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剣と魔法の世界からお持ち帰りしました(12)

<INTRODUCTION>
 異世界に転移したシンヤは、その世界〈アーク〉を救うことに成功した。そのまま異世界で英雄として遊び呆けようと思っていたシンヤは女神に「現実世界、つまり日本に帰らなくてはならない」ことを伝えられる。あまりにも突然の宣告の謝罪として「異世界から好きな人をお持ち帰りして構わない」という条件を付けてもらったことで、シンヤは同じパーティの美少女たちを日本へとお持ち帰りし、優雅で淫らな生活を送るのだった。
 まったりした生活の中で思い出すのは、〈アーク〉での冒険の日々。シンヤは初めて異世界の地面を踏み、村娘ハーナルと出会い、街アスガルドを案内してもらった記憶を掘り起こしていく。ハーナルと少しずつ距離が縮まっていき……?

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〈アーク――7〉

 俺は杖と法衣を装備し、ハーナルと共に街へ繰り出した。
 自分にあった装備と服装で出歩くというのは気分の良いものだった。自分は魔法使いだ、ということを周囲に一目でわかってもらえる。自分には力がある、と自信を持つことが出来た。
 一方で、俺は自分に情けなさも感じていた。女の子に対する免疫のなさについてだ。
 ハーナルと二人して魔法使いの恰好でこうして街を散策するのは、本当にデートをしているみたいで、ドキドキするのが止まらない。
 可愛いハーナルを、あえてぶっきらぼうに雑に扱うような口調で言った。
「次はどこに案内してくれるんだ、ハーナル?」
「一通り街は散策したと思うので、とりあえず街の一番広い広場に行こうと思います! デートスポットとして有名で、すっごく綺麗ですよ。噴水があるんです」
 俺はデートと言う言葉に反応してしまうけど、ハーナルは別に何とも思っていないような顔をしている。さっき行った教会に向かう時も、同じようなことを言っていた気がする。この子もやっぱり俺とデートしている気分になっているんじゃないかと勘繰りたくなる。
 ただ、綺麗な広場と言うのは、悪くない。観光気分で歩いていくと、意外なものを目にすることになった。
 綺麗な風景をぶち壊すような、あまりにも邪魔なものがそこにいたのだ。
「うわ……なんですか、あれ」
 ハーナルはあからさまに顔をしかめた。
 そして、見た目が悪いだけならまだよかったのだけど、それでは済まなかった。
「くしゃい……」
 ハーナルは鼻をつまんだ。俺も鼻で呼吸をすると気分が悪くなりそうだった。そこら中に異臭が漂っているのだ。
 饐えたような匂い。独特の臭気のもとは、広場のど真ん中に鎮座していた。
 巨大な体格の、鬼のような生き物が檻に捕らえられていた。身体は濃い緑色に苔むしていて、汚れがべっとりと体にこびりついている。筋骨隆々とした肉体はそうとうの怪力を振るうことが出来そうだった。
 今は大人しく、檻の中で両手両足に枷を嵌められ、鎖につながれている。どうやら檻から出ることは諦めているようだった。
「なんだこの魔物は……?」
「わたし、子供のころ本で読んだことあるんですけど、これ、〈オーク〉じゃないですか?」
 オーク――その名前は聞いたことがある。日本で読んだ異世界ものの小説に、よく出てくる有名な魔物だ。大抵、女の子にやらしいちょっかいを出すキャラクターとして描かれているけど、この世界ではどうなんだろうか?
「寒気がします……なんでこんなおぞましい魔物をこの広場に……」
「オーク、嫌いなのか?」
「当たり前じゃないですかぁっ! オークは女の子の天敵です! あいつ、クサイし、汚いし……何より、アレなんですよ! ちょっと生々しい話をしますけど、オークって人間を孕ませて子孫を増やすんですよ! 悪魔みたいな奴ですっ」
「え……? それって、オーク同士で子孫を増やせないってこと?」
「そうです」
「ってことは、女の子を無理やり犯して……犯された子のお腹からオークの子供が産まれてくるってこと?」
「そ、そうですけど……わざとぼかして言ったのに、なんで全部言葉にしちゃうんですか!? シンヤさんってデリカシーのない男なんですねっ」
「わ、悪かったな。別にセクハラしたくて言ったわけじゃない」
 ちょっと恥ずかしそうに頬を赤らめてそっぽを向くハーナル。俺がハーナルに案内をさせて、宿や食事を提供しているのに、立場が逆転してしまったような気分だ。
 微妙な空気が流れているところに、声がかかった。助け舟とは言い切れないかもしれないが、なんとか雰囲気を和らげてくれた。
 俺たちを呼び止めたのは、聞き知っている豪快な声だった。筋骨隆々とした、昨日会ったばかりのあの人物。
「おぅ、昨日の冒険者さんに、大食いの嬢ちゃんじゃねえか」
「ミュースさん、こんなところで会うだなんて」
「やめてくださいよ、大食いだなんて、皆がいる場所で、そんな大声でっ!」
「ガハハ、別にいいだろう。恥ずかしがることじゃねえ」
「周りの人たちみんなクスクス笑ってるじゃないですかぁ……ひどいですよぉ」
 ハーナルはしゅんとなって身を縮めている。ミュースのでかい体と比べると、ますますハーナルが小さく見えた。
 ミュースは体に鎧を着け、剣と盾を装備していた。頑丈な武具のおかげで、ますます勇ましく見える。どうやら、この人は今度の戦いに赴く戦士のひとりらしい。
「ミュースさんも魔物退治に向かうんですか」
「ああ、そうだ。実は俺の食堂〈クレアス〉で、ちょっとしたパーティーを作ってるんだ。ちょうどパーティーのメンバーの奴らと、オークを見て戦闘の計画を立てていたところでな」
 ミュースは少し離れたところにいる男たちの集団を呼んだ。
 彼らが近づいてくると、俺は圧倒されてしまった。たくましい男たち。身長が高くて、ガタイもがっしりしている。ボディービルダーの広告に出てきそうだ。
「俺たちは〈クレアス〉っていうパーティー名だ。まあ、そのまんまだな。今度の戦闘で、一番の戦果をあげて帰ってくる予定だから覚えとけ」
「わぁ、皆さんムキムキですね! すごい、ちょっと筋肉触ってもいいですかぁ」
「いいぞ」
「かたぁい……わたし、筋肉のある男の人、好きなんです。なんだか守ってくれそうじゃないですか。シンヤさんも筋肉つけてくださいよ」
「魔法使いに筋肉なんていらないだろ」
「でもでも、わたしはシンヤさんに筋肉つけてほしいんですよぉ、つけてくださいよぉ」
 ハーナルが言い募っているのを見て、ミュースはガハハと笑う。
「こいつらは全員、俺の食堂で育てたんだ。俺の作る肉料理をたんまり食って、剣術の稽古に励んで、ぐっすり寝る。そうすれば、誰でも俺たちみたいになれる。シンヤ、お前もパーティー〈クレアス〉に入らねえか」
「え、遠慮しときます……」
 ついつい即答してしまった。体育会系のノリはあんまり好きではないし、これまでスポーツをやっても続いたためしがなかった。
「そうか、残念だな。まあ、お互い別の場所にいても、魔物退治に力を尽くすのは同じだ。気合い入れていこうぜ」
「ところでミュースさん、聞きたいことがあるんですけど……」
「おう、なんだ」
「このオークを相手するとき、〈クレアス〉はどういう風に戦うんですか」
「良い質問だ。実はまさにそれを考えているところでな。
 巨大な体を持つオークは一筋縄ではいかない魔物だ。このオークは、街に近づいていたところを、帝国騎士団が捕えてくれたらしいんだが、彼らも苦戦したらしい。
 こうして、広場で檻に入れて見せしめにして、他のオークが攻めてこないよう牽制しているらしいが、意味があるのかどうかはよくわからねえな」
「逆効果なんじゃないか? 仲間の敵討ちのためにこの街を襲撃する可能性もあるだろ」
「オークはおつむが弱い。そこまで考えているかどうかは、俺たちにはわかりやしねえ。
 っていうかシンヤ、お前もオークと戦うつもりなのか? 一対一じゃ勝ち目はねえ。俺たちみたいにパーティーを組んで、一体を包囲して戦うのが基本的な戦術だ」
「いいや、できれば戦いたくないんだけど、偶然接触したときの対処法が知りたくて」
「対処法、か。まあ一つ言えるのは、オークは動きが遅いのが弱点だ。いくら怪力で、一撃が重たくても、攻撃を食らわなければ何も問題はない」
 オークはいわゆるパワー型で、素早さは足りない魔物と言う事らしかった。
 俺は戦うことを考えるよりも、そもそもこの魔物に出くわさないように、匂いに敏感になっておくことにした。この悪臭が漂って来たら、その場からすぐに離れるのだ。そうすれば余計な戦闘を避けることが出来る。
 そして、俺はさきほど得た〈王の力〉を活用して戦闘を潜り抜けていこうと考えていた。出来るだけ自分は戦わずに、仲間たちに戦ってもらう。俺が世界を変えなければならないのだから、変なところで早死にしないよう守ってもらう必要がある。特攻するのがいつでも正しいわけじゃない。
 そのためには、魔痕を多くの人に植え付けて、従者を増やしていかなくてはならなかった。あの紫色の印を刻み込んだ仲間たちに、戦ってもらうのだ。
 ミュースに、その従者第一号になってもらおうと思った。
「ありがとう、参考にする」
 俺は握手のために、ミュースに向かって手を差し出した。
「おう、戦場では頼んだぜ」
 ミュースは簡単にその手に引っかかってくれた。威勢よくその手を掴んでぎゅっと握った。
 俺はその瞬間に、例の力を使った。
 手の甲にある魔痕が輝き、一瞬でミュースの手の甲にも紫色の魔痕が刻み込まれるのが感じられた。
 手袋をつけていたミュースは、刻印されたことに気付かなかった。彼の感情が流れ込んでくる。今度の魔物退治にかける熱い思い。〈クレアス〉の仲間たちを思う優しさ。そして命を捨てることすら厭わない勇敢さ。
 俺なんかよりよっぽどこの人の方が世界を救う勇者に向いているんじゃないかと思いながら、俺はミュースと別れた。
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