俺はある休日のお昼頃、侑子さんと約束した、二人きりのデートに出かけた。
「侑子さん、一体どういうつもりなんだろう……?」
俺に興味が湧いたと言って、デートに誘われた。
脳内では、エッチな妄想が早くも膨らみ始めている。本来は旦那さんのものであるはずの、人妻グラドルの女体を味わう妄想。
あの柔らかそうなおっぱいを揉みしだいて、乳首を咥えて吸う。侑子さんのファンなら誰でも見たがる、例の乳房の<ほくろ>を独り占めして、舌を這わせる。
きっと、侑子さんも積極的に俺に絡みついてくるに違いない……あのすべすべした太ももで俺の足を挟んで、手のひらで俺の背中を撫でたり、頬に触れたりして、ついには俺の肉棒を優しくしごいてくれるはず。
ぽってりとしたあの唇とキスをして、舌を絡める。男が好きそうな侑子さんのことだから、ディープキスは上手に決まっている。
「朝起きてからずっと、侑子さんのことが頭から離れない……」
冷静になって考えてみると、ここまで夢中になって妄想してしまうのはおかしなことだった。
涼音さんの時は、何度もアプローチされて肉体関係を持ってしまった。そのつもりはなかったのに、お風呂上がりの女体で誘われ、ついつい手を出してしまった。
あの時は、まだ意思が強かった。優美さんと陽菜ちゃんに悪いと思って、欲求を抑えようとしていた。しかし、一度涼音さんとのエッチの味を覚えるともうダメだった。女の子たちとのエッチは、他の人と同じなんてことは絶対になくて、涼音さんには涼音さんの良さがある。グラドルの味比べをするのは男としてこんなにも幸せなものなのかという心地にさせられた。
それに比べて今は、自制心すら崩れ始め、早く侑子さんとエッチがしたくてたまらない。まるで花にふらふらと引き寄せられる虫のように、気が付いたら会いに行っていた。
侑子さんの溢れ出る色気がそうさせているのも間違いなかったが、俺自身の精神が、女の子たちとのエッチを続ける日々にトロトロにとろけさせられて、弱くなっているのも確かだった。
「このままじゃ、よくない……」
この間の、キッチンでの優美さんとのエッチを思い出す。侑子さんとの妄想が頭から離れなくて、ついつい優美さんと侑子さんの姿を重ねてしまった。
思えばあれは一時の気の迷いだ。優美さんはやっぱり唯一無二の存在だった。女神様のような。俺の童貞を卒業させてくれた、最高の義理のお姉さん。あんな風に、性欲を処理するだけのようなエッチをしてはいけなかった。
いずれにせよ、気持ちを惑わすだけの魅力が、侑子さんにあるのは間違いなかった。
「直人くん、おはよっ」
待ち合わせ場所にすでにいた侑子さんは、相変わらず人目を惹くほどの美人さんだった。通り過ぎていく男たちが、ちらちらと盗み見ているのが俺には分かった。今日は大人っぽい服装で、肩の部分が切り取られていて、白い肌を見せている。
「ねえねえ、今日の服、似合ってる?」
「すごい似合ってます。肩のところとか、おしゃれで……」
「ふふ、ちょっと目つきがやらしい。別に嫌じゃないけどね。むしろ、若い男の子にそんな風にみられると嬉しくなっちゃう」
侑子さんが見たい映画があると言われ、一緒に見に行くことになっていた。侑子さんは楽しそうに、俺を連れて映画館へ向かって歩いていく。どうやら侑子さんがリードしてくれるらしかった。
「出さなくていいわ」
窓口でチケットを買うとき、お金を出そうとすると、当然のようにそう言われた。なんだか格好悪いと思って出そうとしたが、有無を言わせずに侑子さんがクレジットカードを出していた。高級ブランドの財布をちらりと見ると、お札は最低限しか入っていなかった。
「最近カードしか使わないの」
庶民とは違う感じがして、なんだかすごい人と一緒にいるような気にさせられた。
字幕の洋画を隣に座って鑑賞した。家だとグラビアのDVDばっかり見ているから普段は映画は見ないけど、その映画は飽きずに見れた。綺麗な海外の女優さんが演じる人妻が、既婚男性との不倫の末破滅へと追い込まれる映画。R15指定でエッチなシーンもあって、ドキドキした。侑子さんがどういう気持ちでこれを見ているんだろうと気になって、ちらちらと表情をうかがうと、平然とした顔をしていた。最終的に女優さんは何もかも失って、不倫相手の俳優さんが妻にひどい目にあわされる悲しい終わり方だった。自分と重ね合わせると怖くてたまらない。
俺は若干冷や汗をかいていたが、上映が終わると侑子さんは満足した様子で言った。
「面白かったね」
「そ、そうですね……やっぱり、不倫ってよくないですね……?」
「なぁに、その表情。ヘマするからああいうことになっちゃうんだよ」
侑子さんはよく映画を見るらしく、色々なことを語ってくれた。この俳優は有名な人で、何賞を取っただとか、この監督さんの作品が面白いだとか、かなり詳しいみたいだった。
そのあとは、近くにあった美術館に入った。相変わらず入館料は侑子さんが払ってくれた。例のカードを使って。
「ううん、気にしないで。直人君に付き合ってもらってるんだもの」
晩御飯も侑子さんが行きつけのところに連れて行ってもらえると聞いていたから、お小遣いを多めに持ってきていたけど、杞憂に終わりそうだった。
侑子さんは絵画も詳しいようで、俺が知らない海外の絵について色々と語ってくれた。
「そろそろお腹、空いてきたね」
連れていかれたのは、入ったことすらないような高級ホテルのレストランだった。侑子さんと一緒にいておかしくないように、少しきっちり目の服を着てきていたけど、それでも自分が浮いている気がした。
「もしかして、ここも……」
「うん。お題は気にしなくていいよ。好きなもの頼んでね」
英語で書かれたメニューが読めず俺があたふたしているのを見て、侑子さんはちょっと楽しそうに笑った。どこか嗜虐的な笑みに思えて、やっぱりこの人はSなんだろうなと思った。
「あんまりこういうところ来ないでしょ。緊張してるね。初々しくてかわいい」
「あの……これ……」
「うん、どうしたの? わたしはもう決めたけど」
「俺、英語が……」
「読めないの? 仕方ないんだから……耳、ちょっと赤くなってるわよ」
わかっているだろうに、いじめてくるあたり、すっかり俺で楽しんでいた。頬杖をついて、愛玩動物でも愛でるような視線。
侑子さんは飲み物にシャンパンを頼んで、いつのまにか俺のグラスにもそれが注がれていた。
「本当はダメだけどね」
慣れないもので緊張しきりのディナーを終えるころ、俺は酔っていなかったけど、侑子さんはほんのり頬を染めて、ほろよい気分のようだった。ますます色っぽくなった侑子さんは、こっそりと温まった指を俺の手のひらに絡めてきた。
「楽しかったね……それじゃあ、行こっか」
すっかり暗くなった夜の都会に、侑子さんが俺を引っ張っていく。どこへ行くのか聞かなくても行き先はわかりきっていた。侑子さんに気に入ってもらえたようだった。
これから、侑子さんとエッチすると思うと、ワクワクしてきて、期待で胸がいっぱいになる。隣にいる、いい匂いのする侑子さんを抱いて、好きなようにできる。このおしゃれな服を脱いだ侑子さんの姿や、どういう風にエッチするのかを想像すると、すでに肉棒が勃起を始めていた。
「優美に連絡した?」
「まだしてません」
「ダメじゃない。今日はわたしと一晩、お泊りでしょ?」
迷いは少し残っていたけど、侑子さんとエッチしたい気持ちが大きすぎて、我慢できなかった。たとえ拒もうとしても、侑子さんも俺を帰らせるつもりはなさそうだった。
「侑子さんこそ、旦那さんは……」
「出張中なの。赤ちゃんも一晩預けてるわ。だから、誘ったの」
侑子さんが向かった先はラブホテルだった。それも、ちょっと上品で値が張りそうなホテル。ロビーに入るといい匂いが漂っていた。
「カードで」
侑子さんはそこでも俺に一切お金を払わせずに、一番いい部屋を取ったのだった。エレベーターで俺に向き合って、俺の頬につつ、と手のひらを当てる。
「ふふ、さっきからずっと緊張した顔。可愛いんだから……ここも、来るのは初めて?」
「そうです……しかもこんないいホテルなんて」
「いいのよ、今夜はいっぱい楽しみましょ?」
そう言って、自然な流れでキスをされた。唇をついばむようなキス。お酒の匂いが、侑子さんの熱い息と一緒に入ってくる。我慢できなくなって、そのまま舌を入れて、ディープキスにもっていった。侑子さんは最初は驚いたようだったけど、すぐにヌルヌルの舌が絡みついてきて、逆にせめられてしまった。気持ちがよくなって、頭がぼんやりしてしまう。
「やだ、直人くん積極的……楽しみになってきちゃった」
侑子さんもすっかりスイッチが入ったようで、目元がとろんとしてきている。
その部屋は豪華だった。ピンク色のシーツが敷かれたベッドにはピンク色の天蓋がついていて、ピンク色のレースカーテンが引かれている。間接照明がぼんやりと部屋を照らし、甘い蠱惑的な匂いが立ち込めていて、この場にいるだけで気分が高まってくる。
「なーおとくん、ふふっ」
ほろ酔いの侑子さんが抱き着いてきて、そのままベッドに倒れこむ。侑子さんが仰向けになった俺の上にのしかかって、視界にはベッドの天蓋と侑子さんしかいなかった。息があたるくらい近い。ピンク色の世界で二人きりになる。
「シャワー浴びるの面倒くさくなってきちゃった。いいよね?」
「侑子さんがよければ……」
「なにそれぇ、直人くんも早くしたいくせに。自分ばっかりいい子ぶっちゃって。直人くんは、これから人妻と不倫するの、わかってる?」
「俺は誘われただけで……」
「わかっててついてきたんでしょ? ふふ……いいわ。そんなこと言ってられるの、最初だけだから。次からはきっと、直人くんがわたしのこと、誘うようになるわよ」
「……やめられなくなっちゃいそうです」
「だよね? ほらぁ、わたしのお尻の下で、直人くんのすっごく硬い」
腰を軽く揺すられると、擦れて快感が走った。
侑子さんは俺の首の後ろに腕を絡めて、またキスをした。今度は男を欲しがるような濃密なキス。こんな風に、欲望をぶつけられるようなキスをされるのは初めてだった。女性は三十代を超えると性欲のピークが来る、なんて話を聞いたことがあったけど、侑子さんはその通りに興奮しきっているようだった。
「ん……ちゅ……ちゅぱ」
唾液が絡む卑猥な音。部屋の甘いフレグランスと侑子さんの香りとお酒の匂いが混じった、たまらない匂い。そして頭にもやがかかるようなキスの快感。どうにかなりそうだった。
(つづく)
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