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剣と魔法の世界からお持ち帰りしました(10)

<INTRODUCTION>
 異世界に転移したシンヤは、その世界〈アーク〉を救うことに成功した。そのまま異世界で英雄として遊び呆けようと思っていたシンヤは女神に「現実世界、つまり日本に帰らなくてはならない」ことを伝えられる。あまりにも突然の宣告の謝罪として「異世界から好きな人をお持ち帰りして構わない」という条件を付けてもらったことで、シンヤは同じパーティの美少女たちを日本へとお持ち帰りし、優雅で淫らな生活を送るのだった。
 まったりした生活の中で思い出すのは、〈アーク〉での冒険の日々。シンヤは初めて異世界の地面を踏み、村娘ハーナルと出会い、街アスガルドを案内してもらった記憶を掘り起こしていく。童貞卒業の相手となるハーナルとのセックスの記憶は間近に迫っていた。

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 朝起きると、すでにハーナルは目を覚ましていて、俺を上から覗き込んでいた。
「やっと起きましたね、シンヤさん。おはようございます。昨日の夜、勝手に寝ちゃってごめんなさい……わたし、ベッドを占領して邪魔でしたよね」
「いいよ、疲れてたんだろ」
 俺はハーナルの寝顔を前にしてなかなか寝付けず、完全に寝不足だった。重い体を起こして伸びをする。
 ぼーっとしているところに、ハーナルがとんでもないことを言った。
「でも、わたし……シンヤさんに襲われちゃうかもしれないって思ってました」
「はぁ!?」
 反射的に大きな声を出してしまった。
「だ、だって、同じ部屋でお泊りですよ? シンヤさんは真面目な人だったんですね。紳士です」
「そりゃ……そうだろ。見境なく襲うほど俺は飢えてないからな」
 なんとか取り繕ったが、ハーナルはちょっとしょんぼりとした様子だ。
「うぅ、なんだかわたしに魅力がないみたいな言い方……ちょっと傷つきます。わたしはシンヤさんなら全然……」
 もごもごと小さく呟いた言葉は、ほとんど聞き取れなかった。
「ん? 今、なんて……」
「な、なんでもないですよぉ。今日はどこに行きましょうか? どこでも案内しますよ!」
 ハーナルは強引に話題を変えてきた。何を言ったのか、気になって仕方なかった。
 俺となら……シてもいい。そういう風に言ったように聞こえてならなかった。それなら、俺は昨日ハーナルの寝込みを襲ってしまえば、童貞を卒業させてもらえたんじゃないか……妄想が広がって、股間が落ち着かなくなってきてしまう。
 悶々としながらも、ハーナルは外出の準備を進めてしまっているので俺も身支度を整えた。
 街に出ると、すでにお昼になろうとしている時間らしく、太陽は高い位置に昇っている。今日も通りは人々で賑わい、活気に満ちていた。
 隣を歩くハーナルがいきなり手を繋いできて、俺はびくっと反応した。柔らかい女の子の手のひらの感触。さらに、なんだか媚びるように俺を上目遣いしてくる。
 ハーナルは、一体どういうつもりなんだろう? 昨日も思ったけど、ハーナルは俺を誘っているんじゃないだろうか? 貧乏な村育ちのハーナル。俺がお金持ちだとわかったから、こういうことをしてくれるのかもしれないけど、とにかく動揺して仕方ない。
「ハーナル……?」
「どうかしましたか? ふふ」
 どぎまぎする俺を見ておかしそうに笑うハーナル。あざといと思ったけど、童貞丸出しの俺は何も言葉が出てこなかった。ハーナルが、言い訳のように言ってくる。
「今日もすごい人ごみですし、離れ離れになっちゃうと嫌だから……手、繋いじゃダメですか?」
「勝手にそういうことをするな」
「ごめんなさい……今度からはシンヤさんに許してもらってからにしますね。……あの、わたし思ってたんですけど、もしかしてシンヤさんって女の子のこと苦手なんですか?」
 ハーナルが真顔でそんなことを言ってくるから俺はちょっと情けなくなった。
「そ、そんなことないぞ」
「嘘ですよぉ、今だってすごく目が泳いでますよ?」
「うるさい、気にするな。そんなことはどうでもいいだろ。それで、連れていきたい場所があるって言ってたけど、どこなんだ?」
 俺は話題をなんとか反らすと、ハーナルは不可解そうな顔をしながらも話についてきた。
「今から、エクレシア教会に向かおうと思います。そこに見えてるあの大きな建物です!」
 ハーナルはまさに教会らしい建物を指さして言った。
「どうして教会に?」
「この街の教会は結構大きくて、有名なデートスポットでもあるんですよ? あと、シンヤさんのためにも丁度いいかと思って」
「デート……!? と、とりあえず、俺のためっていうのは?」
「シンヤさんは剣士さんではないんですよね? この間剣を振ってもらった時もへっぴり腰でしたし」
「そんなことないだろ、俺はちゃんと一人前に剣振れてたぞ」
「そういうことにしておいてもいいですけど……とにかく、冒険者の中でも、剣士と魔法使いがいるじゃないですか。シンヤさんはたぶん、魔法使いのほうが向いてる冒険者さんなんだろうな、と思って。女神さまの祝福を受けた魔法道具は、教会で取り扱ってるんですよ。エクレシア教会は大きな教会ですから、品揃えも申し分ないはずです」
「ああ、ニッポンとはずいぶん違うんだな、日本には教会より神社の方が多いぞ」
「教会がないんですか!? それじゃあ、魔法はどうやって使うんですか?」
「うーん……それはまた今度話してやるよ。とにかく、そのエクレシア教会へ連れて行ってくれ」
「なんで教えてくれないんですか? 教えてくださいよぉ……日本のこと、気になるんですぅ」
 俺は駄々をこねるハーナルに手を引かれるまま、そのエクレシア教会にたどり着いた。
 荘厳な佇まいの建築物。天に向かってそびえたつような尖った塔が印象的だ。大きな押し扉を開いて中に入ると、たくさんの冒険者たちがいた。街にいる冒険者たちとは少し雰囲気が違った。剣を担いでいる冒険者たちが多かったが、この教会にいる者たちは皆、法衣を着て、杖を持っている者たちばかりだった。
 整然と並ぶ長椅子の奥に、女神を象った巨大な像が一つ立っている。俺はその像に向かって歩きながら、ハーナルに話しかける。
「なかなかいい感じの場所だな」
「女神さまが神々しいです……シンヤさんは女神アプロディタのことを信仰してますか?」
「ん? 俺は特に……」
「そうなんですか? この辺りに住んでいる人たちは、大体みんな女神さまのことを崇拝してますよ。ニッポンにはどんな神様がいるんですか?」
「うーん……特にいないかもしれない」
「えぇ!? じゃあ、困ったときはどうするんですか? 祈る相手はいないんですか?」
「神様に祈るより、自分の力でなんとかしようって思ってる人の方が多いかもな」
「なんだか可哀想です……生きていて、祝福も試練も何もないんですね」
 やっぱり異世界だけあって、全然考え方が違うんだなぁと思い知った。俺はハーナルに連れられ、女神の前に立って形だけ祈りをささげた。
 俺はこれから異世界でどうしようか、とふと考えた。今はハーナルと一緒にアスガルドを観光するのが楽しいけど、いずれ戦いに身を投じることになると思うし、その時俺はどうやって魔物たちに立ち向かえばいいのだろうか。この身に宿る魔力が強いものであることを願った。
 その時、ハーナルの物ではない声が聞こえた。
 というより、直接頭の中に声が響くかのようだった。
「シンヤさん……あなたに、伝え忘れていたことがありました」
 どこかで聞き覚えのある声。日本の俺の部屋で、突然降ってきたあの声にそっくりだった。
 女神の声だ――俺ははっとして目を開くと、そこはすでに教会ではなかった。隣にいたハーナルも、周りにいた人たちも皆消えていた。

〈アーク――6〉

 果てなく真っ白な世界。俺はそこにぽつんと浮かんでいた。見上げると、白い羽衣を着た美しい女神様が以前と同じようにそこにいた。
 こちらの世界に転移した時と同じ現象。どうやら、ここは女神様と俺がコミュニケーションを取るための場所のようだった。
「また呼ばれたんだな」
「すみません、何度もここに招いてしまって……実は、シンヤさんには本来備わるはずの力をまだ授けていませんでした。一度こちらの世界に転移してしまうと、なかなか接触するのが難しく、こうして教会でわたしたちの近くに来ていただいてやっと、会うことが出来ました」
 どうやら、俺と接触する機会を伺っていたが、教会に入ったことでようやくそれが叶ったということらしかった。
「ていうことは……あなたが女神アプロディタなのか」
「この地では、そう呼ばれて信仰されています。わたしはこの世界に生きる人々に祝福と試練を与える存在です。残念ながらこの世界はわたしの手では制御しきれず、これから試練の方向に偏っていくでしょう。滅亡の危機に瀕するこの世界の行く末を変えるため、わたしはあなたをこの世界へとお呼びしました」
「そういう理由で俺はこの世界に来たんだったな。すっかり忘れちゃうところだった」
「転移したのですから、こちらの世界でしっかりとその務めを果たしてもらわなければなりません。しかし、わたしたちにも失態がありましたから文句は言えません。手違いでまだあなたにそのための力を与えていませんでした。王の力を」
 俺は安堵した。こちらの世界に来てから、基本的なステータスの高さは実感していたものの、大して目立つ能力がなく、これでは世界を救うなんて夢のまた夢、ここから汗をかいて努力して力を獲得していかなければならないのかと身構えていたところだった。
「今、王の力と言ったか?」
「はい。この世界を救うためには、一人が頑張ったところで何も変わりません。あなたは人々を束ね、率いることで、運命を変えていかねばなりません。世界を変えるのは、一人の力ではなく、人々が協力して初めて生まれる強大な力、〈勢力〉の力なのです。あなたは世界を救うという同じ思想を持つ軍勢、社会を作り上げ、同じく魔物たちの〈勢力〉に打ち勝つ必要があります」
「なんだか大層な力みたいだが……どういうことだ?」
「お見せしましょう」
 ふいに、俺の手の甲に何かが刻まれるのを感じた。
 顔の前に手を掲げると、そこに紫色の光が宿る紋章のようなものが現れていた。その禍々しさに、俺の中二心がくすぐられる。
 格好いい! 素直に嬉しくて全身に力が漲るようだった。
「その手を相手の身体に当てることによって、あなたは他人に〈魔痕〉を植え付けることが出来ます」
「魔痕?」
「その魔痕を通じて、他人に自分と同じ思想を〈共感〉させてください。多くの人に共感の印を刻み込むことによって、次第に仲間を増やすことが出来るでしょう。それが〈勢力〉を作り上げる第一歩になります」
 なんだか途方のないことを頼まれた気がした。一人では出来ないことを叶えるための勢力を作り上げる。これからたくさんの人に出会って、その人たちに俺の言うことを聞かせるというわけだ。
「まるで洗脳みたいだな」
「やろうと思えば、たしかにその力は、無理やり人に言うことを聞かせることも出来ます。でも、そういう力の使い方はその人を捻じ曲げてしまうため、その人の心身への負担が大きくなり、下手をすると相手を壊してしまうかもしれません。無理に相手を動かす場合は、使う相手を考えてください。そんなことをしなくても、魔痕は刻み込むだけで、勝手に思考を同調させます。あなたの考える方に、自然と考えが寄っていくのです」
「なるほどね……それもまた、ちょっと怖い力だけどな」
「紛れもなく強大な力です。あなたは人々を付き従える王そのものになれるのですから。一つ、注意するべき点があります。出来るだけ、女性にはその力を使わないほうがいいでしょう。王の力には、副作用のようなものがあるのです」
「というと……?」
「すみません。そろそろ、あなたとこうして話す限界が迫ってきています。この空間を作り出すのは骨が折れるのです。先に見せるべきものがあるので、そちらを優先しますね。下を見てください。本来なら、この街アスガルドは一週間後に滅びを迎えます」
 言われる通り足元を見ると、遥か遠くの大地で、戦乱が起こっているのが見えた。これが神の視点かと感心した。
 本来そうなるはずだった世界の行く末が展開されていく。なかなかにひどいものだった。
「うわ……すごいな」
 魔物たちの軍勢がアスガルドを襲撃し、昨日俺たちが過ごしていた宿や、ハーナルがまたご飯を食べに行くと約束した〈クレアス〉、そしてハーナルの故郷である村でさえも飲み込んでいき、廃墟と化していく。
 壮絶な眺め。人々が死に絶え、大地が赤く染まっていく。
 それを悲しげに見下ろしながら、女神は言った。
「アスガルドの滅びこそが、この世界の滅びの発端でした。破壊されたアスガルドを経由地として、さらに強力な魔物たちが帝国へと侵攻していくことになります。この地を奪われることを阻止すれば、また違った世界の行く末が現れることになるでしょう。あなたが立つ場所は、まさに未来への分岐点なのです。あなたはその分岐を変化させなければなりません」
「わかった、なんとかするよ」
「信頼しています。そろそろ限界のようです。また、会うことがあれば、よろしくお願いしますね」
 女神は微笑んで、真っ白な世界が消えていく――


「おーい、聞こえてますか、シンヤさん?」
 肩をとんとんと叩かれて、俺を目を開いた。
 さっきの世界に行く前と同じように、俺たちはエクレシア教会にいた。隣にはハーナルがいて、周りには大勢の人々が歩き回っている。
「ずっと目をつぶったまま動かなくなっちゃったから、気絶しちゃったのかと思いました」
「すごいものを見てきたよ。女神さまと会ってきた」
「……え? 何を言ってるんですか? 女神さまと?」
 ハーナルは呆気に取られてぽかんと口を開いた。
「そうだ。この世界の行く末を見てきた。この街はこのままだと確実に滅ぶ予定になってる」
「え? え? 何を言ってるんですか、フレイみたいな悲しいことを言わないでくださいよぉ」
「本当なんだ。この目で見てきた」
「意味が分からないですってばぁ……もしかして、夢でも見てたんじゃないですか?」
「夢じゃない。これを見てくれ」
 俺は右手の甲をハーナルに見せた。そこにははっきりと紫色の禍々しい傷痕が刻み込まれていた。
「あれ? こんなの、昨日はついてませんでしたよね……まさか本当に、女神様に会ってきたんですか?」
「そうだ、力を授けられた。この世界を、俺が救わなきゃいけないらしいからな」
 俺は初めて力を手に入れた高揚感と責任感で胸がいっぱいになっていた。
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