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剣と魔法の世界からお持ち帰りしました(11)

<INTRODUCTION>
 異世界に転移したシンヤは、その世界〈アーク〉を救うことに成功した。そのまま異世界で英雄として遊び呆けようと思っていたシンヤは女神に「現実世界、つまり日本に帰らなくてはならない」ことを伝えられる。あまりにも突然の宣告の謝罪として「異世界から好きな人をお持ち帰りして構わない」という条件を付けてもらったことで、シンヤは同じパーティの美少女たちを日本へとお持ち帰りし、優雅で淫らな生活を送るのだった。
 まったりした生活の中で思い出すのは、〈アーク〉での冒険の日々。シンヤは初めて異世界の地面を踏み、村娘ハーナルと出会い、街アスガルドを案内してもらった記憶を掘り起こしていく。ハーナルと少しずつ距離が縮まっていき……?

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 色とりどりに輝くステンドグラスから降り注ぐ光の下、俺は早速、ハーナルを跪かせた。
「その手の甲の印って……一体なんなんですか?」
「とりあえずやってみないとわからないからそのままでいてくれ、頼む」
 俺は少し服をはだけたハーナルの後ろに回り、その首筋に手を当て背中のほうへと動かしていく。
 ハーナルはびくっと体を震わせながらも、俺の方を振り向いて不安げな表情を見せている。
「何が起こるんですか? ちょっと怖いです……」
「怖いなら動くなよ、失敗するかもしれない」
「や、やめてくださいよぉ」
 ハーナルが怯えた声をあげる。
 俺は頭の中で女神の言葉を思い出していた。この王の力は、女性には使わないほうが良い。そう言われても、今俺が体に触れられるほど仲が良いのはハーナルくらいしかいないのだから、彼女で力を試そうと思うのが普通だろう。
 一体どこまで〈共感〉という力が通用するのか。どこまで他人に言うことを聞かせられるのか。俺はその答えを知るために、右手に力を込めた。
 刻み込まれた紫色の光が一瞬強まり、それはすぐに完了した。手を離すと、ハーナルの肩甲骨の間のところに、俺の手の甲にあるのと同じ紫色の魔痕が刻み込まれていた。
 あまりにも簡単に済んでしまって俺は拍子抜けした。この程度なら、ちょっと握手をしたとき、その相手の手の甲に魔痕を刻み込むことも可能だろう。
「もう終わったんですか?」
 ハーナルは、何をされたのかわからないという風に背中に手を当てた。
 どうやら、痛みやその類の感覚は一切ないらしい。ますます、魔痕を刻み込む難易度が低いことがわかった。
 それでは、その魔痕の効果はどれほどのものなのだろうか? 考えるまでもなく、ふいに何かが流れ込んでくるのが分かった。唐突に訪れた感覚。
 それが何か、段々とわかってきて俺は驚愕した。ハーナルの感情が、俺に直に伝わってくるのだ。彼女の頭の中が、うすぼんやりと見えるような感じ。今は得体のしれない魔法を使われた不安が感情の大部分を占めていた。
 すごい。俺が感激していると、ハーナルがぽこぽこ叩いてくる。
「もう、わたしの話、聞いてますか? 一体わたしに何したんですかぁ」
「そこにある鏡で自分の背中をよく見てみろ」
「え、これっ……この紋章みたいな印、シンヤさんの手の甲にあるのと同じ印ですか? 刺青みたい」
「何か変わった感じはないか? その紋章を通じて俺の考えていることが分かったりとか」
「何も変わりません……」
「そうか」
 魔痕を使われた相手には、俺の感情が伝わらないようだ。なかなか都合よくできている能力だと思った。一方通行で、俺だけに相手の考えていることがある程度わかるらしい。
 このまま、この能力がどこまで通用するのか試してみたくなった。限界を知りたくなったのだ。いざという時に使い道を誤ったら大変なことになる。後々のことを考えての判断。
 俺は、ハーナルの感情をより理解しようと、深いところまで意識しようとした。色々なものが混じりあった複雑な感情を解きほぐしていくイメージ。
 最初に感じられたのは、意外にも俺に対する好意だった。一緒にいると安心できるし、楽しくなれる。そんなような感情を抱かれていた。
 その他に大きい感情は街を歩いて遊びまわることに対する楽しい気持ちだった。その他にもいくつもの感情を持っているようだったが、感情が小さすぎてはっきりと認識できなかった。
 例えば、心の中でどんな言葉を呟いているか、なんてことは到底わかりそうにない。
「結局わたしは何されたんですか……よくわからないですよぉ」
「とりあえず使い方がはっきりした。ありがとう」
「シンヤさんがよかったなら、いいですけど……」
 言葉とは裏腹に、魔痕を通じてハーナルが混乱しているのがよく伝わってきた。振り回されて、あんまりいい気分ではなさそうだ。
 俺はもう一つ思いつくことがあって、試してみた。この流れ込んでくる感情は、はたして俺の方から拒むことが出来るのか?
 俺が念じると、ハーナルから流れ込んでくる感情は、ばちんとシャットアウト出来た。いちいちハーナルの気持ちが入ってくると面倒だから、俺は当分の間、魔痕から流れ込む気持ちを遮断することにした。
 体に同じ印がついているというのは、なんとなく連帯感を感じさせた。魔痕を刻んでまたちょっと仲良くなった気がするハーナルに、俺は尋ねる。
「それで、魔法道具はどこに売ってる?」
「こっちです。魔法使いは冒険者の中では少数派ですから、たぶん品切れにはなってないと思いますよ」
 話を聞いてみると、一定の才能がないと魔法使いにはなれないらしい。もともと生まれ持った向き不向きがあるようだ。俺は今度こそ自分の能力がそこで発揮されると期待して、ハーナルに手を引かれてついていった。
 待っていたのは、老齢の女の魔法使いだった。
「なんだい」
 法衣から出た腕にはほとんど肉がついていなく、ガリガリに痩せこけている。まさに魔女とでも言わんばかりの風貌。
 一通り魔法道具について説明を受けて、その後棚に並んだ肝心の魔法武器を見せられた。しわがれた声で老婆は言った。
「この杖は持ち主の魔法を変換しエネルギーとする。例えば、炎や氷を生み出すためのエネルギーに」
「つまりいくら強力な武器を持っても、持ち主の魔力が乏しければ大きな力は発揮することが出来ない……ってことだよな」
「その通りだ。わたしの見立てだと二人ともある程度の魔力を秘めていそうだ」
「わたしもですか?」
 ハーナルが驚いて目を剥いて自分を指さした。まさか村娘として粛々と畑仕事に勤しんでいるはずのハーナルに魔力が備わっているとは思わなかった。
「親が魔力を秘めていないからと言って子が持っていないとは限らない。試しにこの杖を持ってみなさい」
 適当に引っ張り出した杖を持たされ、ハーナルはわくわくとした表情を浮かべている。
 そのまま、えいっ、と杖を振ってみるハーナル。
 沈黙。何も起こらない。強力な力が迸ることも、雷が落ちることもなかった。ハーナルは首をかしげながら、ちょっと恥ずかしそうに杖を置いた。
「おそらく発現しにくい力なのだろう。とりあえず一つ持っておきなさい、いつか役に立つだろうから」
「本当にわたし、魔法使えるんですかぁ? わたしが武器を持つだなんて考えたことなかったですから、嬉しいですけど……」
 もしかして、ぼったくられてるんじゃないか……?
 半信半疑のまま、とりあえず一つ魔法杖を購入した。しっかりとした古木の先に、魔力を増幅する宝石があしらわれた魔法杖。今のところの所持金なら、お金に困ることはないから、買っておいても損はないだろう。
 そして俺の番が来た。その老婆は、俺を見て妙なものを見るような顔をした。
「お前さんの魔力は、独特の形をしている……安定していない、強力な力を秘めている」
「どういうことだ?」
 よくわからないまま、俺はかなり上物の魔法杖を持たされた。
 杖に触れた途端、はっとした。
 何か予感めいたものが走ったのだ。まるで自分の体の一部のように、杖の機能が理解できるのだ。詠唱は必要ないように思えた。
「これは……」
 ようやく自分の力を理解することが出来たと思った。まだ試してもいないのに、感動があった。
 この異世界に来て、自分がどのようにこの世界に役に立てるのかわからなくて不安だったが、ようやくそれが掻き消えようとしていた。
 手の甲の紋章がにわかに輝きを増し、力が漲るのを感じた。
「これが……俺の戦い方か!」
 何もない壁に向かって杖を振った。頭の中で燃え盛る炎を思い描きながら。
 刹那、杖から圧倒的な熱気と共に、爆炎が噴き出した。空気の温度が一気に上がり、背後で老婆とハーナルが息を飲むのを感じた。
「すごい……です」
 ハーナルは半ば囁くような声で言った。老婆も感心したように頷いている。
 俺が念じると、炎はふっと何ごともなかったかのように消えた。
 俺は魔法使いの冒険者だったのだ、と胸の中に熱い自信が湧くのを感じた。
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