ユリカはアヤヒに連れられて、彼女の部屋へと向かっていた。
背後からその立ち姿を見ていると、やっぱり惚れ惚れした。
なんといっても、引き締まった、いい体つきをしている。中学生の時は間違いなく運動部だったのだろうと予想がついた。ずっと帰宅部だったユリカとしては、引け目を感じるというより、ちょっと憧れを抱いた。
ふらふらと花に吸い寄せられていく蝶のようにアヤヒについていくと、こんなことを話してくれた。
「わたし、バレー部に入ろうと思ってるの。いまやってるパーティーって言うのも、そのバレー部の新入生勧誘会みたいなものなんだーっ」
ずばり的中だった。
ぴっちりした体操着を着て、掛け声をかけながら、額に汗する女子生徒たちの姿が思い浮かんで、ユリカは自分がむらむらと興奮していることに気づいた。
(前はこんなこと、ぜんぜん興奮なんかしなかったのに~~)
変化は身体だけでなく、着実に考え方や、感じ方にまで広がっていることが痛切に心に刺さった。
それはともかく、バレー部と聞いて、ユリカには他に思い出すことがあった。
ツバキ先生のことだ。あのムチムチとして、大人として熟し始めた女体を持つ先生。彼女は、バレー部の顧問をしていると、この間、聞いたばかりだった。
(もしかして、これって運命なのかも……)
ユリカは、掛け値なしに、そう信じかけていた。それほど彼女たちに魅力があったからだし、それほどユリカはあまり物事を考えていなかった。
「アヤヒちゃんは、どうしてバレー部に入ろうと思ったの?」
「えー、やっぱり楽しいからかなぁ……? バレーする以外にも、楽しい遊びがたくさんあるし♡」
なにやら頬を染めて、心躍らせた様子でいうものだから、ユリカはさらに期待を膨らませてしまった。
「ていうかわたし、ほんとはバレー部に入るつもり、なかったの。中学の頃は、水泳部だったし。でもね、先輩方が本当に面白い人たちでね、たのしいよ!」
「そうなんだ! わたしも面白そうって思っちゃった。今からでも、先輩方と仲良くなれる?」
「うんうん、まだまだバレー部は新入生募集中だって! 毎年何十人も入部してるから、心配しなくても大丈夫だよ!」
これだけの会話で、すっかり二人は打ち解けあっていた。
(アヤヒちゃん、可愛いなぁ……ほとんど初対面なのに、こんなに優しくしてくれるなんて、もっと仲良くなりたいなー……)
そう思いながら、心の奥底では、自分の思い通りにめちゃくちゃにしてやりたいという欲求が疼いている。友情なのか、肉欲なのか、ユリカは自分が抱く感情がごちゃごちゃにわからなくなっていた。本当は、打ち解けあってなどいないのかもしれなかった。
「バレー部はきっと、楽しいよ! 他のどの部活よりも、確実に、絶対に……ね!」
アヤヒは、ふふっと微笑んだ。
意味ありげな、含みのある言い方だったが、ずぼらなユリカに、そんなことは気づけない。
ただひたすら、このアヤヒという女生徒と、ツバキ先生と一緒にいられるというだけの理由で、こう答えていた。
「決めた! わたしもバレー部はいろっと」
「それじゃ、決まりだね! ようこそ、わたしたちの、そして、|マスミさんの≪・・・・・・≫、バレー部に!」
シオリもキョーコも誘って、仲のいい女の子たちと、楽しいハイスクールライフを送る……そんな輝く未来を想像しながら、アヤヒが手招く部屋に入った時だった。
アヤヒが、ふと唇に人差し指をあて、ユリカの動きを制止した。
「今、大事なところだから、いいタイミングになるまで、こっそりここで見てよう」
「いいタイミング? どういうこと?」
そう問いかけても、アヤヒは無言で首を振り、にこにことするだけだ。
そこは他の女子生徒の部屋と比べて、明らかに大きな部屋だった。玄関から、直接部屋の中がのぞけない。そのときのユリカは、そのことを大して疑問に思わず、ただ緊張してアヤヒの後をついていった。
足音を忍ばせて廊下を進むと、ユリカはとんでも空気感のようなものが、自分の周りを取り巻くのを感じた。
ユリカはそれと気づいていないが、甘美で、身体の芯から熱くなるような、発情の雰囲気だった。
かすかに聞こえる嬌声と、布と布、肌と肌が擦れる音、そしてむわっとまとわりつくような熱気が、直接感じられた。
(なに、これ……!? もしかして……?)
ユリカは、処女らしい純粋さと、肉棒を固くする中学生男子のような性欲に後押しされ、吸い込まれるように部屋の奥まで入っていく。
そのときだった。再びユリカを|幻想≪ビジョン≫が襲っていた。
ぐらりと視界が歪むと同時に、自分がこれまでいた部屋が霞と消え、まるで本来そこにあったものが立ち現われたかのように、グロテスクなピンク色の肉壁が四方八方を取り巻いていた。
(いやっ! 気持ち悪い……!)
化け物の体内にいるようだった。それはどくどくと波打ち、まぎれもなく生きていた。
自分が、その一部にされてしまう気がして、ぐっと目を瞑った。
「ゆ、ユリカ、大丈夫!?」
瞬間、アヤヒに身体を支えられて、なんとか倒れずに済んだ。
目を開けると、目の前に心配げな可愛いアヤヒの顔があった。そして、その後ろの部屋も、正常に戻っている。
「うん……ごめんね、ちょっと貧血かも」
とても、ユリカは自分が見たものをアヤヒに伝える気にはならなかった。気が狂ったと思われかねない。
呑気なことに、向う側で起きている淫らなことを覗こうという欲求が再び湧いた時だった。
「ふう…………?」
そこには、美しい女学生が膝立ちになっていた。いつの間にか、ユリカたちは覗き見るどころか、その光景のど真ん中に乱入してしまっていた。
「すみません、マスミせんぱい……」
マスミ先輩と呼ばれた人は、見た目にも上級生なのが明らかだった。
自分たちより、少し大人な雰囲気を醸している。自分たちより背が高く、つやのある黒髪を長く伸ばしている。その体は自分たちより女性として成熟し、丸みを帯びながらも余計な肉はついていない。
(綺麗な人……しかも、ちょっとかっこいいかも)
彼女の凛としたたたずまいは、ユリカの心の女の子の部分を大いに刺激した。
そしてその腰には――ユリカと同じ肉棒が生えていた。
しかしユリカのそれとは程遠かった。彼女のクールな見た目からは想像のつかないような、醜い肉棒だ。使いこんだせいか、黒く色素が沈着し、でっぷりと肥え太っている。
その表面にはぬらぬらと粘液が光り、しかも……白濁した液体が垂れていた。
あまりの衝撃に、ユリカはあんぐりと開いた口がふさがらない。
(わたしの他にも……あれが生えてる人がいるなんて!!)
さらに、膝立ちになったマスミ目の前には、今まで喘いでいた女生徒が、ぐったりと虚ろな目で寝転がっていた。マスミと同学年なのか、こちらも体つきが大人っぽい。肉棒に支配される快感に身を委ねた、淫靡な色気を放っている。
遅れて、興奮した女性が発する、なんともいえない色香が香った。
二人が欲求に溺れた後の、どろりとした淫らな雰囲気を感じて、ユリカは自分の肉棒がいつのまにか、びんびんに勃起していることに気づいた。
「今、ちょうどマリを|幸せ≪・・≫にしてあげたところよ。アヤヒ」
「うん……気持ちよかった……マスミ」
マリと呼ばれた女生徒が、大きく満足げなため息をついた後、胡乱そうにユリカを見た。そして呂律の回らない舌で、つぶやくように言った。
「ようこそ……|マスミの≪・・・・≫バレー部へ……うふふ」
そのあまりの色気に、ユリカは自分がその女性を犯したくてたまらないことに気が付いた。
(だ……だめだよ、そんなことしたら……!)
ユリカの良心がそれを必死に止めるが、肉棒のほうは、さっきからヒクヒクと震えて、女の子を欲しがっている。
その葛藤をよそに、あくまで淡々と、マスミは状況を進めていく。
「そのお友達の名前を教えて、アヤヒ。……彼女も、|わたしの≪・・・・≫バレー部に、入部希望でしょう?」
「ユリカさんですっ!」
「ユリカさん……ふーん、可愛い子ね」
彼女の視線にまっすぐ射られて、ユリカは蛇に睨まれた蛙のように硬直した。獲物を捉えて逃がさない切れ長の瞳だった。
(も、もしかして……次は、わたし……!?)
処女を奪われる恐怖と、自らの身体の異変を気付かれる恐怖がごちゃまぜになって、ユリカは足がすくんだ。
しかし、それはただの品定めだった。次に彼女が襲う標的は、決まっていた。
「アヤヒ、いい子を連れてきてくれて、ありがとう。約束通り、ご褒美ね」
「マスミ先輩っ……! ありがとうございますぅっ!」
アヤヒは頬を真っ赤に染めて、瞳を輝かせた。
「そんな……、アヤヒちゃん……!?」
マスミは、下半身に何も身に着けない制服姿で、堂々とアヤヒに近づいていく。アヤヒはそれを受け入れるように、その場で胸の中心に手を当てて、恥ずかしそうに俯いている。
ユリカはその場で座り込んでしまった。あまりに衝撃的な出来事が続きすぎて、立っている気力が尽きていた。
しかし、現実に目を背けそうになりながらも、同時に期待してもいた。
こっそりと、スカートの上から、がちがちになった肉棒を撫で始めるくらいには。
(つづく)
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