あら、こんばんは。こんな夜に出回って、どういうつもり?」

 後ろから声をかけられて、びくりとなる。おそるおそる振り返ると、そこにいたのはツバキ先生だった。そういえば、夜の見周りをやっているのはこの先生だった。

 その姿を見た瞬間、ユリカはまたどきりとなった。
 絹のような綺麗な髪、豊満な胸、むっちりとした足……大人びた曲線を持つその身体に、自分が欲情するのがわかったのだ。
(あ~もう! またおっきくなってきた……!)
 自分でこれを止めるすべはない、と思い知らされて、ユリカは持ち前の図太さで開き直った。
(もう、ちょっとくらい勃起したってバレないし、気にしない気にしない!)

 ツバキ先生が、もう一度聞き直した。

「目が冴えちゃったの?」
「そうなんです、ちょっと眠れなくて……」

 先生は、ユリカが夜中に外出したことを責めるつもりはないようだった。

「そういうときは、明日を楽しみにして布団に入るのが一番よ。明日、どんなことをしようかな、とか考えていると、いつのまにか眠りに落ちちゃうから」
「明日……そういえば、体育の授業、ありましたよね。何をするんですか? 先生は、体育の先生でしたよね?」
「そう! よく知っているわね。明日は自由体育にするわ。まずは、クラスのみんなと楽しんで、仲良くなったほうがいいでしょう?」
「自由なんだ、やった~! それならわたし、キョーコとシオリと、バレーでもしようかな~」

 ユリカが何気なく言うと、ツバキ先生は嬉しそうに言った。

「ユリカさんは、バレーを部活でやっていたのかしら?」
「そういうわけじゃないんですけど、遊びでやってました。シオリとキョーコと、一緒にやってて、すごく楽しかったんです」
「わたし、バレー部の顧問なの。運動神経がいい子は、大歓迎よ! もちろん、そうじゃない子もマネージャーとして大歓迎!」

 ツバキ先生がバレー部の顧問だと言うのは、初耳だった。

「来たくなったら、いつでも来てちょうだい」

 ユリカは、その言葉に、はい! と元気よく答えた。

◇◆◇◆◇

 翌朝、ユリカは再び股間に違和感を感じていた。
(なんだか、ちょっと痛いよ~。これ、なんだろう)
 相変わらず勃起しているそれを、キョーコとシオリにバレないようにしながら、朝ごはんを食べていると、足元に、いつのまにかキューが現れている。

「それは、ユリカがずっと勃起してるから疲れちゃったんだキュー」

 キョーコとシオリに聞こえないよう、小声で受け答えする。

「し、仕方ないでしょ! 勝手にそうなるんだから!」
「仕方なくないキュー。ユリカが女の子の体が大好きだから、そうなるキュー。普通は、そんなにしょっちゅう興奮しないキュー」
「今だって、何も興奮してないのに、こんなになっちゃって……」
「それは、朝勃ちっていう男子の生理現象だキュー。我慢するキュー」
「も~、わけわかんないよ~!」

 ユリカは制服に着替え、諸々の準備をして、紫蘭学園へと向かう。
 キョーコとシオリと、いつも通りに会話することには成功していた。ただ、若干の変化を、中学からの親友にはさすがに感じ取られたらしく、キョーコにこう話しかけられた。

「ユリカ、ちょっと元気ないよ? 昨日、夜更かししてたっしょ?」
「べ、別に!? な、な~んにも変わらないよ、わたし。元気元気!」
「ユリカ……あやしい」

 シオリにジト目で見られて、ドキリとするユリカだったが、それ以上追及されることはなく、ほっとした。
(元気アピール、しなきゃ!)
 ユリカはそう思って、昨日のツバキ先生との会話を思い出す。

「二人とも、今日の体育の時間さ、自由体育らしいから、一緒にバレーしようよ」
「ん、いいね! わたし賛成」
「わたしも!」

 二人とも乗ってくれて、ユリカはほっとした。

 体育の時間は、1時間目だった。ホームルームが終わると、ガヤガヤと教室が賑やかになり、女の子たちの笑い声で満たされる。
 そんな中、ユリカは自分が、大事な事実に気づいていなかったことを思い知らされていた。

「み、みんな、下着姿になっちゃうんだった!」

 次々に、周りの女子高生たちが制服を脱いで、スカートを下ろして、あられもない姿になっていく。
 するすると、ためらいなく衣服を床に落とす女の子たち。みな、可愛らしい色の、可愛らしい薄い布地の下着をつけていた。
 その様子に、ユリカは動悸がはやくなるのがわかった。そして、股間に生えたものが、むくむくと大きくなりだす。

(ど、どうしよ~! これじゃ、スカート脱いだら、生えてるの、ばれちゃうよ~!)

 焦っていると、隣から話しかけてくれる声があった。
 サヤカの声だった。見ると、サヤカまで下着姿になっていた。桃色で彩られた、ちょっとセクシーな下着をつけている。

(サヤカさんの下着、色っぽい……!)

 金髪碧眼、しかも素晴らしいスタイルに、セクシーランジェリーで飾り付けられているのだ。ユリカは股間が、最大限に勃起するのを感じた。
 そして、前日、話しかけられるだけで緊張していたユリカは、自分の勃起がバレるかもしれない恐れのなかで、さらに緊張している。

「ユリカさん、どうしたのかしら? さっきからきょろきょろして、様子が変よ?」
「べべべつに、変じゃないです……よ?」
「もしかして、体操着を忘れちゃったの? それなら、隣のクラスの友だちから借りてくればいいと思うわ」
「わ、わたし……そうじゃなくて!」

 ユリカは、スカートを脱がなくていい方法を必死になって考えて、解答にたどり着いた。

「えっと、そうだ、わたし、今日は体育出れないんです!」

 女の子の日、を利用することを思いついたユリカだった。それなら、誰も文句を言うことは出来ない。

「あら……ごめんなさい。余計なことを聞いちゃったわね。一緒に授業を楽しめないのは残念だけれど、また今度、一緒に遊びましょ」

 サヤカはそう言って、下着の上に、体操着を着始めた。
 普通の体操着ではない。
 由緒ある紫蘭学園、その体操着は古風ゆかしく、昔から変わらぬブルマなのだった。
(ブルマって、なんだか、恥ずかしい……それに、ちょっとエッチかも)
 着替えた後の姿を見ても、興奮がとまらないユリカだった。

「じゃあね、ユリカさん」

 教室から出ていくのを見届けて、ユリカはようやくため息をついた。
(どうしようかと思った……バレなくて、よかった~)
 そうしているうちに時間は経っていて、教室の中にはほとんど女子生徒が残っていなかった。残っているのは、キョーコとシオリだけだった。
 ブルマに着替えたキョーコがとん、と依然として制服姿のユリカの肩を叩いた。

「ユリカ、まだ着替えてないの? どうかした?」
「あ、それはね、わたし、今日の体育は休むんだ」
「えー、さっき一緒にバレーするって言ったじゃん」
「そうだよユリカ、おかしくない?」

 二人の疑い深い視線を向けられて、ユリカはあはは、と笑うしかなかった。

「ごめん、わたしやっぱり寝不足で寝ぼけてるみたい……ごめんね」
「ちゃんと寝なよ、ユリカ」
「身体に悪いよ~」

 心配げな顔をしながら、二人は遅刻しまいと、グラウンドへと走っていった。

◇◆◇◆◇

 ユリカは教室の窓枠によたれかかって、グラウンドで遊ぶ女子生徒たちを見ていた。
 単純に見ているだけなのはつまらなかったが、それ以上に厄介なことがあった。
 股間に生えたものが、疼くのだ。

「あー、ダメ……ぜんぜん収まらない」
「一旦射精しちゃえばいいんだキュー。そうすれば、少しはましになるはずだキュー」

 いつのまにか足元に着ていたその生物は、可愛い顔でそんなことを言った。

「な、なんでそんなことしなきゃなんないのよ!」
「簡単なことだキュー。出すものがなくなれば、欲求は収まるんだキュー」
「それ、ほんとなの……?」

 ずっと勃起しっぱなしで辛いユリカは、わらにもすがる思いだった。

「ほんとだキュー。オナニーするなら、生徒たちがいない今しかないキュー」
「う~……」

 ユリカは言うとおりにすることにした。自分の席に座って、スカートをたくしあげる。
 下着だけ脱ぐと、硬くなったそれがスカートを押し上げる。

「も~、ほんとに元気なんだから」

 ユリカは呆れながら、それをぐっと手のひらでつかむ。そっと上下して、ユリカはふぅ、とため息をついてしまう。

「あ……やっぱり、これ、いい……」

 机の下で、こっそりと男性器でマスターベーションする女子高生、という図は、かなり異様なものだった。
 ユリカは、こするたびにやってくる快感に陶酔していた。もはやあるかもしれない周りの目など考えられず、ぼんやりと辺りを見る。
 目に入ったものがあった。隣の席の、サヤカの机の上に畳まれた、制服だ。

「サヤカさん……ちょっとだけ、いいよね……」

 ユリカは、その制服に片手を伸ばし、もう片方の手を、勃起したそれに伸ばした。
(つづく)






<ふたなり寮>ACT5




 ユリカは、隣の席のサヤカの制服に手を伸ばした。
 もちろん、その間もずっと、もう一方の手は、股間のものをぎゅっと握りしめ、上下に動かしている。
 スカートの下の肉棒をしごきまくっている自分の姿を客観的に認識すらできないほど、淫らな快感がユリカの腰の中で暴れていた。

「はぁ、はあぁ……これ、やめられないよ~!」

 ただ上下に擦るだけで、天にも昇る心地になってしまう。すでに肉棒はこれ以上ないほど固く、大きくなり、我慢汁を垂らし始めている。
 そのうちに、胸の中に黒々とした欲望が湧き上がってくるのをユリカは感じた。
(女の子……女の子が欲しいっ!)
 ユリカは片手でくしゃっと掴んだサヤカの制服から、魅力を感じ取っていた。
 これは、さっきまでサヤカがその身体に着けていたものだ。
 つまり、サヤカの体に間接的に触れていると言ってもいい。初めて会ったときから、輝いて見えたサヤカ。その身体が欲しい。ユリカはそんな気分になっていた。

 そんなユリカに、足元で見守るキューが尋ねる。

「ユリカは、どういうつもりでそれをしごいてるんだキュー?」
「どういうつもりって、どういうこと?」
「その手のひらは、本当は別の物のはずだキュー。ユリカは、それを疑似体験してるだけなんだキュー」
「そ、それは……」

 ユリカはキューに言われて、快楽でぼんやりした頭で、自分が何をしているのか悟っていた。
 オナニーは、結局のところ、女の子とのセックスの真似ごとなのだ。
(わたし、誰か他の女の子に、こういうことがしたいんだ……心の奥では、そう思っちゃってる!)
 サヤカに、この肉棒を突き込む。この肉棒を握らせて、しゃぶらせる……そんなイメージがユリカの頭の中に広がって、ユリカはぐっと興奮の度合いが高まるのを感じた。

(わたし、どうしちゃったの~! これが生えてきただけで、頭の中まで、おかしくなってる気がする!)
 キューは、相変わらず可愛らしい容姿で、ユリカをたぶらかす。

「女の子を一度でも犯したら、もう手でしごいたりなんてやってられなくなるキュー。それくらい、気持ちいいはずだキュー。だから……」
「う、うるさい! 今は、こうしなくちゃ勃起が収まらないからこうしてるのよ!」
「サヤカの服は、いいオカズだキュー」
「うぅ~! サヤカ、ごめん!」

 ユリカはすっかり行為に夢中になって、プライドを掻き捨ててユリカの制服に顔をうずめた。
 とたんに、いい香りが鼻孔をくすぐった。清潔感のある、女の子らしい香り。さっきまで、これをサヤカが着ていたということを考えると、ユリカはたまらなく興奮した。

「サヤカ……いい匂いする~! サヤカ~!」

 ユリカはこの時、完全に理性を失っている。友達の女子高生の服の匂いで幸せな気持ちになり、他のことは眼中になくなっている。
 ついには、その服の袖の部分を肉棒に巻き付けた。

「気持ちよくなりたい……もっと、サヤカで、気持ちよくなりたいよぉ~!」

 すっかり発情した顔になりながら、ユリカはサヤカのシャツの袖で自分の息子をしごき始めた。

「あ~! あっいい……これ、気持ち、いいっ!」

 ユリカの頭の中では、サヤカにペニスをしごいてもらっているビジョンが鮮明に出来上がっていた。
 サヤカの一部でオナニーをすることは、それほどユリカにとって快楽のスパイスになっていた。

「もうだめぇ、もう出るよ、サヤカぁ!」

 ユリカはそんなことを口走りながら、堪え切れずに射精していた。その顔は、すっかり発情したメスのものだ。淫らな笑みを浮かべながら、甲高い嬌声を上げる。

「あああぁっ! いくいくっ! サヤカ~っ!」

 どぴゅっ! びゅるるっ……びるっ!

 白濁液が迸り、机の下を勢いよく飛んで、少し離れた床を汚した。
 何度も射精は続き、大量の精液がぶちまけられる。

「はぁ……はぁ……」

 ユリカはふたなりペニスを握ったまま、机に突っ伏して、絶頂の余韻に浸っていた。
 それが解けてきたころ、顔をあげて、床にたまった汁を見た。一気に気分が冷めてしまう。自分がやってしまったことを思い知り、ちくりと後悔の感情が湧いてきたのだ。

「わたし、どうかしてるよぉ~」

 ユリカは、そう言いながらも、この快感を忘れることは出来ないかもしれない、と思い始めていた。

◇◆◇◆◇

 体育が終わり、女子生徒たちが、みな教室に戻ってくる。
 ユリカはあのイカクサいような匂いを感づかれるのではないかと恐れていたが、誰も気づかず、いつも通り、他の女の子たちとお喋りしていた。
(ふう……よかったぁ)
 緊張を解いて、安堵のため息をついていると、後ろから急に、温かく柔らかいものに抱き着かれる。

「ユリカ~! やっぱりユリカがいないと寂しいよ~」
「きょ、キョーコ! 暑苦しいよっ」

 本当は、ユリカは暑苦しいなどとは思っていない。
 その女体が無防備に自分に触れていることで、また股間が反応し始めていた。甘酸っぱいような汗の匂いと、甘い体臭が混ざった色香がさらに追い打ちをかける。
(キョーコ、こんなにいい匂いだったっけ……あ~もう、さっき出したのに、全然収まってないじゃん!)
 前かがみになるユリカに、シオリが訝しげに聞いた。

「ユリカー、見学しないで、何してたの? 暇だったでしょ」
「あー、ちょっと勉強してたんだ! たまには、そういうのもいいかなって、あはは」
「先生が、今度からはちゃんと見学してね、って言ってた」
「うん、そうするね!」

 二人が自分の席に戻った後も、ユリカの煩悩は消えなかった。

「ユリカさん、申し訳ないのだけれど、わたし、教科書を家に忘れてきてしまったの。見せてくれないかしら?」
「全然いいよ!」

 次の時間に、隣の席のサヤカが、困り顔に笑顔を浮かべて聞いてきのだった。
 ユリカは、さっき使った制服を着て、いつも通り生活しているサヤカを見て、ドキドキと胸の鼓動が早くなるのを感じた。
(その制服の袖で、オナニーしちゃったんだ……わたし)
 思わず、サヤカに自分の男性器をしごいてもらう夢のような光景を想像して、幸せな気分に入り浸ってしまう。もちろん股間は勃起してしまい、机の下でスカートを押し上げていた。
 これではさっきオナニーした意味がないが、ユリカはそんなことより自分の中で湧き上がる欲求に気を取られていた。
(また次の体育の時間も、制服を使わせてもらおうかな……)
 あくまで性欲処理のために射精したのに、これでは逆に性欲を膨らませていて、全く意味がない。ユリカはキューにのせられて、どんどん常識のタカが外れていっていることに、気づいていない。

 だんだんとユリカの煩悩は大きくなっていた。そのことは、寮に帰ってからのユリカの行動を見てもよくわかる。
 キョーコとシオリが夕飯を買いに近くのコンビニに出かけたのを確認した後、ユリカはすぐに部屋のカギをかけ、自らのスカートをめくりあげていた。 
 洗濯カゴから、二人の使用済みの衣服を引っ張り出してきて、それにわずかに香るメスの匂いを嗅いだり、自分の股間に擦り付けたりして、性欲を満たし始めたのだ。

「ごめんね、二人とも……でも、我慢できないから、こうするしかないの……」

 ベッドの上で膝立ちになって、スカートの下でぱんつをずらし、我慢汁を垂らす肉棒を露出させる。
 シオリの下着を巻き付け、柔らかい生地で擦ると、素晴らしい心地よさがユリカに訪れる。
 キョーコがさっきまで着ていた、人肌の体温が残る制服に顔を突っ込んで、嗅覚で興奮するのも忘れない。

「あぁ~……ああぁ……いい、これ、いいよぉ~」

 ユリカはすっかり顔を上気させ、快楽に身を委ねていた。だらしない声をあげ、上に突き上げたお尻を大胆に振りたくっている。
 こんな姿をキョーコやシオリに見られたら、ただでは済まないことなど、全く考えていない。完全に淫行から得られる、ゾクゾクとするような快感で頭がいっぱいで、周囲に配る意識など、微塵もない。

 遠くから見たら、可愛らしい女の子が、大胆にオナニーしているなんとも扇情的な光景だ。しかし、その手に握られた、ギンギンに固くなった男性器を見たら、大抵の人間は絶句してしまうだろう。

「あ、いく、いくいくぅっ!!」

 ぎゅうっと身体を強張らせて、真っ白な精液を用意していたティッシュに吐き出して、ユリカはふう、と一息をついた。目線は宙を漂い、余韻に浸っている。
 そんなユリカの痴態を、相変わらずキューは間近で見ていた。

「もうすっかりち○ぽの快感にはまったキューね。女の子が欲しくてたまらないのキュー?」
「欲しいよぉ~……こんなふうになりたくなかったのにぃ……なんでこうなっちゃうのよ~」

 ユリカはわりと、落ち込んでいた。数日前まで、普通の女の子としてバラ色の女子校ライフを送ろうとしていたのに、このザマだ。当然のことである。

「欲しいなら、襲っちゃえばいいんだキュー」
「そうやって、すぐ変なことをそそのかすんだからっ」

(シオリとかキョーコに、エッチなことするなんて、絶対ありえない)

 そう固く心に誓いながら、ユリカは二人の衣服を洗濯カゴに戻すのだった。

 その晩、部屋で三人仲良く夕飯を食べた後、こんな出来事もあった。バスタオルや、パジャマなどを一袋にまとめ、二人がこう言ってきた。

「ユリカ、お風呂行こう」
「ごめん……今日も、今からちょっと友達の部屋に遊びに行ってくるから」

 ここまではいつも通りの会話だった。しかし、シオリが少し目を細めて、こう付け加えたのだ。

「ふーん。わたしたちは連れて行ってくれないんだー、ユリカ最近、わたしたちと距離取ってる?」
「違う違う、そういうのじゃないってば」
「わかったよ。本気で言ったんじゃないから大丈夫だよ、ユリカ」

 結局二人は、優しい笑顔で、どこか気遣ったような態度を取ってくれていた。ユリカは、二人とも、自分に何か異変が起きたことを、察しているのではないかと薄々感じ取った。
(バレないようにしないと……もしばれたら、大変なことになっちゃう)

 一人になったユリカは、部屋で悶々と考え続ける。
 二人との友達関係も、重大な考えるべきことだったが、同時にしょっちゅう疼く股間のほうも、ユリカの思考に並々ならぬ影響を与えていた。

「でも、このままじゃシオリやキョーコを襲いかねないよ……自分がコントロールできなくなっちゃいそう……」

 それほどに、射精の快感はユリカの生活の一部になりつつあった。
 キョーコやシオリなど、親友と呼べる女の子に手を出すことは出来なくても、知らない女の子になら少しくらい乱暴してもいいんじゃないか、という謎の理屈がユリカの中で出来上がり始めていた。

「あー、もうダメダメ、わたし、頭おかしいっ」

 ユリカはまた、夜の風に当たろうと、部屋を出て廊下をうろつき始めた。たまに通りかかる女子生徒の身体を、思わず舐めるように見てしまう自分に、嫌気がさす。
(誰か、助けて~! 本当に、わたしがわたしじゃなくなっちゃう……)
 そう思いながら、この間も来た、廊下の突当りの窓際でぼうっとしていた時だった。

「ねえねえ、あなたがユリカさん?」

 話しかけてきた女の子がいた。髪をポニーテールにして、すっきりとした笑顔を浮かべている。運動をしている女の子なんだろうな、と雰囲気で察しがついた。
(可愛い……わたしのものにしたい……)

 ユリカの中で、むくむくと黒い感情が湧き上がる。それが表に出ないように、ユリカは微笑みながら頷いた。

「体育の時間、休んでたよね。体調、悪いの?」
「ううん、大丈夫だよ」
「わたしは同じクラスのアヤヒ、よろしくね!」

 よろしく、と返しながら、ユリカはフレンドリーに接してくれるアヤヒに好感を抱いていた。
(きっといい人なんだろうな~)
 そして、アヤヒはこんなことを、さらっと言ったのだった。

「ところで、ちょっと今わたしの部屋でパーティーやってるの。来てみない?」
(つづく)






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